先頃、商務部は「一部規則と規範性文書の改正に関する決定」を公布し、29件の規則および規範性文書における関係条項を廃止または改正し、外商投資および国内取引などの分野における最低登録資本金、出資期間、初回の出資比率および貨幣出資比率などにおける規制または要求を取消す旨を明確にしたうえで、一部の業種年度検査およびその他登記事項の手続きを簡素化している。外商投資実務、とりわけ外国投資家による投資性会社の設立、外国投資家による持分出資での企業設立、外国投資家による上場会社への戦略的投資などに重要かつプラスの影響をもたらすことが期待される。
本決定による主な改正事項:
外商投資企業の設立、登記および年度検査規則の調整 |
●外商投資株式会社
・最低出資金3,000万人民元、かつ外国資本は25%を下回らない旨の要求を取消す。
・登録資本金は批准証書交付後90日以内に満額を一括払いする旨の要求を取消す。
・発起人が引き受けた資本金を満額納付した後でなければ董事会、監事会を選出できないこと、および会社登記機関に会社設立に関する文書を送付し、設立登記申請を行えない旨の要求を取消す。
・発起人は引き受けた資本金を満額納付した後でなければ、会社登記機関に設立済みの中外合弁経営企業、中外合作経営企業、外資企業(外商投資企業)の外商投資株式有限公司への変更登記手続きを行なえない旨の要求を取消す。
・発起人は引き受けた資本金を満額納付した後でなければ、会社登記機関に国有企業、集団所有制企業の外商投資株式有限公司への転換に関する変更登記手続きを行なえない旨の要求を取消す。
●外国投資家による投資性会社の設立
・外資系投資性会社が有限責任会社または株式有限会社形態を採用することを認め、有限責任会社に限定しない。
・登録資本金は3,000万米ドルを下回らない旨の要求を取消す。
・会社は設立後2年以内に3,000万米ドルを満額納付すること、および5年以内に残りの出資金を満額納付する旨の要求を取消す。
・投資を行う各当事者の資産信用証明文書、登録登記証明文書(コピー)および法定代表者の証明文書(コピー)を投資性会社設立申請のための申請資料とする旨の要求を取消す。
・出資金は営業許可証の交付日から2年以内に満額納付する旨の要求を取消す。
・投資性会社が経営関係業務を申請するにあたっては、商務部に中国登録会計士発行の投資先企業の出資検証報告書を申請資料とする旨の要求を取消す。
・前年度の投資経営状況に関する資料の提出を投資性会社の合同年度検査参加申請要件とする旨の要求を取消す。
●外商投資ベンチャーキャピタル企業
・非法人制ベンチャーキャピタル企業の投資者は1000万米ドル、会社制ベンチャーキャピタル企業の投資者は500万米ドル、その他各投資者(必須投資者は除く)は100万米ドルとする最低出資引き受け金額の要求を取消す。
・投資者のベンチャーキャピタル企業に対する出資引き受け期間は5年を超えてはならない旨の要求を取消す。
・投資者がベンチャーキャピタル企業の存続期間中、自己の引き受け出資額を減額する場合の、1000万米ドルの最低出資引き受け額を保障する旨の要求を取消す。
・ベンチャーキャピタル企業の管理を受託したベンチャーキャピタル管理企業の登録資本金または出資総額は100万人民元または相当額の外貨を下回ってはならない旨の要求を取消す。
・前年度の資金調達・使用状況を審査許可機関に報告した旨の届出登記証明をベンチャーキャピタル企業の合同年度検査の必須資料とする旨の要求を取消す。
●外資商業企業
・既存する外資商業企業が店舗を開設するにあたっては、登録資本金を満額払い込み、期日通りに外商投資企業合同年度検査に参加し同検査に合格していることを前提とする旨の要求を取消す。
・設立済みの外商投資商業企業が店舗開設を申請するにあたっては、以後企業の出資検証報告書(コピー)を送付しなくてよい。 |
外資の国内における合併、分割、投資に関する規則の調整 |
●外商投資企業の合併、分割
・投資者が会社の契約、定款規定に従い、出資金を全額払い込み、提携条件を提供し、かつ実際に生産、経営を開始するまでは、合併または分割をしてはならない旨の要求を取消す。
・合併、分割時に各会社ごとに発行した出資検証報告書を審査許可機関に送付する旨の要求を取消す。
●外商投資企業の国内における再投資
・外商投資企業が国内で再投資するには、登録資本金を全額払い込み、かつ出資検証を行っていることを前提とする旨の要求を取消す。
・対外投資は純資産の50%を超えてはならない旨の要求を取消す。
・外商投資企業が奨励類または許可類分野において投資し会社を設立する場合に、投資先会社所在地の会社登記機関に申請を行うとき、法定の出資検証機関発行の登録資本金を全額払込済みであることを示す出資検証報告書を以後提出しなくてよい。
●外商投資企業による持分出資
・外商投資企業が登録資本金を全額払い込むまでは、持分を出資に充ててはならない旨の要求を取消す。
・前年度の外商投資企業の合同年度検査に参加していないまたは同検査を通過していない外商投資企業の持分は持分出資に充ててはならない旨の要求を取消す。
・投資先企業の全株主の持分出資金額および他の非貨幣財産を価格評価して出資した金額の合計はその登録資本金の70%を上回ってはならない旨の要求を取消す。
・投資者が持分出資する場合に投資者または投資先企業が審査許可機関に提出した申請書類には外商投資企業合同年度検査を通過したことを示す証明が含まれていなければならない旨の要求を取消す。
●上場会社に対する戦略的投資
・外国資本が非公募で上場会社が発行した株式を引き受ける場合、商務部から原則的返答書を取得せずに、証監会の許可を得ることができる。 |
一部業種において最低登録資本金の要求を撤廃する |
●外資系リース業
・登録資本金は1,000万米ドルを下回らない旨の要求を取消す。
●外資系国際フォワーダー
・登録資本金は100万米ドルを下回らない旨の要求を取消す。
・外商投資の国際フォワーダー企業が分公司を設立するにあたり、企業の出資検証報告書提出を必須とする旨の要求を取消す。
●外資系物流
・登録資本金は500万米ドルを下回らない旨の要求を取消す。
●商業ファクタリング
・登録資本金は5,000万人民元を下回らない旨の要求を取消す。
・重慶両江新区、蘇南現代化建設モデル区、蘇州工業園区内の商業ファクタリング会社の登録資本金は5000万人民元を下回らない旨の要求を取消す。 |
(里兆法律事務所が2015年11月6日付で作成)