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「3証書の一本化」制度改革について

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2016年2月1日

背景の紹介

従来、企業の設立時や登記内容変更時には、工商、税務および品質技術監督といった複数部門での審査許可を経て、各部門ごとに証書が発行されていたが、それぞれの証書と法人コードは統一されておらず、各部門間の情報データには一貫性がなかったため、これらを実際に取扱ううえでは社会的負荷がかかり、行政業務の面からも非効率であった。

このため、国務院弁公庁は2015年6月23日に「『3証書の一本化』登記制度の改革推進加速化に関する国務院弁公庁の意見」(国弁発[2015]50号)(以下、「意見」という)を公布し、「3証書の一本化」登記制度改革を全面的に推し進め、これまでの複数の証書における法人コードを一つの番号に統合し、一つの営業許可証に記載する旨を明確にした。

国家工商総局、国家税務総局、国家品質監督検査検疫総局などの6つの部門は2015年8月7日に「『3証書の一本化登記制度の改革推進加速化に関する国務院弁公庁の意見』の実施貫徹に関する工商総局などの6つの部門による通知」(工商企注字[2015]121号)(以下、「121号文」という)を公布し、2015年10月1日から全国範囲で統一社会信用コードで、「3証書の一本化」登記制度を実施することを確定した。最近、税関総署などの部門もこれに関連する政策を打ち出している。

なお、これに先立ち、広東、湖北、寧夏などの省市では、2015年10月1日までに「3証書の一本化」登記制度の実施をすでに開始している。

「3証書の一本化」制度改革の具体的な内容

改革前 改革後
証書の数 営業許可証、税務登記証、組織機構コード証を含む3つの証書があった。 1つの証書、すなわち、1営業許可証へと一本化された。
法人コード 営業許可証登録番号、納税者識別番号、組織機構コードを含む3つの法人コードがあった。 統一社会信用コード(法人およびその他組織の「本人証明書」に相当する)のみとなった。
手続き それぞれ3つの部門に資料を提出して申請してから、各部門から、それぞれ証書を受取る必要があった。 工商部門に申請を行い、統一後の営業許可証を取得すればよい(すでに上海自由貿易試験区などの省市で実施している「受理窓口の一本化」などの制度とは若干異なる)。
監督管理における連携 各部門間で情報が断絶しており、データー共有が行なわれていなかった。 全ての情報が集約され、各部門の監督管理状況がその都度共有される。
証書の有効期間 各部門の要求規定により、3証書の有効期間が異なる可能性があった。 有効期間が統一された。



「3証書の一本化」制度が企業に与える影響

Q1:「3証書の一本化」制度により、企業にどのような利便性がもたらされるか。
A :新設及び登記内容の変更を行う企業は、各部門間を何度も行き来して資料を提出する必要がなくなる。「意見」及び121号文規定により、企業の証書手続きに要する時間が大幅に短縮される。統一後の営業許可証を取得済みである企業は、抹消手続きが簡素化される。

Q2:「3証書の一本化」制度は企業の情報公開にどのような影響があるか。
A: 現在、工商部門のウェブサイトを通じて、企業の工商基本情報を照会することができ、新登記制度が引き続き整備され、統一社会信用コードの使用が開始された後は、各地区、各部門に分散していた信用記録が徐々に企業の名義下に統合されていくことで、将来、各政府部門で保管されている企業情報(企業の各部門における処罰記録などを含む)の関係部門間での情報共有化がこれまでに以上に進んでいくことが予測される。これは取引相手の企業状況を全面的に把握する上で有用となるであろう。

Q3:従来の登記制度から「3証書の一本化」制度へ移行するために、どのような措置が取られるか。
A: 121号文の規定によれば、2015年10月1日から2017年12月31日までの期間を制度の移行期間としており、当該期間における移行が難しい区域であっても遅くとも2020年末までには完成させなければならないとしている。

(1)移行期間中、企業を新設し又は登記内容を変更する場合には、新しい営業許可証が直接交付される。従って、企業は通常、関係証書の交換発行を自発的に申請する必要はなく、企業の登記事項に変更が生じた際に、関係証書の交換発行も一緒に行われることになる。

(2)交換発行前の証書(各地が試行模索中の「1つの証書に3つの番号」が記載されている営業許可証、「1つの証書に1つの番号」が記載されている営業許可証を含む)を引き続き使用することも可能であり、また、工商部門に交換発行を申請することも可能である。

(3)移行期間終了後は、統一社会信用コードが記載されている営業許可証に一本化され、交換発行前の証書は以後無効となる。

全体的に見て、「3証書の一本化」制度改革により、企業の政府手続がある程度簡素化されることが見込まれる。もっとも、「3証書の一本化」登記制度改革を実施するにあたっては、複数の政府部門間での調整と協力が必要であり(「3証書の一本化」制度改革の推進に伴い、やや多くの政府手続きが調整し変更される可能性もある)、作業量も多いため、中国全国範囲で制度改革を推進させるには更なる時間を要すると思われる。制度改革の推進進捗状況は各地方でまちまちであると思われ、実際に関係政府手続きを行う前に、登録先の制度改革状況に注意し、関係政府部門に事前に確認しておくことが望ましい。

(里兆法律事務所が2015年10月11日付で作成)

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