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合法的な奨励と商業賄賂との境界線を整理する(後篇)

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2017年8月10日

「不正競争防止法」第8条第2項の規定では、事業者は商品を販売し又は購入するときに、明示的方法で相手方に値引きを与え、仲介人に手数料を支払うことができる(※2)。事業者が相手側に値引きを与え、仲介人に手数料を支払う際には、必ず事実どおりに記帳しなければならない。値引き、手数料の支払いを受けた事業者は、必ず事実どおりに記帳しなければならない。これに基づけば、事業者は「明示的な方法によるコミッション」を与えることで、合法的な奨励を取引相手に与えることができる。
通常、「明示的な方法によるコミッション」とは、事業者が取引相手に与えたいかなるコミッションをも双方の取引のベースとなる書面(契約書、協議書、注文書などを含むが、これらに限らない)に明確に記載し、事実どおりに記帳することを指す(※3)。実務取扱では、「明示的な方法によるコミッション」について、財務上は通常、以下2つの取扱方法がある。

方法その1:当期控除。
事業者は売上額とコミッション率を同じ発票に明記し、コミッションを差し引いた金額を売上額として増値税を計算することができる。なお、このような場合、コミッション金額のみについて、何らかの名目で発票を別途発行してはならない。

方法その2:事後払い戻し。
「明示的な方法によるコミッション」という行為があった後、まず、仕入先(代理店/小売業者など)は主管税務部門に申請し、主管税務部門は審査通過後、仕入先に「赤字増値税専用発票発行通知書」(以下「通知書」という)を発行する。それから、事業者(販売者)は通知書を受け取り、仕入先に赤字増値税専用発票を発行し、仕入先はこれをもって記帳証憑とするとともに、仕入支出と相殺して仕入税額を控除する。販売者は赤字増値税専用発票の発行綴り、記帳綴りを記帳証憑として、販売収入と相殺して当期販売税額を控除する。

赤字増値税専用発票の発行手続きは相対的に煩瑣であり、仕入先の協力がいることは勿論、主管税務機関の審査を通過する必要もあり、もしもそれらが理由で赤字増値税専用発票の取扱ができなくなった場合、通常、仕入先が販売者に対し増値税普通発票を発行する方法で処理するが、この場合、販売者はコミッション金額について販売税額を相殺することができないことになる。

厳格に言えば、「明示的な方法によるコミッション」という奨励は「現金」でなければならず、「現物」(例えば「10個購入すれば1個おまけ」、「5個購入すれば1個おまけ」など)のコミッションではない。実務取扱では、通常、直接「現物」の形式により与えたコミッションが「商業賄賂」と認定されるリスクはやや大きい。従って、通常、事業者が現物を現金化し、貨物代金の一定の割合に従い、「現金」で当期控除し又は事後払い戻す必要がある。例えば、商品単価が100元であり、10個購入すれば1個おまけの場合、当期控除と事後払い戻しの運用方法はそれぞれ以下の通りである。
● 当期控除:契約記載の販売コミッションは90.90%であり、商品数量を11、商品合計価格を999.90元として発票を発行する。
● 事後払い戻し:契約記載の販売コミッションは90.90%であり、商品数量11、商品合計価格1100.00元として発票を発行し、その後別途100.10元を払い戻す(尚且つ仕入先の協力を求め、コミッション金額について赤字増値税専用発票の発行を要請し、又は仕入先が増値税普通発票を発行する)。

以上から、「明示的な方法によるコミッション」は法律上容認される適法な奨励方法に該当し、商業賄賂にはならない。もっとも、事業者が実施した「明示的な方法によるコミッション」について、事業者と取引相手のいずれも、生じた「コミッション」を明示的な方法で事実どおりに記帳し、税務上の処理を行わなければならない。このほか、これまでの実務経験を踏まえると、できる限りそれぞれの取次販売店/小売業者について、いずれも同じ基準で奨励政策(奨励の実施は取次販売店/小売業者の実績、目標達成などによって異なることは可能である)を実施することが望ましく、その点、事業者には注意していただきたい。また、「明示的な方法によるコミッション」という奨励方式が始終法律的に容認される本来の目的で事業者のビジネス目的において適切な役割りを担うことができるように、「明示的な方法によるコミッション」の度合いをビジネス上の合理的な要求(現時点で法律上、これに対して明確な制限を定めていないが)を満たすようにするのがよい。上記をまとめると、事業者がコンプライアンス対応方案を制定する際、又は販売奨励金の運用に際して、コンプライアンス上の審査を行う時には、上記を踏まえて判断し、検討していく必要があるが、これは先頃発生したタイヤ企業の行政処罰案件から、事業者が学ぶべきことであろう。

(里兆法律事務所が2017年3月1日付で作成)

(※2)手数料とは、取引相手が事実どおりに仲介又は代理サービスなどを提供した場合、事業者が対価として支払うものである。したがって、本稿にいう奨励の種類に該当しない。またこれに似ているものには、労務費、販促費などが含まれる。実践において、事業者から取引相手に上記費用を支払う行為が次の要件を満たす場合、通常、商業賄賂に認定されるリスクは排除される。係る名目にかこつけていない、費用精算を直接行っていない、相手方(料金受取人)が係る経営範囲を具備している、係る業務と費用が実際に発生したことを証明する証拠を有している、金額は合理的でなければならず、契約書、発票が揃っていること、双方は事実どおりに記帳しなければならない、その他。
(※3)事実どおりに記帳するには、通常、事業者及び取引相手は自分が与えた、又は相手からもらったコミッションを発票上に反映させ、各自の財務帳簿に記載しなければならない。尚且つ、反映させた、又は記載した係るコミッションの名目、金額、コミッション率などは実情に合致するものでなければならない。

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