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企業名称の新規則についての簡潔な紹介

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2018年3月13日

一、「使用禁止・制限規則」及び「比較対照規則」の公布に至った背景

「中華人民共和国会社登記管理条例」の規定によると、会社設立にあたり、まずは登記機関にて名称の仮認可を申請しなければならない。しかしながら現在、名称認可に係る規定は「企業法人登記管理条例」、「会社登記管理条例」、「企業名称登記管理規定」、「企業名称登記管理実施弁法」及び工商総局の関連規範文書などに散在している。これらの規定が煩雑で不明瞭であるために、会社設立では「ネーミング困難、効率低下」といった問題に直面している。

2017年4月19日、国家工商行政管理総局(以下、「工商総局」という)は「登記の効率を向上させ、企業名称登記管理改革を積極的に推進することに関する意見」を公布し、2017年10月1日までに各等級の企業名称のデータベースを完全開放し、企業名称照会・比較対照システムなどを構築し、整備することにより企業名称登記の效率を向上させるとした。

上述の指導意見を着実に実施するため、工商総局及び一部省・市の工商局はすでにそれぞれの政府公式サイトを通じて、企業名称データベースを一般向けに開放しており、また、工商総局もそれに伴い、「企業名称使用禁止・制限規則」(以下、「『使用禁止・制限規則』」という)及び「企業名称同一・近似の比較対照規則」(以下、「『比較対照規則』」という)を公布したが、企業名称登記の効率を向上させ、最終的には企業名称の仮認可を廃止するための条件整備をその趣旨としている。

二、「使用禁止・制限規則」及び「比較対照規則」の主な内容

(一)企業名称の構成を明確にした

「使用禁止・制限規則」では、企業名称は行政区画、商号、業種、組織形態という順に構成されることを定め、且つこの4つの構成部分において、使用禁止・制限の内容をそれぞれ明確にした。

1.行政区画
● 市轄区の名称を行政区画として単独で使用することを禁止する。
● 下記条件のいずれかを満たしており、且つ工商総局の認可を受けた場合、企業名称に企業所在地の行政区画を含まないとすることができる。(一)国務院が許可した場合。(二)工商総局で登記、登録する場合。(三)登録資本(又は登録資金)が5,000万元以上の場合。(四)工商総局が他の規定を定めている場合。
● 外国(地区)の出資企業の商号を使用する外商独資企業、外国側の持分支配下にある外商投資企業は、工商総局の許可を得た場合、名称中に「中国」という文字を使用ことができる。
● 市の企業登記機関が認可した場合、市轄区の名称と市の行政区画は併用することができる。最高レベルの行政区における企業登記機関が認可した場合、省、市、県の行政区画は併用することができる。

2.商号
● 商号は国の規範に適合する2つ以上の漢字によって構成され、行政区画、業種、組織形態を商号として使用してはならない。但し、県以上の行政区画の地名に別の意味が含まれる場合を除く。
● 短いセンテンスが明らかに識別力を有しているか、又は別の意味が含まれる場合を除き、商号は文、文の集まり及び段落を使用してはならない。
● 別の意味が含まれているか、又は一部分として使用し且つ商号全体に別の意味が含まれる場合を除き、商号には「国家レベル」「最高級」「最善」などの誤解を与え得る内容と文字を含んではならない。外国の国(地区)の所属管轄区、都市名称及びその略称、特定の対象を表す名称を商号として使用してはならない。職業、職位、学位、職称、軍隊の階級、警察官の階級など及びその略称、特定の対象を表す名称を商号として使用してはならない。

3.業種
● 企業は国の業種分類に基づき、業種名の用語を確定しなければならず、当該業種について法律法規などに特段の定めがある場合には、当該企業名称の業種部分に明記しなければならない。法律法規などで経営が禁止される業種を明記することは禁止する。
● 下記条件を満たしている場合、国民経済業種分類の用語を使用せずに業種名を表記することができる。(一)企業経済活動の性質が国民経済業種における5つ以上の大分類に該当する場合。(二)企業登録資本(又は登録資金)が1億元以上であり、又はグループ会社の親会社である場合。(三)同一の企業登記機関で登記、認可した同分類の企業名称の商号と異なる場合。

4.組織形態
● 企業はその組織構造又は責任範囲と異なる組織形態を使用してはならない。例えば、有限責任会社の名称において、株式会社を組織形態として使用してはならない。

(二)名称の同一、近似基準を定めた

1.企業から提出された名称が、もしも同一の企業登記機関で登記、認可済みの企業名称との間で次に掲げる状況に該当する場合、名称は同一であるとする。
● 完全に一致する場合。
● 行政区画、商号、業種及び組織形態の順が異なるが、文字が同じである場合。例えば、北京紅光酒業発展有限公司と紅光(北京)酒業発展有限公司など。
● 商号、業種の文字が同じであるが、行政区画又は組織形態が異なる場合。例えば、北京紅光酒業有限公司と紅光酒業有限公司。北京紅光酒業有限公司と北京紅光酒廠など。

2.企業から提出された名称が、同一の企業登記機関にて登記、認可済みの企業名称との間で次に掲げる状況に該当する場合、名称の近似であるとする。
● 商号が同じであり、業種名は異なるがその意味は同じである場合。例えば、万青地産有限公司と万青房地産有限公司、万青置業有限公司など。
● 商号が同音であり、業種名が同じであるか又は業種名は異なるがその意味が同じである場合。例えば、北京牛欄山酒業有限公司と北京牛蘭山酒業有限公司、北京牛藍山白酒有限公司など。
● 互いの商号に重なる部分があり、業種名が同じであるか又は業種名は異なるがその意味が同じである場合。例えば、北京阿里巴巴網絡科技有限公司と北京阿里巴巴巴巴網絡科技有限公司、北京阿里巴巴在線信息科技有限公司など。
● 商号が一部同音であり、業種名が同じであるか又は業種名は異なるがその意味が同じである場合。例えば、北京阿里巴巴科技有限公司と北京馬云阿理巴巴科技有限公司、北京阿理巴巴金控技術有限公司など。
● 業種名を含んでいないか、又は国民経済業種分類の用語ではない「実業」、「発展」などを業種名として表記しており、互いの商号に重なる部分があるか、又はその商号が同音、又は重なり合う部分が同音である場合。例えば、北京牛蘭山有限公司と北京金牛欄山有限公司。北京全聚徳有限公司と北京荃巨得有限公司、北京宏荃聚徳実業有限公司など。

なお、近似する名称を使用する場合、当該申請は概ね受理されたであろうというフィードバックがあったとしても、企業名称の申請に関しては、たとえ申請が受理されたとしても、そのまま認可されない可能性もあり、更には、認可された場合であっても、権利侵害のトラブルに巻き込まれたり、ひいては、企業名称の変更を強制されるリスクが存在する。

(三)企業の商号には著名商標を使用してはならない

「使用禁止・制限規則」第27条の規定によると、企業は、工商総局が著名商標のために保護している特定の漢字を同業種の企業名称の商号として使用してはならないとされているが、当該著名商標の保有者から使用許諾されている場合はこの限りではない。

新法令では、著名商標の保護を単独の1条項として設置しているが、これは、現実において企業名称と登録商標との抵触がよく発生しているためである。新法令では、工商総局が認定済みの著名商標を企業商号から除外しており、そのような抵触を源から解消することは、著名商標の保護に有益である。なお、新法令は、一般登録商標と企業名称とが抵触する問題については触れていないため、工商部門によるさらなる明確化が待たれる。

(里兆法律事務所が2017年11月9日付で作成)

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