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「名目上は売買だが実態は融資」の法的リスクを簡潔に考察する(後篇)

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2018年8月22日

二、判定基準及び法的効果
上記において、「資金空転型融資売買」及び「資金立替型融資売買」の2つの典型的事例をそれぞれ紹介したが、これらは「名目上は売買だが実態は融資」の2種の主な取引スキームであり、それぞれの法的効果も異なる。過去の司法判例に基づき、以下の通り簡潔にまとめる。

区分 認定基準 法的効果
資金空転型融資性売買(事例一) ●当事者は真の売買目的を有せず、効果意思と表示意思が一致しない。
●三者又は三者以上の主体間におけるクローズドループ型の循環売買であること。
●対象物が同一であり、且つ実際には流通しない。
●借り手が安値で売り、高値で買うようになっている。形式上は取引で損をしているが、実際には、利息を間接的に支払っている。
●各当事者が締結した売買契約は無効とする。分析は以下の通りである。
・資金空転型融資性売買契約をめぐる紛争では、借り手が行方不明になった、又は元金及び所定の利息を弁済する能力がなくなったという状況が最も多い。貸し手が取引のその他の当事者を被告として、売買契約の継続履行、貨物の引き渡し又は代金の返還を主張する。この場合、当事者の主張は売買契約の継続履行であるが、裁判所は、借り手が安値で売り高値で買うという非合理的な行為に基づき各当事者が締結した売買契約には真の売買意図が欠けており、虚偽の意思表示に該当するとし、契約を無効と認定する。
●通常、借り手は貸し手に対し、元金及び同期同類定期預金の利息を返済する必要がある。(注:貸し手が契約が無効になったことにも過失があるため、通常、裁判所は公平の原則に則り、借り手の返済すべき利息額を適度に軽減し、事情を斟酌して同期同類預金基準利率による利息計算を採用する)。
●また、裁判所は各当事者の過失の度合いによって、各当事者が負うべき過失責任を認定する。
資金立替型融資性売買(事例二) ●借り手とサプライヤーの間で真実の売買意思があり、対象物が実際に納入され、流通する。
●貸し手は借り手、サプライヤーとの間で真実の売買の意思はなく、固定の利息を得ることを取引目的とする。
●サプライヤーは実際の買主である借り手によって指定される。貨物は通常、供給元によって直接に実際の買主に納入され、貸し手は対象物の実際の納入にはかかわらない。
●双方間の売買契約は当然に無効になるわけではない。通常、裁判所は貸借紛争に従い、借り手と貸し手間の売買契約を審理する。納入される対象物は買主である借り手の所有に帰する。具体的には以下の通り分析する。
・借り手・貸し手の双方が締結した契約は、名目上は売買だが実態は融資である場合、裁判所は通常、一般の貸借紛争に従い審理する。「最高人民裁判所による民間貸借案件審理における法律適用の若干事項に関する規定」第二十六条では、「借り手・貸し手の双方の約定した年度金利が24%を超えない場合、貸し手は借り手に対し、約定の金利により利息を支払うことを要求した場合、人民裁判所はこれを支持する。借り手・貸し手の双方の約定した年度金利が36%を超えた場合、超える部分の利息に係る約定は無効とする。借り手は貸し手に対し、支払済みの年度金利の36%を超える部分の利息の返還を要求した場合、人民裁判所はこれを支持する」と定められている。したがって、売主・買主双方が売買契約で約定した利益が法定の民間貸借利率基準を超えない場合、貸し手の要求は裁判所の支持を得ることができる。
●貸借案件において、裁判所は基本的に貸し手がその貸した資金及び収益を回収できるよう判決を下す。市場リスクによる損失など経営上のリスクにより、貸し手による元金の回収に影響をもたらした場合、当該損失についても借り手負担との判決が下される。即ち、上記事例二の判決の通りである。

以上から、資金空転型融資売買のケースでは、一旦裁判に持ち込まれた場合、裁判所は通常、その法的効力を認めない。この場合、貸し手は通常、元金及び利息しか回収できず、さらに一部の訴訟費用を負担しなければならない。一方、資金立替型融資性売買のケースでは、裁判に持ち込まれると、裁判所は双方の法律行為の効力を認めるが、双方は余計な訴訟に巻き込まれ、労力や物資を無駄にしてしまう。よって、「18号文」で企業間貸借の適法性が明確に認められている前提では、借り手・貸し手の双方(特に、貸し手)にとっては、企業間貸借契約を締結したうえで貸借を行うことは、「名目上は売買だが実態は融資」の方法での融資よりも法的には保障される。勿論、完全に適法、遵法であるようにするならば、商業銀行を通して委託貸付を実施する方がより信頼できる手法であることは間違いない。

(里兆法律事務所が2018年4月20日付で作成)

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