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「証照分離」改革が外国投資家による電信業務への投資に与える影響

中国ビジネスレポート 法務
董 紅軍

董 紅軍

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2021年10月13日

■ 概要

 2021年6月29日に、工業情報化部は、「『証照分離』改革の推進に関する工業情報化部による通告」(工業情報化部政法函[2021]159号、以下「159号文」という)を公布した。本稿では、主に159号文における「証照分離改革」措置が外国投資家による電信業務への投資に与える影響を紹介する。

■ 本文

Q1159号文の公布の背景

A

国務院が2021年6月3日に公布した「『証照分離』改革を推進し、事業者の発展、活性化を更に促すことに関する通知」(国発[2021]7号)に呼応し、これを貫徹させるため、工業情報化部は159号文を制定し、「証照分離」改革措置を具体化した。

Q2:「証照分離」改革とは?

A

「証照分離」改革とは、主に市場監督管理部門が発行する営業許可証及び各関係業界の主管部門が発行する経営許可証の審査許可の改革をいい、それは主に事業主の「証書取得が難しい」という問題を解決するための改革である。2015年12月、上海浦東新区は、「証照分離」改革試行を率先して行なった。2021年7月1日から、企業に係る経営許可事項の全てを網羅するリスト管理を中国全土で実施し、審査許可制を直接廃止、審査許可制から届出制への変更、告知誓約制の実施、審査許可サービスの最適化という4つの方法に分類して審査許可制度改革を推進する。

Q3:外国投資家による中国電信業務の投資において、159号文には、どのような注目ポイントがあるか?

A

外国投資家による電信業務投資において、159号文には、主に改革上の2つの注目ポイントがある。ひとつは、外国投資家が投資し電信業務を取扱う際の審査許可制を中国全土で廃止し、今後は「外商投資経営電信業務審査決定意見書」を発行しないとしたこと。もうひとつは、自由貿易試験区における告知誓約制試行の同時実施を明確にしたことである。

Q4:工業情報化部による159号文の公布は、中国が外国投資家に対し電信業務を完全に開放したことを意味するのか?

A

そうではない。

159号文で外国投資家が投資し電信業務を取扱う際の審査許可規定を廃止したことは、外国投資家が投資し電信業務を取扱う際の政府審査許可手続きをある程度簡素化したにすぎず、外国投資家が基礎電信業務及び付加価値電信業務に投資するためには、これまで通り実体としての特定の条件を満たさなければならない。

Q5159号文の施行後、外国投資家が投資し電信業務を取扱うためには、実体としてどのような条件を満たしていなければならない?

A

主な条件として、外資の持分比率要求、その他所定の条件がある。

Q6:外国投資家が投資し電信業務を取扱ううえでの外資の持分比率要求はどのようなものか?

A

159号文の別紙及び「外商投資電気通信企業に対する事中及び事後の監督管理強化に関する工業情報化部による通知」(工業情報化部通信函[2020]248号)等の関連規定によれば、外国投資家が投資し電信業務を取扱う上での外資持分比率要求は、以下の通りである。

(表1)

地区

外資の持分比率要求

全土

1.基礎電信業務:外資の持分比率は、最終的に、49%[1]を上回ってはならない。

2.付加価値電信業務:

①.電子商取引業務、国内多地点同時通信サービス業務、保存・転送業務、コールセンター業務:外資の持分比率を廃止する。

②.①を除く付加価値電信業務:外資持分比率が 50%を超えないこと。

自由貿易試験区

1.基礎電信業務:外資の持分比率は、最終的に49%を上回ってはならない。

2.付加価値電信業務:

①.電子商取引業務、国内多地点同時通信サービス業務、保存・転送業務、コールセンター業務:外資の持分比率を廃止する。

②.情報サービス業務(アプリストアのみ含む)、インターネット接続サービス業務:外資の持分比率が50%を超えてもよい[2]

③.①、②を除く付加価値電信業務:外資持分比率が50%を超えないこと。

Q7:上記Q6にいう外資の持分比率要求は、株主をトレースする必要があるか?

A

根源までトレースする必要がある。即ち、直接の株主だけでなく、さらにその上、及び複数上の間接株主までトレースしなければならない。

Q8Q6における外資の持分比率要求を除き、外国投資家が投資し電信業務を取扱うためには、更にどのような所定条件を満たす必要があるのか?

A

外資持分比率に関する要求を除き、外国投資家が投資し電信業務を取扱う場合のその他実体としての所定条件は、主に以下の通りである。

(表2[3]

電信業務類型

登録資本金の条件/要求

取扱に関する実質的条件/要求

基礎電信業務

1.省の枠を超える基礎電信業務:登録資本金最低限度額は、RMB10億元である。

2.省内基礎電信業務:登録資本金最低限度額は、RMB 1億元である。

外国側主要出資者が、登録国又は地区で基礎電信業務経営許可証を取得すること。

付加価値電信業務

1.省の枠を超えた付加価値電信業務:登録資本金最低限度額は、RMB1000万元である。

2.省内付加価値電信業務:登録資本金最低限度額は、RMB100万元である。

外国側主要出資者は、付加価値電信業務取扱の良好な実績及び運営経験を有していなければならない(例えば、経営活動を取扱うに相応しい資金及び専門人員)

Q9Q8における外国側主要出資者とはどのような出資者をいうか?

A

外商投資による電気通信企業の外国側主要出資者とは、外国側全出資者のうち、出資額が最も多く、且つ外国側全出資者の出資総額の30%以上を占める出資者をいう。

Q10159号文によると、外国投資家が投資し電信業務を取うには、主にどのような政府審査許可手続きが必要か?

A

政策の開放度合いにより、中国全土と自由貿易試験区とでは、外国投資家者が投資し電信業務を取扱う際の審査許可手続きは若干異なる。

1.中国全土:

電信業務の事前許可制度は廃止され、「内資と外資の一本化」原則に基づき、事後許可に基づき取り扱う。言い換えるならば、外国投資家が投資し電信業務を取扱うには、まず会社を設立し、営業許可証を取得することができ、その後、電信業務を正式に取り扱う前に、電信業務許可証を改めて取得することになる。

2.自由貿易試験区:

1)電信業務の事前許可制度を廃止し、「内資と外資の一本化」原則に基づき、事後許可に基づき取り扱う。

2)申請者が提出した第二類付加価値電信業務関連許可事項の申請について、告知誓約制試行が実施される。

Q11:告知誓約制とは何か?

A

告知誓約制とは、申請者による第二類付加価値電信業務関連許可事項の申請に対し、電信管理機構が、許可の具体的な条件、申請要求、監督管理規則及び誓約違反の影響を一括りに申請者に告知し、申請者が、要求に従い申請書類を提出し、且つ「告知条件及び要求を満たしおり、監督管理規定及び法定義務を了知し、誓約違反の法的責任を負う」ことを書面で誓約し、審査許可部門が、申請者の誓約に基づきその場で審査許可決定を下すことをいう。

(執筆者:里兆法律事務所  董紅軍、李繁)

[1]法律では、外資の持分比率が49%を超えない状況において、基礎電信業務を取扱うことを認めているが、監督管理部門がかなり慎重であり、実践において、外資による基礎電信業務取扱が審査許可を受けたケースはほとんどない。

[2] 現在、実務取扱において、監督管理部門もこの点について慎重な姿勢をみせており、外資の持分比率が50%を超えるこのような付加価値電信業務を取り扱う外商投資企業はかなり珍しい。

[3] 本表は、外国投資家が投資し電信業務を取扱う際の実体としての条件に関する個別規定であり、これをベースとし、外国投資家が投資し電信業務を取扱う際には、更に「電信条例」に定める内資企業による電信業務取扱の一般的な実体としての条件も満たしていなければならないが、本稿では詳細な言及は割愛する。

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