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外資系企業による合弁契約と会社定款の修正に関するよくある質問

中国ビジネスレポート 法務
董 紅軍

董 紅軍

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2024年9月27日

概要新「会社法」が2024年7月1日から施行され、会社に対し一連の新たな要求を打ち出しており、「外商投資法」でも、外資系企業は2024年12月31日までにその組織形態、組織機構などを調整しなければならないと定めている。そのため、外資系企業、とりわけ中外合弁経営企業と中外合作経営企業(以下「共同経営企業」という)は、法的な要求を満たすよう、合弁契約と会社定款の修正を続々と開始している。本文は、この過程における共同経営企業などの外資系企業からのよくある質問を分析し、かつ参考意見を提供することを目的とする。

本文

Q1:規模の比較的小さい外資系企業であれば、会社定款を修正しなくてよいのか?

A1

このような理解は正しいとは言えない。新「会社法」では、会社定款に記載しなければならない事項、会社の組織機構及びその職権などの内容が調整され、その中には外資系企業の既存の会社定款と一致しない内容が少なからずあり、これは会社の規模の大きさとは関係がないため、修正が必要となる。とりわけ共同経営企業にとっては、組織機構の調整は合弁契約と会社定款の最も重要な修正内容の一つであり、後文にて具体的に分析する。

Q2:共同経営企業は、どのように組織機構を調整すべきか?

A2

共同経営企業の株主会、董事会/董事、監事会/監事などは、いずれも現行法律の要求を満たすよう適切な調整を行う必要がある。

1.株主会

以前の「中外合弁経営企業法」「中外合作経営企業法」に基づいて設立された共同経営企業は、その権力機構は通常、董事会であり、これらの法律が既に廃止された現在、「会社法」の規定に依拠して権力機構を株主会へと調整しなければならない。また、有限責任会社の株主会会議は通常、株主が出資比率に応じて議決権を行使するが、これは共同経営企業の従来の権力機構(董事会)の議決手続きとは異なる可能性があり、中国側株主と外国側株主とが株主会の議決手続きについて話し合う必要がある。

2.董事会/董事

共同経営企業の董事会/董事は会社の執行機構へと切り替わり、新「会社法」の規定によると、その構成については次のような案がある。

● 董事会のメンバーが3人以上であり、人数の上限はない。董事会は董事長1人を設置し、副董事長を設置することができる。

● 規模が小さい、又は株主の数が少ない有限責任会社は、董事会を設置せず、董事1人を設置することができる。

3.監事会/監事

共同経営企業の監事会/監事は会社の監督機構であり、新「会社法」の規定によると、その構成については次のような案がある。

● 監事会のメンバーは3人以上であり、主席を1人設置する。

● 規模が小さい、又は株主の数が少ない有限責任会社は、監事会を設置せず、監事1人を設置することができる。株主全員の合意を経て、監事を設置しないことも可能である。

また、共同経営企業は董事会の中に監査委員会を設置して、監事会の職権を行使させ、監事会/監事を設置しないことも可能である。

Q3:各組織機構の職権は、どのように調整すべきか?

A3

共同経営企業はもともと、会社法に定められた株主会の職権を董事会に与えていたが、今回の調整後、これらの職権は株主会に戻されることになった。合弁契約と会社定款において株主会と董事会/董事間の職権のバランスをどのように調整するかは、中国側株主と外国側株主との協議ポイントの一つとなるであろう。また、新「会社法」では、株主会の職権の行使を董事会/董事により多く授権することも認められており、これは共同経営企業にとっては株主会と董事会/董事の職権を合理的に配置するうえでの勘案要素の1つであると言える。

Q4:修正する際に、特に注意すべき組織機構のメンバーに関する内容はあるか?

A4

新「会社法」は、全体的に董事、監事、高級管理職の会社に対する忠実及び勤勉義務を強化しており、共同経営企業は合弁契約と会社定款を修正する際に係る条項の調整に注意する必要がある。例えば、以下のとおりである。

● 董事、監事、高級管理職及びその関係者の、共同経営企業と利益相反が存在する可能性のある取引については、合弁契約と会社定款において決議権を株主会又は董事会/董事に付与し行使させることを考慮しなければならない。

● 中国側株主と外国側株主は、董事のための責任保険の付保について協議することができ、合弁契約と会社定款の中では協議結果を記しておくのがよい。

● 新「会社法」は、董事が清算義務者であることを明確にしており、清算組のメンバーは会社定款によって定めることができるため、共同経営企業はこれに基づき合弁契約と会社定款の清算に係る条項を調整する必要がある。

Q5:従業員が300人を超える共同経営企業は、董事会または監事会に従業員代表を設置しなければならないか?

A5

新「会社法」では、従業員数300人以上の有限責任会社は、法に依拠して監事会を設置し且つ従業員監事を設置する場合を除き、その董事会のメンバーの中に従業員董事を設置しなければならないと定めている。しかし、新「会社法」は同時に、株主数が少ない有限責任会社は、董事会を設置せず、董事1人を設置することができると定めている。この時、従業員数300人以上で且つ株主数が少ない共同経営企業は、董事会を設置しないことによって従業員董事の設置を回避することができるかどうかが、実務において議論を呼ぶテーマの一つとなっている。

筆者が把握している限りでは、現在、各地の監督管理部門は本件についての意見が一致しておらず、所属監督管理部門自ら監督管理要求を出していない以上、共同経営企業はしばらく様子見するのがよいと思われる。

Q6:中外合作経営企業は、双方の出資比率をどのように調整すべきか?

A6

中外合作経営企業において、外国側株主が貨幣で出資し、中国側株主は価格評価の難しい合作条件(例えば、コンサルティングサービス等)だけを提供するケースは珍しくなく、この時、中国側株主の登記上の出資額は0元である。新「会社法」の下で、中国側株主の出資額をどのように調整するのかが一つの難題となっている。

現在、実務における一般的な対応策には、以下の3通りある。

● 中国側株主の出資額を1元へと調整し(5年以内に実際に払い込む必要がある)、中国側株主と外国側株主は、引き続き合弁契約の約定に従い議決権を行使する。

● 中国側株主が共同経営企業に増資を行い、且つ株主会の議決手続きを相応に調整する。

● 外国側株主が出資額の一部を中国側株主に譲渡するが、中国側株主と外国側株主は引き続き合弁契約の約定に従い議決権を行使する。

当然ながら、いずれの方法も、中国側株主と外国側株主の交渉は不可欠であり、会社は理想的な結果を得るためにも、専門家に依頼して交渉に参加してもらうのがよい。

Q7:共同経営企業の株式譲渡において調整すべき事項はあるか?

A7

新「会社法」では、株主が株主以外の者に株式を譲渡する際に、他の株主の過半数の同意を得なければならないとは求めておらず、株式譲渡に関する事項を書面で他の株主に通知するだけでよいとされており、その場合、他の株主は同等の条件の下での優先購入権を有する。ただし、会社定款に別途規定がある場合は、その規定に従うことになる。

共同経営企業にとって、株主は中国側と外国側であることから、一定の特異性があり、過半数の同意に関する規定を残したままにするかどうかも協議の際に注意すべき事項であり、合弁契約と会社定款の中で明確にしておかなければならない。

Q8:共同経営企業が合弁契約と会社定款を修正する際に、特に注意すべき事項として他にどのようなものがあるか?

A8

すでに紹介した内容のほか、新「会社法」は会社定款の内容に対しいくつかの要求を打ち出しているので、会社が合弁契約と会社定款を修正する際には注意が必要である。その中で特に注意すべきなのは、以下の通りである。

● 会社定款では、出資期限と会社法定代表者の選出、変更方法を明記しなければならず、これは従来多くの共同経営企業の会社定款において明確に記載されていなかった事項である。

● 以前、一般事項に関する株主会の議決手続きは会社定款で規定すればよいとされ、法律上は特に制限はなかったが、新「会社法」では過半数の議決権を代表する株主による採択を経なければならないとされている。

● 以前は、董事会の議事方式と議決手続きは会社定款で規定すればよいとされ、法律上はあまり制限されていなかったが、新「会社法」では董事会会議は過半数の董事が出席しなければ開催できず、且つ董事会は決議をするにあたり、董事全体の過半数による採択を経なければならないと求められている。

終わりに

共同経営企業は、その体制の特異性から、他の形態の外資系企業と比べると、合弁契約と会社定款を修正する際により多くの課題に直面することになる。「外商投資法」で定められた移行期間が2024年12月31日に満了することを考慮し、共同経営企業は速やかに準備作業を開始し、中国側株主と外国側株主が十分に話し合い、合意したうえで、その後の提携方式を確定し、且つ合弁契約と会社定款の修正作業を円滑に完了させるのがよい。

(作者:里兆法律事務所 董紅軍、鄭旭斌 2024年8月12日)

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