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ログイン2023年2月27日
~企業は上海で就労する外国人被用者のために法に依拠し社会保険料を納付する必要がある
第737期里兆法律情報では、上海で就労する外国人被用者の「滬人社養発[2009]38号」規定の期限が到来した後における、社会保険納付問題について分析し助言を行っている。その後、筆者は引き続き当該問題を注視していたところ、新たな動きがあったため、以下のとおり解説する。
上海市人的資源・社会保障局へ複数回にわたって問い合わせたところ、「滬人社養発[2009]38号」文の期限が2021年8月15日に到来した後、外国人被用者について、雇用者は国の規定に従い、労働者社会保険を納付しなければならない、というのが現時点における、上海市人的資源・社会保障局の統一見解である、とのことであった。また、これについては、国レベルの「中国国内で就労する外国人による社会保険加入の暫定弁法」等の規範的文書によると、雇用者は外国人被用者のために法に依拠し五険(養老保険、医療保険、労災保険、失業保険及び生育保険)を納付しなければならないことになっている。このほか、上海市人的資源・社会保障局が当該問題について上海市社会保険事業管理センター宛に配布している「滬人社養[2021]358号」(内部文書[1]であり、一般公開されていない)において、「上海市の雇用者と労働(雇用)関係を築いており、かつ規定通りに就業証書の手続きを行っている外国籍及び香港、マカオ、台湾等の被用者については、国の規定に従い、労働者社会保険に参加しなければならない」ことを明確に定めている。
筆者の知る限りでは、実際には、上海地区においては外国人被用者の社会保険料を納付し始めている企業もあれば、まだ外国人被用者の社会保険料を納付していない(今後、当該問題についての方向性を明確に示した文書が一般公開されるまで、しばらく様子を見ている)企業もある。しかし現段階においては、万が一の場合に備えて、企業では国の規定に従い、外国人被用者の社会保険料を納付し始めておくことが望ましいと考えられる。なお、追納する必要があるかどうかについては、上海市人的資源・社会保障局の話によると、上海市のレベルでは今のところ企業に対し追納を義務付けてはいないが、実際のところ、社会保険センターの取扱窓口の判断によって決まるとのことであった。
法的リスクの面では、「社会保険法」、「中国国内で就労する外国人による社会保険加入の暫定弁法」に基づくと、以下のとおりである。
(1)従業員の社会保険加入登録を適時に行っていない企業については、上海市社会保険事業管理センター(「社会保険センター」)が所定の期限内に是正するよう命じる。
(2)従業員の社会保険加入登録済みであるが、社会保険料を満額納付していない企業については、税務機関が所定の期限内に納付する(又は不足分を追納する)よう命じ、かつ延滞金を徴収する。
情報筋によると、現時点における運用状況としては、社会保険センターは現時点においては、外国人を雇用している企業における「労働者社会保険加入状況」について自発的に査察を行ってはおらず、通常では、外国人被用者から社会保険センターに社会保険についての相談があった場合に、それを受けて、社会保険センターが法に依拠し処理することになっている、とのことであった。
なお、中国と社会保障相互免除協定を締結している国(日本、ルクセンブルク、スペイン、オランダ、スイス、韓国、ドイツ、フィンランド、デンマーク、カナダ等を含む)については、これらの国の被用者は協定に基づき、適用要件を満たしている前提において、上海市社会保険事業管理センターに社会保険における特定の項目もしくは種類の負担免除を申請することができる。2019年1月1日から発効している「日・中社会保障協定」に基づくと、以下5つのケースに該当する日本人被用者は、中国で養老保険料が免除される(その他種類の社会保険は、免除対象外である)。
(1)派遣される者:日本の領域内に事業所を有する雇用者に雇用されている者が、当該雇用者のために役務を提供するため、その被用者としての就労の一環として当該雇用者により中国の領域に派遣される者を指す。
(2)海上航行船舶において就労する被用者:日本の旗を掲げる海上航行船舶において雇用されている者、及び日本の領域内に通常居住する場合には、中国の旗を掲げる海上航行船舶において雇用されている者を指す。
(3)航空機において就労する被用者:日本の領域内の雇用者により雇用され、国際航空路線の航空機において被用者として就労する者を指す。
(4)外交使節団及び領事機関の構成員並びに公務員:外交使節団及び領事機関の構成員とは、「外交関係に関するウィーン条約」及び「領事関係に関するウィーン条約」に規定する者を指し、公務員とは、就労の一環として日本から中国の領域に派遣される公務員等を指す。
(5)例外:日中両国の権限のある当局又は実施機関は、特定の者又は特定の範囲の者を例外として取り扱うことを認めることについて合意することができる。
手続きの面では、上記5つのケースに該当する日本人被用者は、保険加入地にある中国社会保険取扱機関に対し、日本の取扱機関から発行された「適用証明書」を提出し、保険加入地にある社会保険取扱機構にて原紙の審査を受け、原紙のコピーを届け出る必要があり、それにより情報が精査され確認できた場合、該当者の「適用証明書」に定める期限に従い、社会保険(養老保険)の納付義務が免除されることになっている。
(作者:里兆法律事務所 包巍岳、熊瀟)
[1] 現在、内部文書である「滬人社養[2021]358号」については、上海市人的資源・社会保障局へ開示を申請することができることになっている。筆者はすでに申請し、「滬人社養[2021]358号」文を入手している。資料の入手をご希望の方は、弊所までご連絡ください。
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