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「外商投資奨励産業目録(2022年版)」を考察する

中国ビジネスレポート 法務
董 紅軍

董 紅軍

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2023年4月28日

概要:「外商投資奨励産業目録(2022年版)」(以下「目録」という)が2023年1月1日から発効するが、現行の2020年版と比較すると、「目録」は全国と地区との「二段階の目録」という構造を引継ぎ、また239項の条目が新たに追加され、外国からの投資を奨励する範囲がさらに拡大されており、中国の対外開放拡大の決意を示している。本文では、「目録」が改訂されることとなった背景、改訂の方向性及びその意味するところについて整理し分析する。

本文

■ 「目録」が改訂発布されたことは国内外の投資環境の変化に関係している

1995年以降、中国は「外商投資産業指導目録」を発布し且つ適宜更新しており、それらは奨励、制限、禁止の3つの分類を網羅していた。2019年の外商投資管理制度の改革後は、そのうちの奨励類の外商投資産業リストが独立した目録として発布されるようになり、現在までにすでに第三版が出ている。

「外国投資奨励産業目録」は中国の重要な外国投資促進政策であり、中国が外国からの投資を奨励し、牽引する特定の業界、分野、地区を列挙しており、外資企業が中国への投資の期待と自信を高めるうえでの利点があるだけでなく、外資企業が中国経済の発展によりよく参与できるよう導くうえでも有益である。

今回の改訂は、国内外の環境の変化と需要に呼応するものでもあり、中国の経済発展の質をさらに高めるうえでの重要な段取りでもある。具体的には、以下の方面から説明することができる。

1.中国による外資誘致は国内外の新たな情勢に挑むことになる

1)各国による外資誘致が競争の局面を形成している。コロナ禍でのダメージといった要因の影響を受け、世界的に投資が低迷し、各国は次々と政策を打ち出して外資を誘致している。米国、EUなどの先進国は主に税制改革、再工業化戦略などを通じて、自国企業の還流を奨励し、同時に多くの外資も引き付けている。ベトナム、カンボジア、インドネシアなどの発展途上国は、外資導入の優遇策を競って打ち出しており、世界的に熾烈な競争の態勢が徐々に形成され、中国が「外資を安定させる」ことの難度が高まっている。

2)中国による外資誘致面での伝統型の優位性が弱まっている。中国の経済発展が新たな常態に入ってから、労働力、土地、市場資源のコストが上昇したことに加え、近年、生態環境保護の政策が次々と発布されたことで、これまで安価な要素の資源に頼って外資を誘致してきたという伝統型の優位性が徐々に弱まっている。これと同時に、自国企業の競争力が高まり、国内市場の外商投資に対する吸引力が弱まり、一部の労働集約型企業はバリューチェーンを労働力や土地などのコストがより低い東南アジア、南アジア、アフリカなどの地域へと徐々にシフトさせてている。中国貿易促進会が発表した「2022年第1四半期中国外資系ビジネス環境調査報告」によると、一部の外資企業は中国への投資計画の見合わせを検討し始め、又は決定済みであり、4%の外資企業は中国への増資の意向が低下している。

3)コロナ禍の持続性、反復性が外商投資の期待と自信を低下させた。中国の操業稼働停止などのコロナ蔓延防止措置、及びこれらにより生じた各種の労務紛争、商業紛争などによって外資企業は大きな負担を強いられた。その一方で、市場環境や国内消費、投資環境が変化し、不確実、不安定な要素も多く、外資企業は中国への投資に慎重な姿勢を取るようになり、その生産と経営活動は明らかに抑制されている。

「目録」の発布は現情勢のもとで外資をさらに安定させるための重要な措置であり、緩和政策を継続して拡大していくことで、外商投資をさらに安定させ、外資の期待と自信を奮い立たせるうえで有利である。

2.中国の外商投資奨励政策に成果が見られ、外商投資政策上のより高い要求を行う

2019年以降、中国は外国投資の規制を絶えず緩和している。奨励政策がプラスに作用し、2021年通年の外資実際使用額は前年同期比で15.8%増加し、2022年1月から8月までは前年同期比で16.4%増加した。国連貿易開発会議(UNCTAD)の世界投資報告書によると、2021年中国の海外直接投資は世界の11.4%を占め、世界2位であり、中国は引き続き世界の主要な外資投資先としての地位を固めている。

2021年11月、習近平国家主席は第4回中国国際輸入博覧会の開幕式で、中国が「外資投資奨励産業目録」を改訂し拡大していくことを掲げ、2022年の「経済を着実に安定させるための包括的政策措置の印刷配布に関する国務院による通知」の中でも、外商投資奨励範囲を拡大し、ミドルエンド及びハイエンド製造、研究開発、現代サービスなどの分野ならびに中西部、東北地区への投資拡大を支援することを明確に求めている。

このことからも、「目録」の改訂は発展にとって必然的な成り行きであることが見て取れる。外商投資政策の連続性、安定性を維持した上で、「総量の増大、構造の最適化」を原則とし、「目録」の改訂を通じて外商投資奨励範囲をさらに拡大し、外資の投資先を誘導することは、産業のモデルチェンジとグレードアップを助け、且つ地域の協調的発展を推進し、それによって経済発展の安定を保ちながら前進していくことの実現に資するものである。

■ 「目録」の改訂は数多くの分野に関係してくるものであり、産業構造の最適化と地域の協調的発展に重点を置くものである

「目録」は産業発展計画の要求と政策の方向性を十分に反映するものであり、それは主に以下の方面で具現化されている。

1.外資の製造業への投資を引き続き奨励し、産業チェーンとサプライチェーンの水準を引き上げる

外商投資奨励政策に基づき、相当数の外資企業はすでに自国企業との互いに関連付け、互いに支え合うといった産業チェーンとサプライチェーンネットワークを形成している。「目録」の改訂は、外商に中国でまだ十分な発展を遂げていない分野に投資するようさらに導き、新たに開放された分野での本土との提携を促進し、技術の革新とグレードアップを加速させ、それによって互恵共栄、共同発展を実現させている。設備製造業を例にとると、中国の一部の設備の重要部品は輸入に依存しなければならず、短期間で自主研究開発により解決するには一定の難度があるため、外商がエレメント、部品、設備製造などの分野に出資し、進出するるよう奨励することは、製造業での質の高い発展を通しウィークポイントを補ううえで重要な役割を果たしている。

2.外資の生産型サービス業への投資を持続的に奨励し、サービス業と製造業とが融合した発展を促進する

「目録」は低炭素環境保護グリーン省エネ節水の先進的なシステム集積技術及びサービス、専門設計サービス、職業大学、人的資源サービス、クリーン生産評価認証と審査などの条目を新たに追加し又は改正し、中国がサービス業の良質で効率的な新システムを構築し、現代サービス業と先進製造業とが深く融合するよう推進するガイドラインを体現している。

3.中西部地区の目録範囲を拡大し、土地柄に応じて、現地の特色ある優位性を発揮させる

例えば、人的資源の優位性に立脚し、安徽、寧夏などの省・区にはスマート端末製品及び重要部品の生産、衣類付属品の加工生産などの条目を新たに追加した。農業資源の優位性に立脚し、貴州省、黒竜江省などの省・区にはセレンが多く含まれる農産物の栽培、黒色土保護利用技術の研究開発・革新などの条目を新たに追加した。沿岸部の外向型経済発展水準を向上させるため、チベット、新疆、雲南、青海などの省・区には商業チェーン経営、砂漠経済産業、越境物流、生態観光資源の保護型の開発と経営などといった条目を新たに追加した。資源型地域のグリーン転換を推進するため、内モンゴルには新たにクリーン石炭技術製品の開発と利用を追加した。外商投資奨励政策を的確に差異化して実施することにより、これらの地区に新たな経済成長拠点を育み、地域発展の格差を効果的に縮小させることができる。

■ 「目録」は外資と中国の経済発展に恩恵を与え、互恵と共栄を最終目標としている

「目録」は中国の重要な外商投資促進政策として、外資発展を支援し、外資産業ガイドラインを示し、外資地域の配置を最適化するうえで重要な役割を果たしてきた。中国は外資の進出によって本土の産業チェーンとサプライチェーンを発展させ、整備し、グレードアップさせ、技術上の難局を打破し、国家競争力を高めることができる一方で、「目録」の実施は外資企業に多重の利点をもたらすものであり、主には以下のように体現される。

1)「目録」に記載される奨励類外商投資プロジェクトは、3つの優遇政策を享受することができる。一つ目の政策として、国が免税対象外と定めている製品を除き、総投資額内の自社使用目的の輸入設備については、輸入関税が免除される。二つ目の政策として、土地を集約利用する奨励類工業プロジェクトに対しては、土地を優先して供給し、且つ所在地の等級が対応する全国工業用地払下最低基準の70%を下回らない価格で払下最低額を確定することができる。三つ目の政策として、西部地区及び海南省で投資する場合には、更に企業所得税を15%の税率に引き下げて納付することができる。

2)「目録」の拡大は、外資企業がより広い分野で優遇政策を享受できることを意味し、ハイテク、ミドルエンド・ハイエンド製造などの業界分野に至っては、その条目が大幅に増え、研究開発の実力があり、先進技術を有する外資企業には、中国で発展していくうえでより多くのチャンスが与えらえる。

3)「目録」の具体的な実施は、政府によるバックアップ支援から切り離すことはできない。商務部の情報によると、関係部門と連携し、宣伝及び解説を徹底し、関連措置を整備し、サービス保障を強化する等を通して、「目録」の遂行作業を貫徹していくことになり、これは奨励範囲内の外資企業が関連分野に進出する際の抵抗と困難が大幅に引き下げられることを意味し、ビジネス環境全体の最適化にも有利である。

おわりに:

「目録」は、中国が外商投資を安定化させるために行った努力と経済の対外開放に対するさらなる承諾であり、中国が外資を利用した質の高い発展を推進し、国内大循環を主体とし、国内と国外という二つの循環が互いに促進し合う新たな発展の局面を構築する決意をおおいに体現するものである。

(作者:里兆法律事務所董紅軍、黄宇)

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