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「外国公文書の認証を不要とする条約」が中国で発効することで、日本に関連する公文書の認証規則にどのような変化があるのか

中国ビジネスレポート 法務
裴徳宝

裴徳宝

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2024年1月16日

中国が今年3月8日に締結した「外国公文書の認証を不要とする条約」(「ハーグ条約」と略称する)は今年11月7日から中国本土で正式に発効し、中国の公文書に関する国境を越えて使用される認証規則に重大な変化が生じた。本文では、日本関連企業の視点から出発し、日本関連企業の参考に供するため、中日間での公文書の国境を越えて使用される認証規則の変化[1]を簡単に整理する。

一、「ハーグ条約」の文書適用範囲

「ハーグ条約」は、ハーグ国際私法会議によって制定され、1965年1月24日に発効した多国間国際条約[2]であり、公文書の国境を越えて使用される一連の認証プロセスを簡素化することを目的としている。同条約の第一条では、その適用対象は公文書に限られ、私文書[3]は含まれないことを明確にしており、公文書には主に以下のものが含まれる。

1.国の司法権に係る当局又は職員が発する文書(検察官、裁判所書記又は執行吏が発するものを含む。)

2.行政官公庁の文書。

3.公正証書。

4.登記済み又は登録済みの証明、確定日付証明、署名証明その他これらに類する公的な証明であって、私署証書に付するもの

なお、中国の現行法律[4]で規定される公文書の種類は、「ハーグ条約」第一条に記載される公文書の種類とは完全には一致していない。これについて、筆者の認識では、

●中国の現行法律に記載される「外国裁判所が下した判決/裁定」「外国行政機関が発行した文書」「外国公共機関が発行した商事登記、出生及び死亡証明、婚姻状況証明」は、少なくとも「ハーグ条約」第一条の第1項、第2項に定める公文書に該当する。そのため、日本関連企業は当該文書を日本で取得し且つ中国で使用する必要がある場合、「ハーグ条約」に従って簡素化された認証プロセスを適用する

●中国の現行法律と「ハーグ条約」とで一致していないその他の公文書(例えば、「ハーグ条約」第3項と第4項に定める公文書)については、「ハーグ条約」が中国で発効した後、中国が一元的な適用政策を公布することになっている。

二、国境を越えて使用される公文書の認証規則の変化

(一)日本の公文書を中国国内で使用する際の認証規則の変化

「ハーグ条約」の発効前と後において、中国で国境を越えて使用される関連公文書の認証プロセスの比較を下表に整理する。

「ハーグ条約」が発効する前

「ハーグ条約」が発効した後

1. 公文書が形成される(文書形成国で発行、署名がなされる)

2. 公文書の公証/証明がなされる(文書形成国の公証役場などで公証人の認証手続きを行う

3. 公文書の1回目の認証を行う(文書形成国の法務局にて法務局長による公証人押印証明の手続きを行う)【一部の国において必要】

4. 公文書の2回目の認証を行う(文書形成国の外務省又は授権機関にて公印確認の手続きを行う)

5. 公文書の3回目の認証を行う(中国駐文書形成国の大使館で領事認証の手続きを行う)

6. 公文書が中国国内の政府、司法などの部門で使用される

1. 公文書が形成される(文書形成国で発行、署名される)

2. 公文書の公証/証明がなされる(文書形成国の公証役場などで公証人の認証手続きを行う

3. アポスティーユ(文書形成国の外務省又はその他主管部門によって署名発行される)【左欄3~5番目のプロセスの統廃合による簡素化に相当する】

4. 公文書が中国国内の政府、司法などの部門で使用される

上表から、「ハーグ条約」が中国で発効した後、公文書は依然として公証/証明手続きを行う必要はあり、「文書形成国の複数回の認証」に代わって「アポスティーユ」手続きが必要になったということが分かる。

(二)中国公文書を日本国内で使用する際の認証規則の変化

日本関連企業に対して、中国で形成され日本で使用される公文書[5]について、アポスティーユは通常、次の方式で取り扱われる。

受付機関

● 中国外交部(領事司)

● 中国外交部の在京代行機関又は地方外事弁公室[6]

申請手続き

● 公証/証明された公文書を準備する

● 受付機関の要求に応じて、申請資料を準備し、受付機関に提出して取り扱う。通常、取り扱い方法は窓口と郵送の2種類があり、事前に具体的な受付機関に確認しておくことが好ましい

【備考:中国で形成され日本に持ち込まれる公文書について、中国駐日大使館や領事館にアポスティーユを直接申請することはできず、その公文書を国内に送り返し、上記の手順に従ってアポスティーユを申請しなければならない】

取扱期限

● 通常:外交部が文書を受理してから4営業日目に完成する

● 緊急扱い:外交部が文書を受理してから2営業日目に完成する

取扱費用

● 通常:ビジネス関係の公文書は100元/通である

● 緊急扱い:上記のうえ、50元/通の緊急料金を追加徴収する

● アポスティーユを郵送する必要がある場合(国内のみ):25元/500グラム

主な資料

● 領事認証/アポスティーユを申請するファイル登録表

● 合法的かつ有効な身分証明書

● アポスティーユを申請するための公証手続きを終えた公文書原本

● ビジネス関係の公文書のアポスティーユは、商業文書又は手形原本、組織紹介状の原本を提供しなければならない

(作者: 里兆法律事務所 裴徳宝、李繁)

[1] 「ハーグ条約」は締約国間でやり取りされる公文書に適用され、締約国で使用されるが非締約国で作成された文書、及び締約国で作成されたが非締約国で使用される公文書は、いずれも「ハーグ条約」を適用する公文書には該当しない。日本は1957年6月27日に「ハーグ条約」の締約国となり、同条約は日本に対し適用される。

[2] 中国領事服務網によると、2023年10月9日現在、当該条約の締約国は中国(香港、マカオを含む)、日本、米国など125の国や地域を含む。

[3] 上海外事サービスセンターの公式サイトを参考にすると、ある文書が公文書であるかどうかは、主に文書発行国の法律によって定められる。

[4] 主に、「民事訴訟証拠に関する最高人民法院による若干の規定」第16条、「全国裁判所渉外商事海事裁判工作座談会会議紀要」第16条を含む。

[5] 日本で形成されて中国国内で使用される公文書について、中国は当該文書の中国の駐日大使館や領事館での認証手続きを廃止し、当該文書について日本の公証/証明手続きを行い、日本のアポスティーユを取得することだけを求めている。日本で形成されて中国国内で使用される公文書に関わる日本の公証手続き及びアポスティーユの要求は、日本法律の規制を受けているため、本文は検討しない。

[6] 関連名簿、住所、連絡先の詳細は、中国外事サービスサイトを参照すること。また、以下の2点を説明しなければならない。

①外交部は全国各地で発行された公文書にアポスティーユを発行することができる。

②地方外事弁公室がアポスティーユを取り扱う範囲は、外交部が委託した地方外事弁公室所在地の渉外公証機関又は出入国検査検疫機関、貿易促進会が発行した渉外公証書又はその他の証明書に限る。

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