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新会社法における有限責任会社の減資手続き

中国ビジネスレポート 法務
董 紅軍

董 紅軍

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2024年7月30日

概要本文では、主に新会社法に定める「通常の減資手続き」、「簡易減資手続き」、「移行期間の減資手続き」を紹介する。

2023年12月29日に公布された「中華人民共和国会社法」(「新会社法」[i]))が2024年7月1日に発効する。旧会社法における「通常の減資手続き」に加え、新会社法では「簡易減資手続き」と「移行期間の減資手続き」が新たに追加された。本文では、新会社法における3通りの減資手続き及び係る注意点について紹介する。

一、通常の減資手続き

「通常の減資手続き」は、全体を次の3つのステップに分けることができる。1、董事会が減資方案を作成し、株主会が会社の減資決議を採決し、貸借対照表と財産リストを作成する。2、債権者に通知し、公告を行い、債権者は債務の返済又は担保の提供を要求する権利を有する。3、会社定款を改訂し、係る政府手続きを行う。

減資の決議規則については、会社法では、「3分の2の多数決」が求められる。すなわち、会社の減資を議決する際には、有限責任会社は3分の2以上の議決権を有する株主によって採決されなければならず、株式会社は株主会会議に出席する3分の2以上の議決権を有する株主によって採決されなければならない。

減資は、株主の「同比率減資」を原則とする。異なる比率で減資を行う場合は、株主全員が別途約定するか、又は定款にて別途定める必要がある。

債権者に通知する際には、「未確定債権者」の保護に注意しなければならない。未確定債権とは、期限未到来の債権、条件又は期限付きの債権、未解決訴訟又は未解決仲裁での債権などを指す。裁判所は、「未確定債権者」を「債権者」として認定する傾向にある。これにより生じる最初の問題は、減資は「未確定債権者」に通知する必要があるのかどうか、というものである。(2023)滬02民終5930号において、上海第二中級法院は、「会社の減資決議が形成された際に債権者との債権債務関係が確認されたかどうかは、通知義務を履行する際の前提とはならない。会社が減資する前に債権者との債権債務関係のベースがすでに存在し、債権者の未確定債権が現実債権に切り替わる可能性がある限り、会社が減資する際には当該債権者に通知しなければならない」との見方をしている。第二の問題は、「未確定債権者」は未確定債権に基づき会社登記機関に減資手続き中止を要求する権利があるのかである。筆者が把握している状況によると、会社登記機関はこれに対してまだ明確な観点を形成していないが、債権者を保護するという視点から、通常は減資手続きの中止に同意し、発効した判決に基づき再開するかどうかを決定することになる。

二、簡易減資手続き

「通常の減資手続き」に比べ、簡易減資手続きにおける簡易ポイントは2つあり、(1)減資決議が作成された後、会社は債権者に通知する必要がなく、新聞紙や国家企業信用情報公示システム上で公告するだけでよいこと、(2)債権者は、会社に対し債務の早期返済、又は相応の担保の提供を要求する権利がないこと、である。

簡易減資手続きが簡易的になり得るのは、その本質が「形式的減資」であるからである。形式的減資と実質的減資の本質的な違いは、通常、会社から株主に資金の移転、又は株主の出資義務の免除があるかどうかである。簡易減資により債権者の利益が損なわれないよう、新会社法は簡易減資に対し、次のように2つの方面から制限を設けている。(1)会社が任意積立金、法定積立金、資本準備金を使用した後においても損失を補うことができない場合、登録資本金を減少させることにより損失を補うことができる。(2)登録資本金を減少させることにより損失を補う場合、株主に分配が行われてはならず、株主の出資又は資本金の払込義務を免除してもならない。

簡易減資の規則は最初、2019年最高人民法院の1つの判例に現れた。本判例において、最高人民法院は、「会社が形式的に減資する際に、減少するのは登録資本金だけであり、『帳簿上の取引』に属し、純資産の移転はない。このような状況は企業が損失を出した場合によく発生し、会社が株式の一部を消却し、又は1株当たりの金額を減少させることで損失を補うが、会社の純資産の減少をもたらすわけではないことから、会社の返済能力を低下させることはない。つまり、会社が形式的に減資する行為は会社の財産権を侵害することはなく、会社の債権者の権益に実質的な影響を与えておらず、この場合、会社は債権者に対し他の民事責任を別途負うべきではない」との見方をしている。

三、移行期間の減資手続き

新会社法の施行前にすでに登記設立されていた会社、出資期間、出資額が明らかに非正常な会社に対して、新会社法第266条では会社登記機関が法に基づき遅滞なく調整するよう求めることができ、具体的な実施弁法は国務院が定めるとしている。

2024年2月6日に公布された「『中華人民共和国会社法』における登録資本金登記管理制度の実施に関する国務院による規定(意見募集案)」[ii](「意見募集案」)によると、新会社法施行前に設立された有限責任会社は、2027年7月1日からの残りの出資期間が5年未満の場合、出資期間を調整する必要はない。残りの出資期間が5年を超える場合は、2024年7月1日から2027年6月30日までの間(3年間の移行期間)に残りの出資期間を5年以内へと調整しなければならない。本意見募集案では移行期間における2通りの減資ケースを同時に定めており、1つは自主申請であり、もう1つは受動調整である。

自主申請とは、会社法施行前に設立された会社が移行期間内に登録資本金の減少を申請するが、払込資本金の減少は行わない場合、会社は国家企業信用情報公示システムを通じて一般社会向けに20日間公示し、公示期間内に債権者から異議が出されなければ、会社は申請書、承諾書を持って登録資本金の変更登記を行うことをいう。減資の自主申請を行う会社は以下の条件を満たす必要がある。(一)未決済の債務が存在せず、又は債務が明らかに会社の払込資本金を下回っていること。(二)全株主が減資前の会社債務に対し出資引受額の範囲内で連帯責任を負うことを承諾していること。(三)全董事が会社の債務履行能力と持続的経営能力が損なわれないことを承諾していること。

受動調整とは、会社法施行前に設立され、出資期間が30年を超え、又は出資額が10億元を超える会社に対して、会社登記機関は株主の出資能力、主要事業、資産規模などの状況を踏まえて、登録資本金の真実性について研究し判断し、会社登記機関が会社の出資額に明らかな異常があると認定した場合、法に基づき6か月以内での出資額調整を求めることができることを指す。

「通常の減資手続き」、「簡易減資手続き」、「移行期間の減資手続き」はそれぞれ手続きが異なり、その適用条件も異なる。減資のニーズのある企業は、総合的に比較、熟考し、とりわけ移行期間の政策を利用することにより、便利に且つ迅速に減資するという目的を達成させることができる。

(作者:里兆法律事務所 董紅軍、魏奕然 2024年4月7日)

[i] https://flk.npc.gov.cn/detail2.html…

[ii] https://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/art/2024/art_f9f3f2d43…

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