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商業賄賂規制の新動向不正競争防止法改正に焦点を当てる

中国ビジネスレポート 法務
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丁志龍

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2026年1月6日

競争が日増しに激さを増す現在の市場環境の中で、商業賄賂は、市場秩序を著しく乱し、公平な競争原則を損なう違法行為として、立法、法執行、司法面で終始関心が払われている問題である。企業の立場から見ると、「企業の名誉への影響」などへの懸念から、これまでは類似の問題を発見した際に、「損失の挽回」や「人事処分」に一層注目することの方が多く、関係者の法的責任等をさらに追及しようとすることは少なかった。

国による商業賄賂分野での立法が立て続けに引き締められ、法執行の度合いが更に強化されるに伴い、企業のこの方面での「コンプライアンス意識」もさらに高まり、「自主的に法的手段に訴える」多くの事例が見られるようになった[1]。また、商業賄賂の手段はますます隠蔽され、複雑化し、関与する金額もますます大きくなり、企業にもたらす各方面の損失も大きくなり[2]、これらはいずれも企業のさらなるコンプライアンス・ガバナンス要求の向上に警鐘を鳴らしている。

2025年10月15日に施行される新「不正競争防止法」は、収賄の主体、処罰の仕組み、金額の上限など実務面で注目されるポイントに新たに答えるものであり、企業はこれらをより良く理解しておく必要がある。そのため、商業賄賂に関する立法及び法執行の経緯を振り返ると同時に、企業が重点的に注目すべき内容を参考まで以下まとめて分析する。

一、「商業賄賂の対象者」についての論争に答え、「権力と金銭の取引」の本質に改めて言明した

 1993年に最初に制定された「不正競争防止法」(以下「93年競争法」という)及び1996年に発布された「商業賄賂行為禁止に関する工商局による暫定規定」(以下「96年暫定規定」という)では、商業賄賂の対象者は取引相手(「相手先組織」)を含み、取引相手の従業員(「個人」)も含まれていた。しかし、2017年に改正された「不正競争防止法」(以下「2017年競争法」という)以降、「取引相手」は商業賄賂の対象者から削除され、「取引相手の職員」のみが残された。その間、2022年の「不正競争防止法(改正草案意見募集稿)」では、「取引相手」を商業賄賂の対象者の範囲に再び組み入れたが、2025年に最終的に改正された「不正競争防止法」(以下「2025年競争法」という)では、「取引相手」は商業賄賂の対象者から削除された。

商業賄賂の対象者に「取引相手」が含まれるべきかどうかは、主に商業賄賂の「本質」の認定に関わってくるものであり、当初存在していたのは明らかに「利益誘引」[3]という観点であり、当該観点の指針の下では、たとえ取引双方の「企業対企業」の手配であっても、「不正競争防止法」における商業賄賂を構成し得るものであった。しかし、「利益誘引」の観点を指針とする法執行の実務において、多くの取引双方間での利益分配、コスト分担に関する正常な手配が商業賄賂と認定されてしまい処罰されることも多く、商業賄賂に関する法執行の範囲が広くなりすぎてしまい、正常な市場競争に影響を与えた。

「2017年競争法」では、「権力と金銭の取引」という観点[4]を採用し始めたが、当該観点によると、商業賄賂行為には、贈賄側、収賄側、利益を損なう側という「三者関係」が一般的に存在しており、即ち、収賄側は利益を損なう側に対して一定の「忠実な義務」を負わなければならないとされた。このような忠実な義務は、雇用により生じる労働関係、又は契約により生じる委託関係に由来するものである可能性も、法律法規が特定の職権又は立場を持つ人に対し定めた特定の義務などに由来するものである可能性もある。このような「忠実な義務」が存在するからこそ、収賄者が義務に背いて利益を得る行為は否定的な評価がなされる必要がある。「権力と金銭の取引」の観点によると、取引双方には「忠実な義務に背く」といった状況は存在しておらず、さらに「三者関係」も存在しないため、「権力と金銭の取引」が存在するはずはないと考えられる。「権力と金銭の取引」の観点では、収賄者の範囲を限定し、「商業賄賂の広範化」を禁止し、市場行為を慎重に監視する姿勢を体現しており、新たに出現した取引モデルと市場革新を保護するうえで有益である。しかし、一部の特別な業界(特に医療機器業界)又は取引状況に対しては、実務において、法執行部門は依然として「ルック・スルーの原則」に基づき、取引相手[5]を商業賄賂の対象者として処罰する。しかし、「2025年競争法」が依然として取引相手を商業賄賂の対象者から削除することを堅持しており、医療機器分野[6]でも個別の立法が始まっていることを考慮すると、「ルック・スルーの原則」の適用については、法執行部門もますます慎重になっていくものと思われる。

二、収賄の処罰責任を明確にし、贈収賄ともに処罰するとした

商業賄賂は対向行為として、贈収賄に対する双方規制の処罰メカニズムを確立することが一般的である。しかし、「93年競争法」では、「贈賄」に関する処罰は定められているが、「収賄」に関する処罰については明確に定められていない。「96年暫定規定」では、「関係組織又は個人が商品を購入し若しくは販売する際に賄賂を受け取った場合、工商行政管理機関が前項の規定に従って処罰する」という内容が定められているものの、当該規定の次元がやや低く、また工商行政管理機関(現在は「市場監督機関」へと改名された)としても、収賄者(多くは個人)に対する処罰の実行が面倒であり、収賄者を証人としなければならない場合が多い等といった実務的な要素を考慮するものと思われ、公開された処罰情報から見る限りでは、収賄側に対する処罰事例は贈賄側よりはるかに少ない。

「2017年競争法」では、再び贈賄側の処罰責任だけが定められており、収賄側の責任は定められていない。「96年暫定規定」は依然として有効だが、同様に上記の理由から、実務における収賄に対する処罰事例は相対的に少ない。また、例えば、2020年に改正された「上海市不正競争防止条例」においても同様に「収賄禁止」という主旨だけが強調されているが、収賄行為に対する処罰条項は設けられておらず、これも「贈賄を重視、収賄を軽視」という法執行の傾向をさらに反映している。

上記の立法の空白により、収賄行為の多くが行政責任を追及されないと同時に、収賄行為の多くは刑事訴追基準に達しないため、刑事責任も追及されることはない。そうなると、取引において強い地位を有する組織又は個人が不当な利益を要求することを実質的に放任することになり、また賄賂行為を全面的に管理する法的効果と社会的効果などを実現させることも難しくなるのは明らかである。今回の「2025年競争法」の発布により、収賄行為に対する処罰規定が追加され、従来の立法の空白を補い、今後、収賄側に対する処罰もさらに強化されていくはずであり、注目する必要がある。

三、処罰の上限を引き上げ、階段的罰則を導入した

処罰基準については、「2025年競争法」では以下の2つの構造的な調整がなされた。

● 処罰基準の最高額が、「三百万元」から「五百万元」へと調整された。

● 元々上限を三百万元として一律に設定されていた罰金が、情状の軽重に応じてランクを分け、「十万から百万」と「百万から五百万」という階段的罰則を設定した。

過去の商業賄賂行政処罰事例を検索すると、実務において罰金額は十万元から三十万元の間に集中しており、一部事例の罰金額は五十万元を超え、少数ではあるが罰金額が百万元以上に達した事例もある(二百万元を超えた処罰も一部ある)。

「2025年競争法」の上記の調整内容を踏まえると、これは立法機関が商業賄賂行為を高度に重視し、厳格な規制を行うという決意を示しており、情状の深刻な案件に対しては、処罰金額は「三百万元」を突破することも可能となり、違法行為に関わった当事者の経済面のリスクコストを引き上げるが、同時に、これは法執行機関の弾力的な裁量の余地を増やし、法執行機関が賄賂行為の具体的な情状、影響範囲及び主観的悪意の度合い[7]などに基づき、より的確な処罰を行ううえで役立ち、一部の案件の処罰金額を「百万元」以内に抑えるうえでも役立ち、現在国家が提唱している行政処罰の「罪刑均衡」、「裁量的情状主義」の方針にも適合している。

四、両罰制度を確立し、事業者の個人責任を明確にした

「2025年競争法」は、「単罰制」(事業者のみ処罰)を「両罰制」(事業者の法定代表者、主要責任者、直接責任者を同時に処罰)へと改め、且つ責任のある個人に対しては最高100万元の罰金を科すことができると定めた。これによって、企業の高級管理職者などの個人に対しより厳格なコンプライアンス要求が打ち出されたのは明らかである。

また、本改正内容においては、以下の2つの問題も一層注目する価値があると考えられる。

● 法定代表者は必ず個人責任を負うのかどうか。

● 具体的にどのような場合に、企業の高級管理職者などが個人責任を負うと認定されやすいか。

前者については、まず、法定代表者が必ずしも個人責任を負うわけではないと考えられる。行政処罰は、刑法上の「罪責任と刑罰均衡」の原則に準じていなければならず、法人の行為の法的結果がいずれも区別されることなくすべて法定代表者が負うと考えるべきではない。とりわけ多くの階層に分けられる大型企業において、法定代表者は会社の一部の具体的な日常経営行為について、職責の範囲、主観的な認識、実際の業務のいずれを問わず、すべて完全に把握しているわけではなく、且つ参与していない可能性もある。会社の法定代表者であるからというそれだけの理由で、会社のすべての違法行為に対し個人責任を負うよう求めるのは、「罪責任と刑罰均衡」の原則に反するおそれがあり、法定代表者に理不尽なリスクを負わせることにもなる。

後者については、「全国法院金融犯罪事件審理作業座談会概要」における係る定義を参考にすることができ、具体的には、以下の通りである。

● 直接責任を負う主管者は、組織が実施する犯罪の中で決定、承認、意思供与、黙認、指揮などの役割を果たす者であり、一般的には組織の主管責任者であり、法定代表者を含む……

● 組織犯罪において直接責任を負う主管者及びその他の直接責任者は、組織犯罪における地位、役割及び犯罪の情状に応じて、それぞれ相応の刑罰を科すべきである……

即ち、高級管理職者などがどの程度「個人責任を負う」と認定されるべきかについては、高級管理職者などの組織の違法行為に対する意思決定、審査許可及び実行過程における主観的な認識の度合い、及び実際の参加の度合いなどに基づき総合的に判定していかなければならない。当然ながら、刑事犯罪の認定と行政違法の認定には一定の差異がある可能性を考慮すると、本条項の具体的な適用基準については、今後の法執行機関の態度と動向等にさらに注意を払う必要がある。

五、ロング・アーム管轄メカニズムを確立し、越境監督管理を強化した

 「2025年競争法」は、第40条を新たに追加しており、具体的な内容は以下の通りである。

■ 中華人民共和国国外で実施された本法に定められた不正競争行為が、国内市場の競争秩序を乱し、又は国内事業者の合法的権益を損なった場合、本法及び関連法律の規定に基づいて取扱う

立法者が本内容を導入する目的は、国外の不正競争行為に対する法律の管轄の空白を補うことであり、中国国内の市場秩序と事業者、消費者の合法的権益を保護することに有利であり、グローバル化の背景の下でますます複雑になっている越境不正競争行為によりよく対応することができると考えている。本内容には当然、「商業賄賂」の法執行状況も含まれており、「中国式ロングアーム管轄原則」と見なすことができる。

実際に、2022年に最高人民法院が公布した「中華人民共和国不正競争防止法」の適用に関するいくつかの問題についての解釈の第27条では、不正競争行為のロングアーム管轄について初めて規定が設けられ、具体的な内容は以下の通りである。

■ 訴えられた不正競争行為が中華人民共和国の領域外で発生したが、侵害結果が中華人民共和国の領域内で発生し、当事者が当該侵害結果の発生地である人民法院の管轄を主張した場合、人民法院は支持すべきである。

「2025年競争法」は、より高い法律の次元から不正競争防止法の国外適用について明確にしており、中国の監督管理機構が国外の主体が実施した中国国内市場の競争秩序を乱す行為(当然ながら「商業賄賂」行為を含む)を調査し処罰するうえでの明確な根拠を提供したことになる。

上記の改正内容は、多国籍企業のグローバルコンプライアンス体制に対し、より高い要求を行っていると言え、多国籍企業は国外のインセンティブ政策などが国内業務にもたらす可能性のある法的リスクを見直し、本部と中国子会社との間での価格、販売、宣伝の手配を設計する際には、割引、補助金、リベート、奨励などの名目で国外で取り交わすが実際には中国市場に排他的競争又は実質的な賄賂の効果をもたらす可能性のある手配を行うことは避けなければならない。また、国外の従業員が中国の不正競争防止規則を十分に理解するよう確保し、中国業務に関わる国外チームに対し「不正競争防止法」の基礎研修を行っておくとよい。

以上から、商業賄賂に関する法律規制は、継続的な発展の過程にあり、処罰メカニズムの最適化とグレードアップにおいても、責任チェーンの拡張においても、いずれも企業のコンプライアンス体制に対しより高い要求を行っている。企業は内部プロセスを速やかに整理し、不正禁止管理メカニズムを整備し、最新の法執行の動きを適時に注目し、キーマンに対する法教育と行為制約を強化し、新法の枠組みの下でのより堅実なコンプライアンス運営を実現していくのがよい。

(作者:里兆法律事務所 丁志龍、譚騰)

 

[1] 例えば、バイトダンス、美団、テンセントなどの有名企業は内部不正防止を通じて、商業賄賂の疑いがある複数の従業員を司法機関に移送した。

[2] 例えば、世界的に有名な広告会社WPPグループ傘下の群邑中国の高級管理職者3人がサプライヤーから8億2,000万元の賄賂を受け取ったことで立件された。アスリコン中国地域高級管理職者が商業賄賂や医療保険詐欺の疑いで調査され、国内外の世論が揺れ、会社の株価が大幅に変動した。

[3] 市場監督管理総局は、『旅行会社又はガイドがデパートから支払う「人件費」「駐車料」などの費用の定性の取扱問題に関する国家工商行政管理局による回答』(工商公字(1999)第170号)において、「商業賄賂」の実質について説明し、商業賄賂は以下の通りであると認定している。「その実質は事業者が不当な利益で取引を誘引することを禁止することである。事業者は当該利益誘引を取引先の組織又は個人に与え、或いは取引行為と密接に関係する他の人に与え、又は与え・受け取った当該利益が記帳するかしないかにかかわらず、当該利益誘引行為が取引を勝ち取ることを目的とし、且つ他の競争者が品質、価格、サービスなどの面での公平な競争を実施することに影響を与えている限り、「不正競争防止法」第8条で禁止されている商業賄賂を構成する。」

[4] 2016年の「人民政治協商会議第十二期全国委員会第3回会議における中国伝統産業分野において商業賄賂個別見直しを実施することに関する提案への工商総局による回答」において、市場監督管理総局は「商業賄賂」の本質をさらに説明し、「権力と金銭の取引」の観点を打ち出しており、即ち、他人を買収することによって、他人に対する忠実な義務に背き、他人の利益を売って、自分のために取引機会又は競争の優位性を図る目的を達成することとした。

[5] この場合、「取引相手から関連事務を委託された組織」又は「職権又は影響力を利用して取引に影響を与える組織」とみなすことになる。

[6] 「中華人民共和国医療機器管理法(草案意見募集稿)」第百三十四条:医療機器登録者、届出人、製造企業、経営企業、国内責任者及び医療機構が医療機器の購入・販売過程においてリベート又はその他の不当な利益を与えること、受け取ることを禁止する。

[7] 一般的な考慮要素は、贈賄/収賄の金額、継続時間、回数、社会的なマイナス影響(例えば、メディア又は関連部門の注目を引くかどうかなど)、主観的な悪性(例えば、収賄側が積極的に賄賂を要求する場合、通常は贈賄側の主観的な悪性が小さいと認定される)がある。

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