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ログイン2023年11月13日
「信用失墜行為是正後の信用情報回復管理弁法(試行)」(国家発展改革委員会第58号令、以下「信用回復弁法」という)が2023年5月1日から発効した。本弁法は、信用情報回復権を新たに画定し、中国における信用情報管理制度の整備、信用情報管理水準の引き上げ、社会信用システム構築の推進において重要な意義がある。
■ 「信用情報回復権」とはなにか
「信用回復弁法」第2条の規定によれば、信用を担う当事者となる企業(以下「信用主体」という)は信用情報を回復する権利を法に依拠して有しており、法律、法規及び中国共産党中央委員会、国務院政策文書の中で回復してはならないと明確に定められている場合を除き、所定の条件を満たしている信用主体はいずれも規定に従い信用情報の回復を申請することができるとされている。この規定は、信用主体に対し、法に依拠して信用情報回復を申請する法定権利を与え、信用失墜主体に対しては誠実なイメージを形成し直す機会を提供している。これは、国の信用懲戒方法に対する「寛猛相済(かんもうあいすくう)」という監督管理のガイドラインを具現化し、信用主体の適法な権益を保障するものでもある。
また、信用情報の回復とは、具体的には、信用主体が、自身の信用状況を積極的に改善するために、信用失墜行為を是正して義務を履行した後、信用失墜行為の認定機関(以下「認定機関」という)又は信用失墜情報を集約する信用プラットフォームウェブサイトの運営機関(以下「集約機関」という)に申請し、当該認定機関又は集約機関が関係規定に従い、信用失墜情報の公示リストから削除し又は公示を終了させることをいう。
■ 「信用回復弁法」の適用範囲
「信用回復弁法」の適用範囲は、「公示されている信用失墜情報」の回復に対応している。
「公示」とは、集約機関が係る信用情報を見直して整理し、信用主体の名の下に記載した後、法律に基づき公開可能な情報を信用ウェブサイトで集中的に一括して公示することをいう。ただし、簡易手続きにおいて法人及び非法人組織に対して下される行政処罰情報と普通手続きにおいて法人及び非法人組織に対して下される警告、譴責の行政処罰情報は、もともと公示の対象外である。このほか、自然人に対して下される行政処罰情報も原則として公示されない。すなわち、このような情報はそれ自体、今回の信用回復の対象ではない。
「信用失墜情報」とは、全国公共信用情報基礎目録と地方公共信用情報補充目録に記載された信用主体の信用状況に対し悪影響をもたらす情報であり、これには深刻な信用失墜主体リスト情報、行政処罰情報及びその他の信用失墜情報が含まれる。
特に注意すべきこととして、筆者の認識では、ここでの「信用失墜情報」の回復には、中国人民銀行信用調査報告における信用調査上の不良情報は含まれていない。「信用失墜情報」と「信用調査上の不良情報」の主な違いについて、以下説明する。
1、主管部門が異なる。「信用回復弁法」は国家発展改革委員会によって公布されるものであり、「信用調査上の不良情報」は人民銀行が管理しているものである。
2、規制対象が異なる。「信用回復弁法」によって規制される「社会信用」[1]の範囲は、「信用調査上の不良情報」が対象としている「個人信用調査情報」よりも広範である。
3、性質が異なる。中国人民銀行信用調査報告自体は公開公示されず、かつ不良情報の保存期間が5年であることが明確であり、期間満了してからでなければ削除することができず、つまり、いわゆる「回復可能性」は存在しない。
■ 信用情報回復活動を展開していくうえでの主要なプラットフォーム
1、全国信用情報共有プラットフォーム
2、「信用中国」ウェブサイト
3、地方信用情報共有プラットフォームと信用ウェブサイト
(以下「信用プラットフォームウェブサイト」という)
4、業界主管(監督管理)部門が設置する信用情報システム
■ 主な信用情報回復方法の具体的な手続き
「信用回復弁法」は、信用情報回復の主要な方法を「深刻な信用失墜主体リストからの削除」、「行政処罰情報の公示の終了」、「その他信用失墜情報の回復」の3通りに分け、それぞれの回復手続きについて以下の通り規定している。
主要な信用情報回復方法 |
具体的な手続き |
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深刻な信用失墜主体リストからの削除 |
深刻な信用失墜主体リストの範囲 |
法律、法規又は中国共産党中央委員会、国務院政策文書に依拠して設立された深刻な信用失墜主体リスト。 |
受理と審査機関 |
信用主体による深刻な信用失墜主体リストからの削除申請を受理し、審査する機関は、いずれも(信用失墜行為の)認定機関である。 |
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回復期間 |
1.「信用中国」ウェブサイトは、認定機関が共有する削除リストを受け取った日から3稼働日以内に、深刻な信用失墜主体リスト情報の公示を終了させる。 2.回復期間は認定機関の審査を経て決定されなければならず、回復申請を提出した日からの3稼働日ではない。 |
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行政処罰情報の公示の終了 |
信用プラットフォームウェブサイトで公示する行政処罰情報の範囲 |
普通手続きにおいて法人及び非法人組織に対して下される行政処罰情報。 |
公示期間 |
1. 最短の公示期間は3か月であり、最長の公示期間は3年である。そのうち、食品、薬品、特種設備、安全生産、消防分野の行政処罰情報の最短の公示期間は1年である。 2. 同一の行政処罰決定が複数の処罰に係る場合、その公示期間は、期間が最も長い処罰を基準とする。 3. 行政処罰情報の公示期間の開始日は、行政処罰が下された日を基準とする。 |
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回復条件 |
1. 行政処罰決定書に規定された義務を完全に履行し、違法行為を是正すること。 2. 最短での公示期間が満了すること。最短の公示期間が満了してから初めて規定に従い公示の早期終了を申請することができる。最長の公示期間が満了すると、係る情報については自動的に公示が終了となる。 3. 信用承諾を公に行うこと。 承諾の内容には、提出する材料が真実有効であり、かつ承諾に違反した場合の係る責任を負うことを明確に同意することが含まれていなければならない。 4. 法律、法規で、係る法律法規違反行為について期限付きの懲戒措置を規定している場合、係る期日が満了するまでは、行政処罰情報の公示を早期終了させてはならない。 |
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受理および審査機関 |
「信用中国」ウェブサイトを通じて国家公共信用情報センターに申請を提出し、国家公共信用情報センターが受理し、かつ審査により決定する。 |
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回復期間 |
1. 国家公共信用情報センターは申請資料を受け取った後、形式審査を行い、資料が揃っており、条件を満たしている場合、受理する。資料が揃っておらず、又は条件を満たしていない場合は、3稼働日以内に信用主体に一括して告知し補正させ、補正後に条件を満たしている場合は、受理する。 2. 国家公共信用情報センターは受理日から7稼働日以内に公示の早期終了ができるかどうかを確定しなければならない。公示の早期終了を認めない場合は、理由を説明しなければならない。 |
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その他信用失墜情報の回復 |
包括条項 |
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備考 |
国家公共信用情報センターは、如何なる形式をもってしても、回復を申請する信用主体から費用を徴収してはならない。 |
■ 信用情報回復における協同連携
「信用回復弁法」は、信用情報回復における協同連携メカニズムを定めており、具体的には次のものが含まれる。
1.プロセスのオンラインによる運用
国家公共信用情報センターは、信用情報回復申請の受理、審査確認、情報処理などのプロセスのオンラインによる運用を保障しなければならない。
2. 信用情報回復情報共有メカニズム及び更新メカニズムの構築
(1)共有メカニズム
信用プラットフォームウェブサイトは、認定機関、国家企業信用情報公示システム、関連業界主管(監督管理)部門信用情報システムとの信用情報回復情報共有メカニズムを構築する。地方信用プラットフォームウェブサイト運営機関は、国家公共信用情報センターが、業務の協同と情報の同期を徹底させるうえで協力しなければならない。
信用プラットフォームウェブサイトは、信用情報の回復が決定された日から3稼働日以内に回復情報を認定機関及び関連システムと共有しなければならない。
(2)更新メカニズム
信用プラットフォームウェブサイトは、信用情報回復情報を受け取った日から3稼働日以内に公示情報を更新しなければならない。
「信用中国」ウェブサイトから信用失墜情報を入手した第三者信用サービス機構は、情報更新メカニズムを構築し、「信用中国」ウェブサイトとの整合性を保たなければならない。情報が一致していない場合は、「信用中国」ウェブサイトの情報を基準とする。国家公共信用情報センターは第三者信用サービス機構の情報更新状況に対し監督検査を行い、回復情報を遅滞なく更新しない機構に対しては、情報の共有を一時取り止め、又は取り消すことができる。
■ 「信用回復弁法」による懲戒措置
「信用回復弁法」は、信用主体が信用情報回復を申請する際に、虚偽の材料を提供したり、信用承諾が著しく事実と異なっていたり、承諾をわざと履行しないと行政機関に認定されたりする行為があった場合、以下の法的責任を負わなければならないと定めている。
(1)申請を受理した機関が信用記録を記入し、全国信用情報共有プラットフォームに収載し、認定機関と遅滞なく共有する。
(2)関連信用記録は「信用中国」ウェブサイトで3年間公示し、かつ公示は早期終了させてはならず、3年以内に信用プラットフォームウェブサイトで信用情報回復を申請してはならない。
(3)犯罪を構成する場合、法に依拠して刑事責任を追及する。
終わりに
全体としてみると、「信用回復弁法」が公布、施行されたことで、社会信用システム建設における「信用失墜回復」において非常に重要な救済ルートと手段が提供されたことになる。信用情報回復の動的調整がなされたことにより、信用主体の実際の信用状況が形取られ、ビジネス環境の最適化にも有利であり、中国の社会信用システム建設がさらに整備されたことを示している。
(作者:里兆法律事務所 丁志龍、黄蓉蓉)
[1] 「全国公共信用情報基礎目録(2022年版)」によると、収載されている公共信用情報は12 分類あり、これには、登記・登録基本情報、司法裁判及び執行情報、行政管理情報、職名及び職業資格情報、経営(活動)異常名簿(状態)情報、深刻な信用喪失主体リスト情報、係る契約履行情報、信用承諾及びその履行状況情報、信用評価結果情報、法律法規遵守状況情報、誠実信用に関する名誉情報と事業者が自ら提供する信用情報が含まれる。
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