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ログイン2012年11月13日
中国国内企業と国外機構の間で経済交流が益々密接になる一方、昨今中国ではインフレなど経済の過熱現象を抑制するための金融引締めを行っており、中国国内企業、特に外商投資企業が国外機構に対し「負債」を抱える状況はよく見られるようになった。国外機構(以下、「国外債権者」という)が「負債」を提供する前提として、国外債権者の債権の安全を確保するために、債務者或いは国内の第三者企業に対し「負債」のため国外債権者へ担保の提供を求めることが往々にして見られる。以下、筆者は外商投資企業(以下、「債務者」という)が自己の債務のため国外債権者へ抵当権設定担保を提供することを例に、中国の関連法律規定に基づき、実務経験と併せて、国外債権者の国内における抵当権の設定および実行に伴う関連実務取扱問題について簡潔にまとめ分析する。
国外債権者の国内における抵当権の設定および実行に関する基本法律問題
国外債権者は、債務者が自己の債務のため提供する抵当権設定担保を受ける前に、以下の基本法律問題についてある程度の認識と理解が必要である。
●債務者が自己の債務のため国外債権者へ提供する担保は、「国内機構の対外担保管理問題に関する国家外貨管理局の通知」の対外担保に関する資格条件の制限を受けないため、指標管理への組入れ或いは外貨管理部門への個別認可申請を必要とせず、債務者所在地の外貨管理部門で、対外担保に関する定期的な届出或いは個別登記を行うのみでよい。
●債務者が自己の債務のため国外債権者へ提供する担保は、中国による外商投資企業の外債借入を制約する「投注差」(投資総額と登録資本金の差額)管理を受けない。ただし、国外債権者が債務者と主債権を設定する際には、債務者に十分な「投注差」があるかに注意する必要がある。
●「中華人民共和国渉外民事法律関係適用法」などの中国関連法律の規定によれば、家屋など不動産に対する抵当権の設定および実行には、中国法のみが適用可能である。機械設備など動産に対する抵当権の設定および実行には、当事者が定めた法律を適用することが可能である。当事者に定めのない場合、抵当権の設定、実行時の動産所在地の法律が適用される。
国外債権者の国内における抵当権の設定および実行に関する基本的な流れ[1]
抵当権の設定および実行は、国外債権者の債権の安全に対し決定的な意義を持つが、操作性の極めて高い事項でもある。「担保法」、「物権法」、「『中華人民共和国担保法』の適用に伴う若干問題に関する最高人民法院の解釈」、「国内機構対外担保管理弁法」および「国内機構の対外担保管理問題に関する国家外貨管理局の通知」などの法律規定により、国外債権者の国内における抵当権の設定および実行に対する法的根拠を与えられているにもかかわらず、筆者の知るところ、少なくとも上海においては、現在までに各関連政府主管部門が国外債権者の国内における抵当権の設定手続を行った例は少なく、一部の政府主管部門ではその経験すらない。このため、筆者は前述の法律規定に基づき、実務取扱経験並びに筆者が具体業務処理の過程で関連政府主管部門へ問合せた状況に照らし、国外債権者の上海における抵当権の設定および実行に関する基本的な流れを以下のとおりまとめた。
A.国外債権者の国内における抵当権の設定に関する基本的な流れ
国外債権者が国内で抵当権を設定する場合、大まかには以下の4つの段階がある。
B. 国外債権者の国内における抵当権の実行に関する基本的な流れ
中国法の規定によれば、抵当権設定契約において「債務者が満期債務を履行しない場合、抵当物は国外債権者の所有に帰する」或いはこれに類する約定を設けてはならない。よって、債務者が満期債務を履行しない場合[5]、国外債権者は以下の方法で抵当権を実行する必要がある。
– 協議は抵当権実行の重要な方法であり、当事者が協議を通じて抵当物を処理することができれば、以下の第二段階および第三段階を要しない。 – 協議で合意を得た場合、協議書を締結しなければならず、第四段階および第五段階の手続に用いる。 |
典型的な抵当権設定担保に関する特記事項
現在、家屋および機械設備への抵当権設定は対外的抵当権設定担保の典型である。筆者は対比方式により、これらの二つの抵当権設定担保に関する特記事項について説明する。
現在、国外債権者が国内債務者の抵当権設定担保を受け、国内債務者へ「負債」を提供する状況はまだよく見られるものではないが、前述の分析のとおり、当該方案は十分な実行可能性を備えており、国外債権者の債権の安全を有効に守ることを可能にし、債務者が国外より融資を受ける難度を低減することを可能にしている。現在、国内における信用貸付引締めの状況では、企業資金調達の多様化を図るため、国内債務者は当該方案を利用して海外からの融資を受けることを積極的に検討することが考えられる。
注意すべきは、関連する政府部門が多くて、また実務取扱案件が少ないため、地域、政府部門、担当者によっては理解および処理上の要求が異なることが予想され、事前に問合せ、確認を行うことを提案する。
[1]本文でまとめた基本的な流れは、投資性会社が抵当権設定担保者となる状況においても同じく適用される。
[2]第一段階と第二段階については、元々絶対的な手順の前後はなく、一般的に主債権及び抵当権の設定は同時に検討されるものであり、主債権契約において担保の提供を求める内容が明記されているものと思われる(明記することにより、後続の抵当権設定登記及び対外担保登記の難度をある程度低減させることができる)。一度、外債登記手続を始めれば、後で変更を望み、外債変更登記を行うには困難を伴うため、順序としては、第二段階の処理内容は第一段階の後に行うことを提案する。
[3]外貨管理部門の評価実施を求める法律根拠は「国内機構の対外担保管理弁法実施細則」第26条「対外的に抵当権を設定する抵当物は国内の価格評価機関の時価評価を取得しなければならない。」である。
[4]抵当権設定登記及び対外担保登記の順序については、地域によって異なる場合があり、抵当権設定登記機関及び外貨管理部門間の調整によって確定する。本文では筆者が処理した実例における順序に基づいている。抵当権設定登記が対外担保登記の前提条件となる状況においては、外貨管理部門と協議の上、改めて対外担保登記の期限を確定する必要がある。
[5]「物権法」の関連規定によれば、「満期債務の不履行」とは「債務者が満期債務を履行できない」場合を指すのみに限らない。実際には、当事者は抵当権設定契約においてその他の「抵当権を実行する条件」を自主的に設定することが可能であり、例えば、「国外債権者が債務者に主債権を脅かす各種状況が生じたと判断した場合」を「抵当権を実行する条件」とすることも可能である。
[6]抵当物が家屋である場合、時価換算して国外債権者へ譲渡することは国外機構の国内家屋の譲り受けに関する問題にかかわる。現在、中国は国外機構の国内家屋の譲り受けを厳しく制限しており、実務上の取扱難度は高い。
[7]「物権法」第195条第2項によれば、「抵当権者は抵当権設定者と抵当権の実行方法について協議により合意を得なかった場合、抵当権者は人民法院に対し抵当権設定財産の競売、換金を申し立てることができる。」と規定されている。ただし、筆者の知るところ、最高人民法院が未だ本問題について実行可能性を備えた司法解釈を発布していないため、通常、裁判所は抵当権者が直接に「抵当権設定財産の競売、換金」を求める訴訟請求を受けることはない。
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