こんにちわ、ゲストさん

ログイン

売買契約の代金請求権の時効の中断に関して

中国ビジネスレポート 法務
王 倩

王 倩

無料

2011年12月2日

Q:当社は中国の現地法人で、ある中国会社に生産設備を販売したが、引渡完了して、代金の支払期限を過ぎても、相手企業は、生産設備の品質が悪いとの理由で、なかなか代金を支払ってくれません。その後、メールのやりとりや打合せを通じて交渉を続き、また、技術者を派遣して技術問題の解決に取り組んできましたが、日本と同一の品質の製品が作れないのは、現地で調達した原材料の関係で、当社の設備の問題ではないことが確認できました。今まで何度も代金の支払いを催促しましたが、まったく応じてくれません。すでに1年以上経ってしまいましたので、そろそろ時効ではないかと心配し始めています。相手の会社は、当社として、中国市場において、非常に大切なお客様と考えて、今の段階で、まったく相手を訴えることを考えておりません。時効に係らないようにしたいのですが、その対策を教えてください。

A:訴訟時効制度とは、権利者が権利の侵害を知り、または知ることができた時点から、一定期間経過しても、権利を行使しない場合、後で裁判所に対して、相手方に強制履行するよう請求しても、もはや勝訴の見込みはないというように法律関係を変動させる法的システムです。

今回の国内売買契約の代金請求権は普通訴訟時効が適用され、2年となっています。
この2年の時効は、売買代金の弁済期限到来時から起算されます。貴社の売買契約において、「生産設備の引渡しから10日以内に支払う」との文言がありますので、生産設備の引渡日の翌日から数えて10日目が弁済期限到来時になります。この日から2年間経過すると代金請求権の訴訟時効が成立します。また、仮に契約書において代金の支払期限につき明確な期限を約定していない場合は、原則として代金を請求した日から時効期間が起算されます。

以下の事由があった場合には、その都度、時効が中断されることになります。
(1) 訴訟を提起した場合。
(2) 当事者の一方が要求を出した場合。
(3) 債務履行に同意した場合。

貴社は、(1)の「訴訟を提起する」ことを現時点では考えていないということですから、以下では、前述の(2)と(3)にあてはまるかどうかを考えます。

貴社は、今まで、相手企業と会議を行った場合、会議後、覚書が纏められ、双方の当事者がこれに記名捺印していますが、その覚書に、設備代金の支払いに関する内容は盛り込まれていません。また、確かに、今までEメールの送信や、打合せなど口頭による代金請求があり、これらの行為は前述(2)の「当事者の一方が要求を出した」場合にあてはまるため、時効中断の効果があると考えても問題ありませんが、いったん、法廷で時効について争われた場合、これらの証拠の証明力は不十分ですので、相手方に否定され、敗訴してしまう危険性は高いです。そこで、相手が否定できないように、さらに強固な証拠で補足する必要があります。

この場合に考えられる強固な証拠で補足する方法としては、時効完成前に、公証人に依頼して、公証人から相手企業に代金請求書を送付してもらう「公証送達」、公証人からEメールを送信してもらう「電子公証送達」の2つの方法が考えられます。これら「公証送達」が行われることによって、代金請求をしたことが立証されます。そして、訴訟時効はその送達の日から一度中断されて、改めて2年の訴訟時効が起算されます。つまり、一度時効が中断された場合には、これまでの時効期間の進行は振り出しに戻り、改めて進行が開始されることになります。

また、「公証送達」を躊躇されるのであれば、他の手段を試してみることも考えられます。例えば、相手企業から、代金未払いの事実を承認する旨の書面、または、代金の分割払い或いは一部支払い、支払猶予の請求をする旨の書面を入手した場合、これら行為は、前述の(3)「債務履行に同意した」場合、いわゆる「承認」にあたり、将来の訴訟時に、時効中断の効果が認められると考えます。例えば、相手企業の要求に応じて、代金の減額について交渉した旨の覚書を用意して、署名してもらうことは有効です。

最終的に、やむを得ず、訴訟を提起した場合には、勝訴したとしても、相手が任意に支払ってくれるとは限らず、この場合、強制執行の申立時効の2年以内に、早期に強制執行を申立る必要があることを付言したいと思います。

最後に、ご参考のため、次の場合は、例外として1年の短期訴訟時効にかかりますので、特にご留意ください。
(1) 身体に対する傷害を受けて損害賠償を請求する場合(「民法通則」)。
(2) 品質劣化の商品を販売して、声明を出していない場合(「民法通則」)。
(3) 賃料の支払義務(「民法通則」)。
(4) 寄託目的物が、紛失あるいは毀損した場合(「民法通則」)。
(5) 曳航契約の請求権(「海商法」)。
(6) 競売品に瑕疵があり、声明を出していない場合(「競売法」)

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ