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ログイン2005年10月25日
さる10月に開催された16期5中全会は、「十一・五計画」期間(2006〜10年)において対外開放を「基本的国策」と位置づけ、対外開放のレベルアップを図るとの方針を明らかにした上、「引き続き積極的・効率的な外資利用を行なう」ことを強調している。
16期5中全会が採択した「『十一・五計画』に関する中共中央の提案」には「十一・五計画」期間における外資導入の具体的目標が明記されていないが、外資導入を主管する諸官庁及びそのシンクタンクは、相次いで構想または提案を打ち出している。
■ 減少に転じた対中投資 ■
外資導入、特に直接投資受入れは、中国の対外開放における重要な内容の一つでもあれば、これまでの中国経済の高成長を支えていた重要な要因の一つでもある。「九・五計画」期間(1996〜2000年)において、アジア通貨危機の影響で中国の直接投資受入れの伸び率は「八・五計画」(1991〜1995年)を大きく下回った。商務省によると、「九・五計画」期間の直接受け入れ総額(実行ベース)は、2135億ドルと、年平均伸び率で2%未満にとどまった。
「九・五計画」期間の直接投資受入れの不振もあって、「十・五計画」は直接投資受入れの目標を年間平均で400億ドルと、「九・五計画」期間の実績と変わらない数字を設定した。しかし、中国のWTO加盟に関する中米交渉の妥結を受けて、中国の直接投資受入れは2000年より増加に転じ、2001〜04年の4年間だけで合計2138億ドルと、「九・五計画」期間の実績を上回り、年平均伸び率も9%に上昇した。
表 5ヵ年計画別直接投資受入れの推移(単位:実行金額、億ドル)
外資導入全体
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うち直接投資受け入れ
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七・五(1986-90年)
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462.8(17.2)
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146.3(16.0)
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八・五(1991-95年)
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1610.6(36.1)
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1141.8(60.8)
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九・五(1996-00年)
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2897.8(1.8)
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2134.8(1.9)
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十・五(2001-05年)
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2249.0(8.9)
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2137.6(9.0)
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注:七・五〜九・五は実績、十・五は2001〜04年の実績。
カッコ内は年平均伸び率(%)。
資料:商務省など。
2005年上半期には対中投資は新しい変化をみせた。契約金額では前年同期比増勢を維持しているものの、実行金額は小幅ながらマイナス成長(前年同期比3%減)に陥ったのがそれである。主要投資国・地域のうち、日本、EUとタックスヘイブンである英領バージン諸島のほか、香港、台湾、韓国などの対中投資はいずれも減少した。
2004年の対中投資が実行金額の先行指標としての契約金額で前年比33.4%も増加したため、2005年の実行金額も増勢を維持することができると予想されただけに、実行金額の減少は政府関係者に意外感を持たせたのが実情である。
対中投資が減少に転じたのは、いくつかの要因によるとみられる。その一つは、中国政府の「マクロコントロール(経済調整)の強化」である。なかでも不動産投資への抑制、開発区の整理・縮小を含む土地管理の強化などは、長江デルタや珠江デルタへの投資に大きな影響をもたらしているとみられる。
二つ目の理由は、中国の投資環境の変化と周辺諸国との競争の激化である。2004年には中国の直接投資受入れは600億ドルと史上最高の数字を記録した一方、長江デルタや珠江デルタを中心に、電力や労働力(農民出稼ぎ労働者)の供給不足も深刻さを増している。他方、ベトナムなど中国周辺諸国は投資環境の改善などにより、中国との外資誘致競争において優位性を高めている。
三つ目の理由として、中国の政策調整による影響も指摘できよう。沿海地域を中心にエネルギー多消費型投資、汚染をもたらす可能性のある投資への制限、輸出戻し税率の調整及び議論中の外資系企業と中国国内企業の企業所得税の一本化などがそれである。また人民元切り上げに関する観測の強まりにより、中国を加工拠点とする輸出型企業への投資計画も一定の影響を受けているものとみられる。
■ 「十・五計画」より外資導入の増加率は低下か ■
「十・五計画」は、計画期間中の直接投資受け入れの目標として、年間平均400億ドルという「九・五計画」の実績(年間平均427億ドル)よりも低い水準に設定しているが、WTO加盟がもたらす好影響などから、実際の受け入れ規模は合計2600〜2700億ドル、年平均約500億ドルと、計画目標を大幅に上回る。「十・五計画」の例から判断すると、「十一・五計画」期間における外資導入目標は「十・五計画」期間の実績並みの数字になるとみられる。
商務省国際貿易経済協力研究院の予測では、「十一・五計画」期間における中国の直接投資受入れは年間平均で550〜630億ドルとなっている(楽観的にみても700億ドル)。年平均伸び率は、「十・五計画」期間の実績を大きく下回る2%前後にとどまる。
「十一・五計画」期間の中国の直接投資受入れに利する条件として、いくつか挙げられている。豊富で廉価な労働力という優位性は依然として存在すること、経済高成長が続くなか、国内市場の魅力はさらに増大すること、長江デルタや珠江デルタを中心に産業集積度は高まっていること、WTO加盟を受けて、法制度の整備はいっそう進んでいること、FTA締結など地域経済協力は進展を見せていることなどがそれである。
他方、中国の投資環境において、対中投資の増加を制約する要因の存在も否めない。製造業の生産過剰が深刻で、市場競争は激しさを増していること、電力や他の資源供給は緊迫化傾向にあること、元高などで労働力や他のコストが上昇しているなか、東南アジア諸国などとの競争にさらされていること、中国の外資導入規模がすでにかなり大きくなり、従来のような伸び率を維持しにくくなったことなどがそれである。
実際、これらの制約要因はすでに顕在化している。2005年上半期における対中投資の減少はその表れとみることができよう。これに対して、外資導入を主管する官庁である商務省は一定の危機感を持っている一方、これを契機に外資導入に関する姿勢を変え、従来のような単なる「外資誘致」から「外資選択」への転換を図るべきだとの意見も少なくない。
対中投資の規模増大を制約する要因の一つとして、「偽外資」の減少も挙げられている。近年、減免税など外資優遇措置を狙って、中国資本が英領バージン諸島やケイマン諸島といったタックスヘイブンなどを経由して、「外資」を偽って中国に再流入するケースは増えている。政府系シンクタンクの推測によると、2004年の対中投資額(実行ベースで606億ドル)のうち、このような「偽外資」は少なくとも3割(約200億ドル)を占めている。
現在、中国国内で外資企業と国内企業の法人税率の一本化など外資優遇措置の調整について議論を展開しているが、推進派の理由の一つとして、「偽外資」の存在を挙げている。かれらの主張によると、もし「偽外資」の減少により対中投資規模はある程度縮小しても、対中投資は増勢を失うことにはならないのである。
■ 規模拡大より構造改善を優先 ■
「十一・五計画」の外資導入に関する計画の作成にはいくつかの官庁と政府系シンクタンクが参与しているが、うち長期計画作成の主管官庁である国家改革発展委員会は大きな発言権を持っているとみられる。国家改革発展委員会は、2004年半ばから「十一・五計画」期間における外資導入に関する計画作成をスタートさせ、2006年1月までに「わが国の外資利用と対外投資に関する企画」という「重点特定項目計画」を完成する予定である。
同委員会は「十一・五計画」期間における外資導入に関する計画の作成にあたり、「五つの関係をうまく処理すべきだ」との基本方針を明らかにしている(2005年7月)。この「五つの関係」とは、国内発展と対外開放との関係、直接投資受入れと資源・環境制約との関係、外資導入と対外投資との関係、対外開放拡大と経済安全保障との関係、資本・技術導入と吸収・消化との関係を指している。
この基本方針からは、「十一・五計画」期間において中国政府は外資導入の規模拡大より質の向上を重視するという姿勢を窺うことができる。2005年8月、商務省は各省(自治区・直轄市)などの外資導入主管部門に「外国企業投資誘致の全面的レベルアップに関する指導意見」という通達を出し、中にも「外資導入の質の向上」を強調している。
同通達は中国の外資導入は量的には一定の規模に達したものの、質の優良な外資とそれに伴う技術・管理ノウハウは依然として不足していること、なかでも中部・西部への投資が少なく、地域間のアンバランスが深刻であること、調和な社会を建設するという目標からみて、今後の外資誘致において先進的技術・管理経験と高質の人材の導入を重点とし、多国籍企業の投資やサービス分野への投資を積極的に誘致すべきであることなどを指摘している。
商務省は通達を通じて、さらに中央の政策・規定を無視して、勝手に優遇策を打ち出し、地域間で悪性競争を行なうこと、外資導入規模を地方幹部の人事評価の指標にして、盲目的に外資誘致の目標を追及することなどを批判し、外資誘致に関する「バブル現象」をなくすよう、呼び掛けている。
しかし、量の拡大より質の向上を重視するという中央の方針が、地方政府に浸透できるかどうかは、まだ未知数としかいえない。地方政府のうち、外資導入の規模拡大を求める向きがまだ強いようである。遼寧省政府は「十一・五計画」期間における外資導入の目標として、年平均で12%増という「十・五計画」の実績を上回った数字を打ち出している(2005年9月の「北東アジア貿易投資博覧会」における遼寧省長の講話)のがその端的表れである。
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