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ログイン2008年10月29日
さる10月20日、中国国家統計局は今年(2008年)第3四半期の経済指標(速報)を発表したが、同期間の国内総生産(GDP)の実質成長率が前年同期比9%増と、2005年第4四半期以来、約3年ぶりに一桁に落ち込んだ。
一桁成長に転じた中国経済
さる10月20日、中国国家統計局は今年(2008年)第3四半期の経済指標(速報)を発表したが、同期間の国内総生産(GDP)の実質成長率が前年同期比9%増と、2005年第4四半期以来、約3年ぶりに一桁に落ち込んだ。
今年は中国の改革開放政策導入30周年にあたる年で、この30年間における中国経済の年平均実質成長率は9.8%に達し、2003年以降5年連続で二桁の高成長を謳歌し、昨年には約12%(11.9%)の高率を記録した。今年年初、中国国内と海外の調査研究機関の多くは中国が今年でも10%前後の成長を維持できるではないかとの予測を出している。
他方、今年以来の中国経済の実質成長率の推移を調べると、第1四半期は10.6%、第2四半期は10.1%、第3四半期は9%と、低下が続いている。今年1~9月の前年同期比成長率は依然9.9%となっているものの、第4四半期には8%台に低下し、年間のそれは一桁に転じる可能性が高いと予想されている。
実は中国政府の年度計画(「規画」)では、今年の成長率の目標を8%前後に定めており、経済の「過熱」を予防すべく、「マクロコントロール強化」と呼ばれる引き締め政策を、経済運営の課題としていた。この意味では成長率が一桁に低下したことは、政府の政策目標に合致するもので、「マクロコントロール強化」政策の「成果」と自慢してもおかしくないはずであった。
しかし、米国発の金融経済危機の影響で世界経済が減速し、「新興国」の代表として内外から大きな期待が寄せられているだけに、今度の国家統計局の発表結果に戸惑う声が多いようである。中国政府も実質的には政策転換を行ない、輸出促進や減税、公共事業の拡大を含む景気刺激策を相次いで打ち出している(または打ち出す予定)。
名目成長率と米ドルベースでの成長率が加速化
経済規模を比較する場合、名目GDPを米ドルに換算するのが普通である。今年以来、中国の実質成長率(自国通貨建て)は低下しているものの、物価上昇と人民元高の進行を背景に名目成長率、特に米ドルベースでの成長率はむしろ上昇している。国家統計局によると、今年1~9月の中国の名目GDPは、20兆1631億元と、昨年同期(16兆9062億元)より19.3%も増加した。この増加率は1995~2007年の水準(年平均12.5%)よりもちろん、2000~2007年のそれ(14.1%)をも上回っている。
中国の名目GDPの成長率を米ドルベースでみると、2000~2007年は年平均15.5%となっているのに対して、今年1~9月は31.4%にも達している(2007年9月末と2008年9月末のレートで計算)。世界GDPに占める中国のシェアは、2002年の4.4%から2007年の6%へと、5年間で1.6ポイントほど上昇したが、今年の上昇幅は拡大すると予想される。
中国のGDP規模の世界ランキングでは、2005年にフランスと英国を抜き、米国、日本とドイツに次ぐ第4位に浮上した後、4年間で同順位を維持しているが、米国、日本、ドイツとの差は着実に縮小している。世界銀行によると、2005年の中国のGDP(米ドル換算)は米国の18.1%、日本の49.3%、ドイツの80.5%(2000年は米国の12.3%、日本の25.7%、ドイツの63.1%)に相当したが、2007年には米国の23.7%、日本の74.9%、ドイツの99.5%となった。
2007年の中国とドイツの実質GDP成長率の差(中国は11.9%、ドイツは2.5%)から考えると、中国のGDP規模はドイツを超えるはずであったが、急激なユーロ高により、0.5%の僅差で中国のランクアップは見送られた。今年1~9月の中国のGDPは、米ドル換算で2兆9572億ドルと、昨年通年のドイツのそれの約9割に拡大した一方、ドイツの経済は今年第2四半期からマイナス成長に入り、ユーロ安も進んでいるため、今年9月時点で中国のGDP規模はすでにドイツを抜き、世界3位に浮上しているとみられる。
2009年に中国のGDP規模は日本のそれを抜き、米国に次ぐ世界2位になる
米国のゴールドマン・サックス社が2003年10月に発表したリポートで、中国は2007年にドイツを、2015年に日本を、2039年には米国を超え、世界一の経済大国になるとの予測を出した。日本では2010年にも「日中逆転」という日本経済新聞社の「独自の計算」のほか、中国のGDPは2008年にも日本を抜く可能性があるとの説もみられる。
世界銀行によると、中国のGDPは米ドル換算で2000年の1兆1985億ドルから2007年には3兆2801億ドルへと、2.7倍に拡大したのに対して、日本のそれは同4兆6674億ドルから4兆3767億ドルへと6.2%も縮小した。昨年(2007年)には日中GDP規模の差は25%あるが、今年1~9月の中国のGDPが米ドルベースで前年同期比31%も増加したため、今年にも「日中逆転」が生じても不思議ではない。
中国GDP規模の国際比較(単位:億米ドル)
|
2000年 |
2005年 |
2007年 |
中国 |
11,985 |
22,439 |
32,801(70,551) |
米国 |
97,648 |
123,979 |
138,112(138,112) |
日本 |
46,674 |
45,491 |
43,767(42,835) |
ドイツ |
19,002 |
27,870 |
32,972(27,275) |
注:カッコ内は購買力平価(PPP)の数字。
資料:世界銀行。
昨今、急激な円高で日本の企業及び日本経済全体は大きな打撃を受けているが、米ドルベースで計算する場合、日本経済の国際地位はむしろ上昇する可能性が高い。円高の救いで今年にはGDP規模での「日中逆転」も避けられそうだが、両者は極めて接近するであろう。
国際通貨基金(IMF)が今年10月に発表した経済予測によると、来年(2009年)中国経済の実質成長率は9.3%(今年は9.7%)、日本のそれは0.5%(今年は0.7%)となっている。この情勢から判断して、来年には予想外の円高がなければ、中国のGDP規模が日本のそれを抜き、米国に次ぐ世界2位に浮上するのはほぼ確実となろう。
購買力平価で中国のGDP規模は日本の約1.7倍、ドイツの2.6倍
GDP規模の国際比較を行なう場合、購買力平価(PPP)を利用する方法もある。長い間、世界銀行が中国のPPPベースGDPの計算には1986年の物価水準を基準としていたため、2005年の中国のPPPベースGDP規模は日本の2.4倍に相当する8兆8000億ドルと算出されていた。2007年に世界銀行が中国の物価高騰を考慮して再計算した結果、2005年の中国のPPPベースGDP規模は5兆3000億ドルと以前の計算より4割程度縮小されたが、依然日本のそれを約4割上回り、米国に次ぐ世界2位とランクされている。
世界銀行の最新発表によると、2007年中国のGDP規模はPPPベースで7兆551億ドルに達し、日本(4兆2835億ドル)の約1.7倍、ドイツ(2兆7275億ドル)の2.6倍、米国(13兆8112億ドル)の51.1%となっている(2005年は米国の43.1%)。
日本経済研究センターは、2020年には中国のGDP規模は購買力平価で日本の4倍になると予測しているが、2000年以降における日中両国の米ドルベースでのGDP成長率から推定すれば、中国の成長率は2~3ポイント低下しても2020年には中国のGDP規模は為替レートベースでも日本の3倍または3倍以上になるだろうと、筆者は見ている。
2020年には中国の人口数が14億人を超え、日本の人口数の11倍(現在は約10倍)になるため、中国の一人あたりのGDPは依然日本のそれを大きく下回る。しかし、中国の都市部と農村部の所得格差が大きく、2007年には3.3倍もあることなどから考えれば、中国の都市部、特に沿海部都市の一人あたりGDPは日本並みになる可能性がある。
このような層を中国全人口の4分の1(2007年の中国の都市化率は45%、2020年には約60%に拡大する見込み)として計算すれば、2020年には為替レートベースでも日本人並みの購買力を持つ中国人は日本総人口の約3倍になる見込みである。このような巨大市場が日本の隣に現われてくることは、日本企業にとって大きなビジネスチャンスになるに違いない。(2008年10月記・3,035字)
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