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ログイン2012年7月25日
はじめに
前回、前々回と中国での労働コストについてご説明させていただきました。今回は中国における労働力の大きな担い手である女性労働者に対する保護政策について解説いたします。2012年4月に一部法律が改正されており、会社への罰則も強化されていますので現地法人の人事管理には重要なテーマであると思います。
1.女子職員労働保護特別規定
1988年に国務院から発せられていた女子職員労働保護規定が2012年4月から女子職員労働保護特別規定に変更されました。新しい規定は、女性保護の考え方が強化されている上に、今まであいまいな規定であった部分や、企業に対する罰則規定がある程度明確に定められてきており、企業が管理を怠ると明確に責任を問われることとなっています。
2.特別規定の要点
今回の特別規定の要点は以下の通りです。
(1)女性の就業が制限される業務について、女性職員に事前に書面で通知することが企業の義務として明記されました(第四条)。この詳細については次回解説いたします。
(2)女子職員が妊娠、生育、哺乳期であることを理由に、給与を減額したり、解雇したり、労働契約を解除することを禁じています(第五条)。
(3)女子職員が妊娠しているために、それまでの業務に適応しないときは、医療機関の証明を根拠とした軽作業や適応できる業務をアレンジしなければなりません。また、妊娠7ヶ月以上の女子職員に残業をさせることや夜間勤務をさせることは出来ませんし、労働時間内で一定の休息時間を与えなければなりません。妊娠期間の産前検査は労働時間としてカウントしなければなりません(第六条)。
(4)いわゆる出産休暇の日数が引き上げられて以下の通りとなりました。
出産休暇:98日(そのうち産前に15日取得できる)
難産の場合:15日追加する
多胎の場合:1人増えるごとに15日追加する
(以上第七条)
※このほか初出産が満24歳以上の場合はさらに30日追加されます。
(5)流産休暇が明確に規定されました。
妊娠4ヶ月未満の場合:15日
妊娠4ヶ月以上の場合:42日
(以上第七条)
※これは地方によっては別途規則がある場合があります。手厚い方が実際の日数となります。以下は上海市の例です。
妊娠3ヶ月未満の場合:30日
妊娠3ヶ月以上の場合:45日
※これとは別に地方毎に人工中絶、避妊手術などの場合休暇を与える規則があります。
(6)会社が生育保険に加入していない場合、生育保険に参加していたとすると保険から支払われるはずであった手当や費用補助は会社が支払うこととなります(第八条)。
(7)1歳未満の乳児がいる女子職員に残業や深夜労働をさせてはなりません(第九条)。
(8)哺乳期の乳児がいる女子職員には毎日労働時間内に1時間の哺乳時間を与えなければなりません。多胎の場合1人増加ごとに1時間を追加します。また、女子職員の比較的多い会社は、女子職員のニーズにあわせて女子衛生室、妊婦休憩室、哺乳室などを設置しなければなりません(第九条、第十条)。
(9)労働の現場において、会社は女子職員に対するセクハラの予防と制止を行わなければならない旨が明記されました(第十一条)。
(10)政府機関や労働組合、婦人組織などの会社に対する監督と検査義務、違反している会社に対する罰則の明確化がなされました(第十二条~十五条)。
この内容については次回に説明させていただく予定です。
3.地方ごとの規定
既に2.の例の中でも触れておりますが、今回の国家規定のほかに地方毎に別途規定があります。
上海市での女性職員の妊娠期間の休暇の規定には上記の出産休暇の他に以下のような規定がありますので、一例としてご紹介します。
(1)妊娠休暇
国家の計画生育規定を守って妊娠している女子職員が医師の診断を根拠に休息する場合はその期間の給与は私傷病手当の標準が適用されます。
(2)産前休暇
出産前2ヵ月半の期間に取得した休暇期間についての給与は、通常支給される給与の80%を標準とします。
(3)出産休暇
休暇期間は上述の通りですが、会社が生育保険に加入していれば生育保険の規定に従い出産休暇期間の給与を(保険から)支給します。これはその女性職員の前年の給与を基準にして全額支給されます。ただし、上限は市の平均給与の300%までとなっており、実際の給与がそれより高い場合の差額は会社から支給します。保険に加入していない場合は全額を会社が負担します。
(4)哺乳休暇
哺乳期にある女子職員が哺乳を理由として休暇を取る場合、出産後6ヵ月半における休暇期間の給与は通常支給される給与の80%となります。またその後実際の状況により1年まで期間を延長でき、その場合、延長期間については原則70%となります(生活が困難になると認められる場合には80%まで増額が認められます)。
次回は、会社が違反した場合の罰則と、具体的な女子職員にさせてはならない作業などについて説明いたします。
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