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会社移転時の労働紛争の回避

中国ビジネスレポート 労務・人材
王 倩

王 倩

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2012年7月30日

多くの企業は、経済環境または政府の政策等の変更に応じるため、また経営上の必要性に応じ、住所変更の手段を取ることがある。その住所の移転に際し、法的問題が生じることがある。以下は会社移転に纏わる労働紛争に関して紐解いていく。

(一)よく見る解決案について

労働者が企業移転に不満を持ち、労働紛争を起こすことを回避するため、企業側がよく採用する解決案として、下記のような事例が挙げられる。

(1)労働契約或いは就業規則において、企業側は勤務場所を変更する権利を有し、従業員がそれに従わなれければならない、と定めてある。
(2)労働契約で勤務場所の規定を設けていない。
(3)労働契約で勤務場所に関する規定が曖昧で、範囲が広すぎる。

このように表記すると、労働者の同意を得ずに住所変更等の手続きが済むように見えるが、実際のところ、上述の方法が全て確実に合法であり、企業の移転時において心配事が何一つない、とは言い切れない。では、この3つのパターンのどこに問題があるのだろうか。

(1)労働法関連法令では、勤務場所の変更に対し、明確な禁止規定がなされていない。かといって、労働契約で勤務場所の変更に関する条文を盛り込み、もしくは労働者と事前に工場移転協議書を締結することで、従業員の同意を得ずに勤務場所を任意調整することができるわけではない。労働仲裁の実務において、企業に合理的な理由が無い限り、これは労働契約の変更と判定され、労働者がそれを受け入れない場合、企業側は労働者に対しそれぞれの労働条件に値する「経済補償金」の支給を要求される。

(2)『労働契約法』第十七条第四項の規定によると、従業する場所は労働契約で明示すべき事項である。企業側が提示した労働契約に明示すべき事項が記載されていない場合、労働行政部門よりその是非が命じられる。その際労働者に損害をもたらした場合、企業側に損害賠償の責任が追究される。よって、勤務場所なしの労働契約自体が労働契約法違反となってしまうのである。また、労働契約に勤務場所が明記されていない場合でも、実際の従業員の勤務場所が、労働契約の勤務場所とみなされる。

(3)一部の職種、例えば、運転手、セールスマンなどの外勤は特性上具体的な勤務場所を決定することが難しい。しかし、その他の従業員に対しても、勤務場所をはっきりせず、或いはあえて範囲を広げて明記すると、辻褄が合わなくなる。この方法もまた、(1)と同じ、移転時、労働契約変更とみなされる。

(二)勤務場所の変更に対する従業員の異議がある場合の対策

同一地域内での移転なら、従業員達が納得出来るように通勤バス、通勤手当などの補償措置をとる場合、契約条件の変更とはいえないと判断された仲裁例もある。

ただし、工場移転に伴って、契約変更が生じ、また、当事者双方(企業側、労働者側の双方)協議をしても合意に達しなかった場合、これは労働契約履行不可能となり、企業側は30日前に労働者本人に書面を持って通知し、労働契約を解除することができる。

ただし、ここで注意したいのは、全ての従業員に対し、上記の「協議→合意に達しなかったら解除、経済補償金を支払う」パターンが有効になるわけではない。下記の状況のいずれかがある場合、使用者(企業側)は労働契約の解除を行うことが出来ない。

(1)職業病に罹患したか、又は業務による負傷により労働能力を喪失、又は一部喪失したと確認された場合
(2)罹病又は業務とは関係性の無い負傷により、規定の医療期間内にあたる場合
(3)女子従業員で妊娠期、出産期、授乳期にあたる場合

特に上述(3)の従業員に対し、企業が契約解除できない状態で、従業員から勤務場所の変更の同意を得られない場合は、企業に生産面や経営計画にも悪影響が出てくる。会社側が従業員と交渉を図る等、他の方法で融通を利かすのがキーポイントになってくる。

また、元の住所と相当離れていて、それが異なる地区、省の場合は、会社住所変更の手続きも非常に煩雑になり、変更策として現存会社の登記を抹消し、新しい住所で新規設立することも考えられる。こうなると、労働契約の終了とみなされ、労働契約の解除に関する制限が適応されないことになる。

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