はじめに

前回は、女性職員に対する労働保護政策の概要について解説いたしました。今回はその中で具体的に女性職員にさせてはならない労働の種類と、特別規定に違反した場合に企業に科せられる罰則について解説いたします。

１．    業務制限の内容

（１）    女性職員に行わせてはならない労働
①    鉱山、井戸の中の労働
②    体力労働強度分級標準（国家標準局規定）の第４級体力労働強度の作業
③   ２０キログラム以上のものを１時間当たり６回以上持ち上げる作業、または２５キログラム以上のものを間断的に持ち上げる作業

（２）    生理期間中の女性職員に行わせてはならない労働
①    冷水作業分級標準（国家標準局規定）の第２～４級の冷水作業
②    低温作業分級標準（国家標準局規定）の第２～４級の低温作業
③    体力労働強度分級標準の第３、第４級体力労働強度の作業
④    高所作業分級標準（国家標準局規定）の第３、４級の高所作業

（３）    妊娠期間の女性職員に行わせてはならない労働
①   空気中にある、鉛とその化合物、水銀とその化合物、ベンゼン、カドミウム、ベリリウム、砒素、シアン化合物、窒素酸化物、一酸化炭素、二硫化炭素、塩素、Ｅカプロラクタム、ブタジエン、塩化ビニル、酸化エチレン、アニリン、ホルムアルデヒドなど有毒物質の濃度が国家標準を超えている場所での労働
②    抗癌薬、ジエチルスチルベストロール製造、麻酔薬気体に接するなどの労働
③    密封されていない放射性物質の操作、核事故、放射能事故の応急措置
④    高所作業分級標準で規定された高所作業
⑤    冷水作業分級標準で規定された冷水作業
⑥    低温作業分級標準で規定された低温作業
⑦    高温作業分級標準（国家標準局規定）の第３、４級の高温作業
⑧    騒音作業分級標準（国家標準局規定）の第３、４級の騒音作業
⑨    体力労働強度分級標準の第３、第４級体力労働強度の作業
⑩   密閉空間、高圧室での作業、潜水作業、強い振動を伴う作業、頻繁に腰を曲げたり持ち上げたりしゃがみこむような作業

（４）    哺乳期間の女性職員に行わせてはならない労働
①    妊娠期間の女性職員に行わせてはならない労働の①③⑨
②   空気中にあるマンガン、フッ素、臭素、メタノール、有機リン化合物、有機塩素化合物など有毒物の濃度が国家標準を超えている場所での労働

２．    罰則規定（女子職員労働保護特別規定第十三条）

（１）   妊娠７ヶ月以上の妊婦に残業や深夜労働をさせたり、業務時間に一定時間の休息を与えなかった場合は、該当する妊婦１人あたり１，０００元以上５，０００元以下の罰金となります。
（２）   出産休暇や流産時の休暇を法定どおり与えなかった場合は、該当する妊婦１人あたり１，０００元以上５，０００元以下の罰金となります。
（３）   １歳未満の乳児のいる女性職員に残業や深夜労働をさせた場合は、該当する女性職員１人あたり１，０００元以上５，０００元以下の罰金となります。
（４）   女性職員に行わせてはならない労働、生理期間中の女性職員に行わせてはならない労働の規定を守らない場合には、該当する女性職員１人あたり１，０００元以上５，０００元以下の罰金となります。
（５）    妊娠期間の女性職員に行わせてはならない労働、   哺乳期間の女性職員に行わせてはならない労働の規定を守らない場合には、該当する女性職員１人あたり５万元以上３０万元以下の罰金となります。状態が深刻な場合は作業の停止や閉鎖となる場合もあります。
（６）   このほか、損害を受けた女性職員に対して損害賠償の責任がある上に、会社と直接の管理責任者に対して犯罪行為として刑事責任を追及されます。
（７）   上記（１）～（３）は県級以上の人力資源社会保障行政部門、（４）（５）は県級以上の安全生産監督管理部門の管轄です。

３．    まとめ

前回、今回と解説してきましたとおり、中国の女性労働者保護は比較的手厚く、会社側も十分な配慮を求める内容となっております。また、女性の比較的多い職場の場合、経営計画を立てる上で、あるいは人員計画を練る上で、こういった制度を理解しておくことは必須のことであろうと思います。紙面分量の都合により、国家標準局の作業分級標準の詳細についてはここではご紹介しませんでしたが、中国現地法人の人事・労務に責任のある職務をされている方は、一度是非、目を通しておかれることをお勧めいたします。