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ログイン2016年11月9日
一、重要制度の変化及び企業としての対応策についての分析
1、正常に出勤した場合の月給の特定について
1)制度の変化:
これまでの制度では正常に出勤した場合の月給の範囲が不明確であったが、新弁法では年末賞与、及び出退勤交通費手当、食事手当、住宅手当、中番・夜勤手当、夏季高温手当、残業代など特別な状況で支払った賃金が正常に出勤した場合の賃金に含まれないことが明確にされた。
2)企業としての対応策:
企業は契約、協議書、制度において、新弁法の規定に基づき、正常に出勤した場合の月給と枠外の支払項目の定義・範囲を明確に区分・特定し、新弁法規定の枠外の支払項目「年末賞与、出退勤交通費手当、食事手当、住宅手当、中番・夜勤手当、夏季高温手当、残業代など特別な状況で支払った賃金」を除外したうえで、正常に出勤した場合の賃金に該当しない旨を明確に約定し、契約、協議書、制度、賃金明細などの書類においても、枠外の支払項目及び該当金額を個別に列挙し、区分しておくことを検討するとよい。こうすることで、休暇中の賃金、残業代の計算基数を効果的に減らすことができ、企業コストの削減につながる。
2、休暇中の賃金計算基数を「3割引き」するかどうかについて
1)制度の変化:
●旧弁法では「労働契約に取決めがある場合」と規定されているが、ここで言う取り決めは月給に関する取り決めなのか、それとも休暇中の賃金計算基数に関する取り決めのことを指すのかという点で司法実務上論争があったが、新弁法では「労働契約に月給について取決めがある場合」という明確な規定ぶりとなっており、新弁法の内容を見る限りでは、当該論争の決着が図られたと解することができる。
●しかし、新弁法は裁判所の現行の判断基準における理解二(※40)の観点と置き換えることができるかどうかについてはまだ定かではない。なぜならば新弁法は上海市人的資源社会保障局によって公布された規範文書だけであり、法律法規規則ではないため、裁判所にとっては当然に効力を有する文書ではないためである。従って、裁判所の判断基準と矛盾する内容について、裁判所がこの点を今後どのように取り扱うか、又は新弁法の規定を認めるかどうかについてさらに明確にされる必要がある。
2)企業としての対応策:
●原則的には、月給に関する取り決めをしないほうがよいと思われる。裁判所の現行の判断基準における理解二では、「休暇中の賃金の計算基数について取り決めがない場合、正常に出勤した場合の賃金の70%を基数とすることができる」という見方を示しているが、裁判所の現行の判断基準には論争もあり、また他方では新弁法においては、月給について取り決めがある場合、月給を基数としなければならず、月給について取り決めがない場合に限り、正常に出勤した賃金の70%を基数とすることができる旨が明確にされているため、企業が「3割引き」を考えている場合にやや無難なやり方としては、契約、協議書において従業員の月給について取り決めをしないことであると考えられる。
●すでに取り決めがある場合、正常に出勤した場合の月給をできる限り低めに設定するようにする。具体的に言えば、新たに取り決めを行ったり、制度の調整を行ったり、給与明細において明確に記載するなどして正常に出勤した場合の月給から枠外の支払項目を除外し、正常に出勤した場合の月給金額を引き下げておけば、正常に出勤した場合の月給が休暇中の賃金計算基数として認定されても、係るコストを削減することができる。
3、残業代の計算基数を「3割引き」するかどうかについて
1)制度の変化:
●一の表でまとめた通り、裁判所の現行の判断基準は全体的に見て、月給の取り決めがあるかどうかにかかわらず、いずれの場合においても従業員が正常に出勤した場合の賃金(※41)を残業代の計算基数とする傾向にあり、一般的には、取り決めた月給が著しく不合理である場合、又は企業が悪意で正常に出勤した場合の賃金項目を枠外の賞与、福利厚生、危険手当などの項目に組み込んでいる場合に限り、従業員の実際の収入の*70%で基数を確定できるとしている。
●一方、新弁法では残業代の計算基数を確定するにあたっては、休暇中の賃金の計算基数と同じ確定方法を取り入れており、月給の取り決めがない場合に限り、正常に出勤した場合の賃金の70%で基数を確定できるとしている点は裁判所の現行の判断基準と矛盾しているため、裁判所が今後、この点をどう取り扱うか又は新弁法の規定を認めるかどうかについてはさらに明確にされる必要がある。
2)企業としての対応策:
●原則的には、月給に関する取り決めをしないほうがよいと思われる。裁判所の現行の判断基準を見る限りでは、月給に関する取り決めがなくとも、正常に出勤した場合の賃金で基数が確定される可能性が極めて高いと思われるが、今後、裁判所が新弁法の意見を受け入れた場合、月給に関する取り決めがないという前提において、正常に出勤した賃金の70%で基数を確定でき、また仮に裁判所が現行の判断基準をこのまま維持した場合で月給に関する取り決めがなくとも企業に顕著にマイナスの影響が生じることはないと思われる。
●取り決めがすでにある場合は、正常に出勤した場合の月給をできる限り低く設定するようにする。詳細は二、2、2)の部分の内容をご参照のこと。
4、労働関係を回復した後の賃金支払い
1)制度の変化:
旧弁法では従業員が労働関係の回復の請求を行い、当該請求が認められた場合、企業は従業員の仲裁・訴訟期間中の賃金を支払う必要がある(支払い期間は仲裁申立て日から起算する)と規定していた。旧弁法と異なる点は、新弁法では調停・仲裁・訴訟期間中の賃金を企業が支払う必要があるとしている点であり、つまり新弁法では労働関係の回復を命じる旨の裁決がなされた後の企業の賃金支払義務が拡大され、調停期間中の賃金も支払わなければならなくなった。
2)企業としての対応策:
●従業員が労働関係の回復を請求した労働紛争の場合、調停期間が長引き、万が一労働関係を回復する旨の裁決がなされれば、調停期間中の賃金も支払う必要があり、コスト増大につながることから、仲裁・訴訟手続き過程で実施される調停以外の調停、例えば、仲裁前の調停、訴訟前の調停などに参加しないようにしたほうがよい。
●調停に参加する必要がある場合には、仲裁、訴訟手続きの過程で行われ、開廷時に仲裁人及び裁判官主宰の下で行われる調停に参加するようにしたほがよい。なぜならばこのような調停は通常、開廷当日に執り行われ、時間は長くなく、効果も著しく、また「調停期間中の賃金も支払わなければならなくなる」という潜在的リスクを回避することができるからである。
(里兆法律事務所が2016年8月26日付で作成)
(※40)一の表のまとめ及び脚注14をご参照のこと。
(※41)29と同じである
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