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「低賃金」時代を迎える中国の大学卒業生

中国ビジネスレポート 労務・人材
馬 成三

馬 成三

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2006年12月30日

記事概要

北京市大卒就職指導センターが2006年12月9日に公表した「2006年北京の大学卒業生における就職・給料の調査レポート」によると、北京地区の大学の新卒の平均初任給は2262元、うち3分の2は2000元を下回っている。最低の初任給は150元(約2250円)しかなく、最高の22500(約34万円)元と比べて、150倍の差がある。

 

北京市大卒の初任給は最低150元(2250円)

 

北京市大卒就職指導センターが2006年12月9日に公表した「2006年北京の大学卒業生における就職・給料の調査レポート」によると、北京地区の大学の新卒の平均初任給は2262元、うち3分の2は2000元を下回っている。最低の初任給は150元(約2250円)しかなく、最高の22500(約34万円)元と比べて、150倍の差がある。

この調査が北京地区の26の大学の卒業生を対象に行なわれたもので、1万4000人から回答を得ている。回答者には文科系、理工科系と総合系の学校が含まれ、うち博士課程は3%、修士課程は25.2%、本科は43.2%、専科(短大)・専門学校は28.6%をそれぞれ占めている。

同調査によると、約3分の2の卒業生の初任給は2000元を下回っている。うち約25%は1000元以下、41%は1000元~2000元、17%は2000元~3000元で、3000元以上は17%にとどまっている。

調査対象の初任給は平均で2262元と、北京市の平均賃金より587元も少なく、率では2割以上も低いのである(国家統計局によると、2005年北京市の年間平均賃金は34191元、月平均で2849元となっている)。

 

博士課程や金融・IT関係の初任給は高い

上記の調査には、学歴が高いほど初任給も高く、且つ格差が非常に大きいという結果が示されている。例えば、博士課程卒業生の初任給は平均で4605元、修士課程のそれは3561元と、それぞれ本科より約2700元と1675元も高い。つまり博士課程と修士課程を卒業し、且つ就職できれば、それぞれ本科卒の2.4倍と1.9倍の初任給をもらうことができるのである。

試用期を終えた「定級賃金」(一般的には入社1年後)をとってみると、博士課程の卒業生は5400元、修士課程は4612元と、本科(2559元)との差がさらに拡大する。専科(短大)と専門学校の卒業生の初任給は、平均で1127元と1055元、本科よりそれぞれ40%と56%も低い(専科と専門学校の卒業生の「定級賃金」はそれぞれ1801元と1612元)。

初任給は業種により大きく異なる。初任給が最も高い業種は金融業(平均で2629元、「定級賃金」は3795元)、その次にIT業、科学研究と地質探査業が続き、いずれも2500元(「定級賃金」は3000元)を上回っている。その次は採鉱業、電力・ガス・水道、ホテル、飲食、住民サービス、交通運輸、倉庫と郵政業となっている。

初任給の低い業種として、卸売り、小売業と農・林・牧・漁業などがあり、これらの業種の初任給は平均で1500元以下、「定級賃金」も2000元に達していない。

 

外資系企業の初任給は平均で3134元

北京市の大卒の初任給と「定級賃金」は、企業の所有制によっても大きな差がみられる。うち、外資系企業の初任給と「定級賃金」が最も高く、それぞれ3134元と4294元に達している。その次は、国有企業、「事業単位」(教育、研究、医療など)、株式会社、国家機関、党・政府機関となっている。平均賃金水準の最も低いところは民営企業で、平均初任給と「定級賃金」はそれぞれ1854元と2512元にとどまっている。

実際、外資系企業の初任給と他の所有制企業との差は、国家統計局が発表した北京市の平均賃金統計にも表れている。同局によると、2005年北京市の年間平均賃金は34191元、うち国有セクター(国有企業と政府機関、「事業単位」を含む)は39061元、株式会社は37705元だったのに対して、香港・マカオ・台湾企業と外資企業はそれぞれ41347元と52262元となっている。

 

2007年にも改善できない大卒の就職難

中国の大学卒業生を「低賃金」時代に向かわせた最大の背景は、大学卒業生の供給急増と需要の不足にほかならない。中国教育省などによると、2006年中国における大学卒業生は、前年比75万人増の413万人に達し、2000年の80万5000人と比べて、6年間で5倍以上に増加した。一方、大卒への需要は同じスピードで伸びておらず、2006年にはむしろ前年比1割前後減少している。

そのため、大学卒業生の就職率は低下傾向を続けている。2003年に83%だったそれが、2005年に72.6%、2006年には65%前後まで低下する見込みである。つまり140万人余りの新卒の大学生が就職できない状態になるのである。2007年には中国の大学卒業生は、495万人に拡大し、就職率もさらに低下する可能性もある。

就職競争と人間関係の圧力で多くの大学生は、精神的不安に陥っている。全国の12万6000名の大学生を対象に行なったある調査では、調査対象の20.3%は「心理的問題」を抱えているという事実が指摘されている(中国新聞社の報道)。高成長を謳歌している広東省の多くの大学でも、「心理的病気」で精神病院に送られて治療を受けた学生は、1校あたりで年間3~5人出ているという。

中国にとって、大学卒業生の就職問題は、すでに「経済問題」を超えて、「和諧社会」(調和のとれた社会)を実現させるための政治的・社会的問題となっている。今年(2006年)12月5日~7日に開催された「中央経済活動会議」は、2007年における経済活動の課題の一つとして、「大学卒業生の就職に関する指導とサービスを強化する」ことを挙げているが、このことからは中国指導部が抱いた危機感を窺うことができよう。(2006年12月記・2,299字)

 

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