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中国進出企業の環境規制・化学物質規制コンプライアンス の最新情勢Vol.2

中国ビジネスレポート 各業界事情
大野木昇司

大野木昇司

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2010年11月4日

記事概要

中国で急速に普及する企業環境・CSR報告書、中国の環境報告書ガイドラインの概要、在中国の日系企業の環境報告書における課題について解説する。【3,526字】

企業環境報告書作成ガイドラインで規範化目指す

中国で急速に普及する企業環境・CSR報告書

2010年9月2日、中国環境保護省は「企業環境報告書作成ガイドライン」のパブリックコメント版を発表した。これまで政府による圧力を受けて中国でも有力国有企業や上場企業を中心に環境報告書の定期発行が浸透してきているが、今回のガイドラインによって環境報告書に記載する内容の規範化を全国的に推進していく動きがある。

環境報告書とは、企業が自社の環境活動に関しての情報を社内外に開示するために定期的に発行する報告書を指し、事業活動における環境負荷及び環境配慮等の取組状況に関する説明責任を果たし、ステークホルダーの判断に影響を与える有用な情報を提供するとともに、環境コミュニケーションを促進するためのものと定義される。

現在、日本の主要な企業の多数が、その重点や編集目的に応じて、環境行為を主に紹介する「環境報告書」、CSR(企業の社会的責任)を重点とする「企業社会的責任報告」(CSRレポート)、さらに、社会・経済・環境の三方面からなる「持続的発展報告書」(サステナビリティレポート)など様々な名称の報告書を発行している。

1997年、2000年、2003年、2007年に環境省は環境報告書作成ガイドラインを公布し、また2000年と2002年に事業者の環境パフォーマンス評価ガイドラインを公布し、2006年度には環境・CSR報告書の発行企業数が933社にまで増えるなど、日本では早くから報告書が充実していた経緯があるが、この数年をみるに、中国の環境報告書が目覚ましい普及を見せている。中国社会科学院「企業社会的責任研究センター」が経済誌「WTO経済導刊」に掲載した報告資料によると、中国で環境・CSR に関する報告書を発行した企業は2006 年の32社から2009 年には582 社へと急増しており、2010年に入っても増加傾向を見せている。

この背景として、政府主導によるCSRの普及政策がある。2006年に改正、施行された会社法でCSRに関する条項が追加された。グローバルな生産拠点となった中国が、商品に関する環境配慮設計や生産プロセスのエコ化、CSR対応などについて諸外国より圧力を受けるようになったが、政府が国内企業のCSRを指導することで企業を守り、競争力を強化するという戦略に転じたと見られる。

また、別の中央政府部門でも独自に情報公開を求める規定もある。例えば、深?証券取引所や上海証券取引所のCSRに関する通達や環境情報の開示要求、国有資産監督管理委員会が通達した中央企業のCSR履行に関する指導意見はいずれも、ステークホルダーとの対話や協力の推進、社会・環境面での企業活動への配慮など、日本や欧米など諸外国で一般的に定義されるCSRである。地方では、後述する山東省環境保護局のほか、遼寧省大連市環境保護局も2006年から現地日系企業を含む十数社を実証企業に指定して、環境報告書を作成・公表させ、評価を行い、その結果を公開した。この事業ではキャノンの子会社である佳能大連弁公設備有限公司が最優秀報告書に選ばれている。

さらに、中国の環境に関する情報公開では初の法令となる「環境情報公開弁法(試行)」が2008年5月に施行された。企業に対し環境情報の自発的な公開を奨励しつつ、汚染企業や大企業に対しては情報公開を強制するという二段構えとなっている。

しかし、中国における情報公開の実践はまだ一般的実務としては普及しておらず、報告書自体も規範化されていない、情報が読みにくく不正確、目標の達成状況や各種排出量、環境投資といった定量情報の記述が不足している、比較可能性が弱いといった問題点が多数存在し、今後も情報公開の質と量の両面でさらなる改善が求められる状況にある。

中国の環境報告書ガイドラインの概要

さて、今回の環境報告書ガイドラインに先駆けて、2008年に山東省環境保護局が「山東省企業環境報告書作成指針」を地方基準として全省で実証事業を行っている。このガイドラインは中国企業の特徴に見合った環境報告書作成指針と実施制度を目指して制定されたもので、同省の代表的企業であるハイアール集団と青島発電公司をモデル企業とし、報告書作成と制度公布過程で直面する可能性のある実際問題を分析・研究し、企業環境報告書作成の一般原則、基本要点、技術路線、内容枠組み等の内容を提示して、企業の環境情報公開の実施を指導、普及させてきた。

そして、その山東省ガイドラインを整理、踏襲して作成したのが全国版となる今回の環境報告書ガイドラインであるが、記載内容の設計にあたり、パナソニック、ソニー、東芝、NEC、富士通、キャノンなど日系企業の報告書が参考とされており、日中友好環境保全センターや国際協力機構(JICA)、地球環境戦略研究機構(IGES)など日本の関連機関とも交流し意見交換している。以下に同ガイドラインで規定された記載内容を示すが、その結果として日本にとっても馴染みのある構成となっている。また、環境会計については、計算方式の複雑さや不統一性といった理由で今回は採用されなかったという。

以上のように、記載内容は6章25項目で構成され、計90指標が設けられているが、これらは基本指標と選択指標からなり、企業の規模に応じて選択指標は任意となり、適用範囲を広げている。

また、付随の説明資料の中では、参考として国内外の複数の環境報告書における5つの主要項目(マテリアルフロー分析、環境投資、環境パフォーマンス、環境保護目標、正確性向上のための措置)の記載状況に対する評価を公開している。明確な数値データと図表を用いた見やすさが共通した評価基準であり、正確さ向上については、データ収集方式の明確化や第三者検証とコメントの有無が要件として示されている。

評価の結果、上記5項目全てで最高ランクの星3つを達成したハイアールの2008年度報告書がモデルとして紹介されている。日系企業の報告書では、東芝2006社会的責任報告書やトヨタ2008持続的発展報告書が評価事例として挙げられており、ハイアールと比べて環境投資や環境パフォーマンスにおける評価が下回っていた。

在中国の日系企業の環境報告書における課題

実際に、中国の有力企業の中では日系企業と比べても遜色ない報告書を発行しているところもあり、環境情報公開に関する研究にも熱心である。しかし彼らにしても、環境報告書の意義づけや活用方策については未だ模索段階にある。このガイドラインが施行、運用されれば、日系企業の報告書作成ノウハウを活用する余地は大きいだろう。しかし、中国進出中の日系企業の報告書は現地子会社での社員研修用の教材としての用途が大半であり、対外的な役割や効果については実証されていない点が多い。この意味では両者の課題は似通っており、日中双方が同じ目線で意見交換や経験共有を行っていける。

しかし一方で、日系を含む外資企業の中国における情報公開に対する評価は低い点に関しては注意が必要である。2009年に中国社会科学院CSR研究センターが発表したレポートでは、外資企業は中国国有企業に比べて、中国国内での情報公開が大きく不足していると結論付けられており、その理由としてグローバル版は充実していても現地子会社にフォーカスした情報や中国語メディアでの公開が欠如していることがあげられている。

中国が独自のガイドラインや評価基準を策定してきている現状の中で、日系企業には、現地で中国の国情やビジネス環境を考慮した上での積極的な情報公開が求められている。先述の問題点への対応や、各種研究活動、ランキング活動への参加等で影響を強めていくことで、中国市場における環境情報公開の動きから取り残されないようにしたい。

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