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ログイン2010年11月2日
今もなお、中国ビジネスの現場で発生し、日系企業の頭を悩まし続けているのが労働ストライキである。このシリーズでは、日系企業がどのように労働ストに対応していけばよいのか、分析・解説していく。
No.4:ストライキから労働仲裁に発展したときの対応
背景その他
最終的に向かうパターンにはいくつかが考えられる。一つ目は交渉により友好的に解決する。二つ目は操業停止が続き、企業の経営が困難に陥る。そして三つ目は仲裁等法律争議に発展するパターンである。
対応策
1.心理的駆け引き
ストライキが労働仲裁に発展するまでには、それ以前に会社と労働者との間に対立時期があり、これらを経た結果、互いの心理に微妙な変化が生じているはずである(疲弊、失望、怒り、興奮、対立等)。最後の戦いの場である仲裁時には、双方の心理状態がその結果に大きな影響を与える。
1.1労働者
扇動者(1~2名)は仲裁において攻撃性が増すことが多い。一方、単に行動しているだけの従属者たち(数名)は、傍観的態度を取ることが多い。扇動者にとっては心理的優勢を保つために従属者の支持が必要であり、行動をともにしている過程で労働者は「利益追求集団」と化していく。従って、会社はこの集団の「団結力」を崩壊させ、一人一人を攻撃していかなければならない。
まず、従属者に対し「速攻」戦略を取って迅速に解決し、集団の人数を減らすことで扇動者を孤立させることである。その上で、扇動者を「長期戦」で孤立させ、戦闘力を萎えさせる。
1.2会社
中小企業の場合往々にして短期間で全てを解決しようとするが、この点に付け込まれると、短気は損気で主導権を取られてしまうため、仲裁では「虚虚実実の駆け引き」が大切である。一方、大企業の場合は面子を気にして、戦略、戦術に時間をかけ過ぎ、その結果、機会を逃してしまう(本来は小額の和解額で全体的に見れば勝利といえる結果を手にできるはずである等)。従って、仲裁では臨機応変な考え方が必要である。ストライキに起因する労働仲裁はその他の原因によるものと比べて、感情的要素が濃い。従って、会社としては労働者の心理状態を研究すると同時に、状況の変更に応じて自身の態度も調整していく必要がある。
2.事実の収集、分析
労働者が会社を訴えた場合の労働仲裁は簡単に受理されやすく、詳細な証拠を要求されないときもある。従って、会社が労働仲裁委員会から受け取る資料も簡単なものにすぎないため、以下の対応が必須となる。
2.1資料、情報を収集、整理する担当者を指定する
特に注意すべきは、案件事実に関する全ての資料、情報は適時収集して整理し、相手方の単純な資料に惑わされないことである。
全ての資料を収集してから、会社にとって有利な証拠や情報とそうでないものとをふるいにかけることができる。事実に対する完璧な陳述は仲裁時に非常に重要である。
会社が敗訴した事例として、重要な事実状況を把握できなかったために最終的に不利な状況に立たされることが多い。
2.2仲裁開始前に全ての証拠を準備する
資料収集担当者を指定しなかったために、仲裁への準備が効率の悪いものとなり、仲裁時に会社に有利な証拠を提示できないことがある。厳しい仲裁委員に当たると会社は立証期限を過ぎてしまったとされて、非常に不利となる。
上述の準備は簡単そうに見えるが、会社が敗訴した事例の多くには確かに上述の作業が不完全であったために、仲裁開始時から守りの立場に立たされている場合が多い。また、案件の事実の多くは人事部門を含む会社の各部門(生産ライン等)から協力を得ることになるため、秘密保持についても重視しなければならない。
3.証拠の有効性
案件に関する情報は多いものの、効果的な証拠、会社に有利となる証拠はそのうちの一部にすぎない。これに対しては、会社は以下2通りに分けて対応すべきである。
3.1会社に有利であることが明らかな証拠については、重点的に仲裁委員に事実関係を述べ、明確な判断を促す。
3.2会社に有利な証拠が少ない場合は、仲裁委員は案件の事実についてより多くの説明を要求してくるため、会社側の説明が曖昧な場合は仲裁委員によくない印象を与えてしまうため注意が必要である
3.3当所の経験では、以下事実は会社にとって有利となる可能性があるため、注意が必要である。
a.ストライキ発生時間(通常の業務時間?勤務外?)
b.ストライキ発生地点(会社内?会社外?)
c.ストライキ持続期間
d.ストライキに関わった部門/生産ラインへの影響(ライン停止後の製品減少量/復旧に要した残業状況)
e.生産設備が停止したかどうか?
f.工会が処理に当たったときの記録
g.会社のストライキ関与者への要求(期限付きで職場復帰する等)
h.就業規則における規律違反認定に関する詳細な条項(特に生産秩序に関する規定)
4.集団案件は合同審理を回避すべき
ストライキの前後には多くの場合、労働者は仲裁を申し立ててくるが、仲裁委員会の多くは合同審理を行う傾向にあり、実は、合同審理は会社にとって不利である。理由は以下のとおり。合同審理は、労働者の「対抗的集団」であるため、労働者個人をそれぞれを攻め落としていくことが難しい。次に、仲裁委員が審理を進めるときに統一した裁定基準と労働者全員の均等な利益を考慮することから、最後に損をするのは会社側である。また、相手が集団であることから、和解交渉案もまとまりにくい。この場合、会社としては仲裁委員と十分に意思疎通を図り、案件は個別なものであり、証拠も質的に異なること等を説明し、できる限り合同審理を避けることである。
5.相手方弁護士の背景に注意
ストライキ案件において労働者を弁護する弁護士は、現地工会所属の法律顧問であるか、一般の弁護士事務所の弁護士であるかの2通りが考えられる。前者の場合、「会社が手続きに違反した」ことに重点を置いて会社を攻撃してくる。後者であれば、「労働者に規律違反行為はなかった」ことに重点を置く。
従って、労働者側弁護士の背景を知ることで、戦略が調整しやすくなる。
6.政府の態度
これまでも、ストライキの処理に当たって、政府を効果的に活用することが必要であることを述べてきた。仲裁においても政府の態度は仲裁委員の心証に影響する。会社としては、効果的なルートを通じてストライキにより会社が被った経営危害を政府に伝えるべきであり、そうすることで仲裁委員にも一定の影響力を与えることができる。
主執筆:王穏
執筆:毛奕、李飛鵬、呂玉崧、齋藤彰
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