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対中貿易:進む日本の地位低下

中国ビジネスレポート 金融・貿易
馬 成三

馬 成三

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2005年12月6日

< 金融・貿易 >

対中貿易:進む日本の地位低下

馬 成三

●中国貿易に占める対日貿易の割合がさらに低下

 長い間、中国にとって、日本は最大の貿易相手国(輸出入合計)となり続けていた。改革開放政策が導入された以前の1970年代後半から1990年代初めにかけて、中国貿易総額に占める対日貿易の割合は平均で4分の1前後、ピークだった1985年には3割にも達した。

 1990年代以降、日中貿易は大きな発展を見せたものの、中国貿易全体の伸び率には及ばなかったため、中国貿易における日本の地位はむしろ低下傾向を示している。2004年、中国貿易総額に占める対日貿易の割合は14.5%と、ピークだった1980年代半ばの半分以下となり、中国の最大貿易パートナーの座もEUに取って代われ、中国の貿易パートナーとして、日本はEUと米国に次ぐ第3位に転落した。

 2005年に入ってから、中国貿易総額に占める日中貿易の割合はさらに低下している。中国税関によると、2005年1〜10月、中国貿易全体は前年同期比24%も増加し、EU、米国、韓国との貿易がいずれも高い伸び率を示したのに対して、対日貿易は同10.3%増にとどまった。

 これを反映して、中国貿易総額に占める対EU貿易と対米貿易の割合は、前年(通年)のそれより上昇または横ばいとなっているのに対して、対日貿易の割合は13%と前年(通年)比1.5ポイントも低下した。中国貿易に占める対日貿易の割合を、対日輸出と対日輸入にわけてみると、両方とも低下をみせている。

 中でも中国の対日輸入(日本の対中輸出)は、前年同期比4.9%しか伸びず、中国の輸入全体のそれ(同16.7%増)を大きく下回り、中国輸入全体に占める対日輸入の割合も15.2%と前年(通年)のそれより1.6ポイント低下した。

●日中貿易の相互依存度の差が一段と拡大

 長い間、中国貿易に占める対日貿易の割合は、日本貿易に占める対中貿易の割合を大きく上回っていたが、1990年代以降、その差が急速に縮小し、2004年には両者はついに逆転した。つまり日本貿易に占める対中貿易の割合は、中国貿易に占める対日貿易の割合を超えたのである。

 2005年に入ってから、この傾向はさらに顕著となった。財務省貿易統計によると、2005年1〜9月の日本貿易に占める対中貿易の割合(対香港貿易を含まない)は、前年(通年)の16.5%から16.8%へと上昇し、同期間の中国貿易に占める対日貿易の割合より3.7ポイントも高い数字を示した。

 2004年に対香港貿易を含む日本の対中貿易は、はじめて対米貿易を超えたが、2005年1〜9月には日本貿易に占める対米貿易の割合が前年(通年)の18.6%から17.9%に低下したのに対して、対香港貿易を含む対中貿易の割合が同20.1%から20.2%へと小幅ながら上昇したため、日本貿易における中国のプレゼンスは一段と上昇したのである。


中国貿易に占める主要相手国・地域の割合(単位:%)

国・地域
輸出入総額
中国の輸出
中国の輸入
  05年 04年 03年 05年 04年 03年 05年 04年 03年
1.EU 15.3 15.4 14.7 18.9 18.1 16.5 11.2 12.5 12.9
2.米国 15 14.7 14.8 21.6 21.1 21.1 7.4 8 8.2
3.日本 13 14.5 15.7 11.2 12.4 13.6 15.2 16.8 18
4.香港 9.3 9.8 10.3 15.8 17 17.4 1.9 2.1 2.7
5.ASEAN 9.2 9.2 9.2 7.3 7.2 7.1 11.3 11.2 11.5
6.韓国 7.9 7.8 7.4 4.7 4.7 4.6 11.7 11.1 10.4
7.台湾 6.3 6.8 6.9 2.2 2.3 2.1 11.2 11.5 12

注:2005年の数字は1〜10月。
資料:中国税関統計。

●注目される米国・EU・韓国の対中貿易動向

 中国貿易に占める日本の地位低下をもたらす最大の背景は、中国市場を巡る競争の激化とされているが、日本の主要な競争相手である米国、EUと韓国の対中貿易はいずれも拡大基調を見せているのが実状である。

 米国:2005年1〜10月、中国貿易に占める米国の割合は、前年通年の14.7%から15%へと上昇したが、これをもたらした最大の要因は、中国の対米輸出の急増にほかならない。そのため、中国の対米貿易黒字(中国側の統計)は約928億ドルと、前年同期比47%も拡大した。

 これを前にして、米国は中国に対して人民元の切り上げや対米繊維製品輸出の抑制のほか、対米輸入の拡大も求めている。米国からの「圧力」もあった、中国政府はさる7月に人民元の切り上げを実行したと同時に、米国からの輸入を拡大する姿勢も示している。米通商代表部(USTR)のバーティア次席代表によると、米中貿易不均衡問題の解決に向け、中国は米国製品の輸入を拡大する意向を表明したという(ロイター、2005年11月22日)。

 さる20日11月20日、ブッシュ米大統領の訪中に合わせた形で、中国航空器材輸出入集団公司は米航空機大手ボーイングから「737−700型」と「737−800型」旅客機を計70機購入する契約を締結したのがその端的表れである。米ボーイング社によると、今回の契約を含めて、中国は同社から合わせて150機購入する計画である。

 EU:昨年、中国の最大の貿易パートナーに浮上したEU諸国は、対中貿易と対中投資に対して強い意欲を示している。さる11月上旬、胡錦濤国家主席は英国、ドイツとスペインなどを歴訪し、二国間貿易・投資・技術協力に関する多数の協定に調印した。その直後、ドイツの重電大手企業・シーメンスは中国が進めている高速鉄道計画の一環として導入する予定の高速化用車両100編成(計800両)のうち60編成分を受注した。

 中国の報道によると、中国鉄道省、唐山機関車車輌工場とシーメンス社との契約の金額は6.69億ユーロ(約937億円)に上り、シーメンス社が唐山機関車車輌工場に高速鉄道用電車関係の重要技術を含む多数の技術を移転するという。2008―09年12月に引き渡されるこれらの車輌は、まず北京-天津間の高速鉄道に使用され、その後、上海-南京、武漢-広州などの高速鉄道にも導入される可能性がある。

 中国の「中長期鉄道網企画」によると、今後15年間の間、1万2000キロメートルの高速客運鉄道を建設することとなっているが、これを大きなビジネスチャンスとして、フランスのTGV技術、ドイツのICE技術と日本の新幹線は激しい競争を展開している。今度のシーメンス社が発注を獲得したことは、日本企業のビジネスチャンスにどのような影響を及ぼすかが注目される。

 韓国:日本にとって、韓国も中国市場における無視できないライバルとなっている。近年韓国の対中輸出は日本のそれより遥かに高い伸び率を示しており、2003年より中国が米国を抜いて韓国の最大の輸出先となった。現在、韓国も官民一体で対中経済関係の強化に取り組んでいる。

 さる11月16日、韓国訪問中の胡錦濤主席と盧武鉉・韓国大統領は、ソウルの青瓦台(大統領官邸)で会談し、2003年に合意した経済、国防、安全保障、人的交流など「全面的協力パートナー関係」を拡大することで合意した。会談後発表された「中韓共同声明」によると、両首脳は国交樹立20周年の2010年までに両国間の貿易規模を現在の約2倍の2000億ドルとする目標を提起したほか、韓国が中国を市場経済国と認め、FTA締結に向けた民間共同研究を推進することでも合意した。

 以上の諸動向から考えると、今後中国貿易に占める日本の地位は、さらに低下していく可能性が相当高いと認めなければならない。

(05年12月記・3,133字)
静岡文化芸術大学
文化政策学部教授馬成三

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