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ログイン2004年7月19日
<金融・貿易>
日本の特殊出生率が1.29と史上最低の水準を更新し、2006年をピークに人口減に転じると予測されているなか、世界の「人口大国」としての中国、インド、ロシア、ブラジルの経済への期待は高まっている。
米ゴールドマンサックス社は、これらの国々を「BRICs」(四つの国々の頭文字を取って組み合わせたもの)と命名し、2050年にはこの四つの国々が「世界6強」に入り、うち中国は2039年に米国を、インドは30年以内に日本 を抜き、それぞれ世界第1位と世界第3位の「経済大国」になるとの試算を出している。
今年6月のシーアイランド・サミットで来年以降のサミットに中国、インドを招請する構想が浮上し、終了後の記者会見で中国とインドなど「世界経済に大きな影響を持つ国との対話なしに、サミットの討議を進めることは意味がなく、G9とかG10にする必要がある」(イタリアのベルルスコーニ首相)との意見も出ている。
当の中国とインドは、政治関係の改善とともに貿易関係も大きな発展を見せている。中国側の統計では、1990〜2003年の間、中印貿易額(輸出入合計)は29倍にも拡大し、今年1〜5月には前年同期比約9割も増加した。インドにとって、中国との貿易規模はすでに2002年から日本とのそれを超えている。中印両国とも貿易をはじめ経済関係の強化に強い意欲を示し、2015年までの実現を目指して、中印自由貿易圏の創設も提案されている。
1.中印貿易の急拡大
1980年までの20年間、両国の外交関係及び国内経済政策を反映して、中印貿易は小幅な伸びしか示さなかった。中でも1965〜1976年の12年間、中国とインドは直接貿易の中断も経験した。
しかし、1980年代に入ってから、中国における改革開放政策の実行や両国の外交関係の改善を背景に、中印貿易は急速な拡大を見せている。中国税関の統計によると、1980年から2003年にかけて、中印貿易額は往復で1億ドル未満から76億ドルへと、83倍にも拡大した。(表1)。
1990年代に入ってから中印貿易の拡大は目を見張るものがあった。1990〜2003年の間、中国貿易全体は7倍に拡大したのに対して、対インド貿易は約29倍に膨れ上がった(表2)。年平均伸び率では、中国貿易全体は16.6%だったのに対して、対インド貿易は29.5%にも達し、21世紀初頭の3年間(2001〜03年)は37.6%の高率を記録した。2003年の中印貿易額は往復で76億ドル、うち中国の輸出は33億ドル、対インド輸入額は43億ドルとなっている。
1990年以降の中印貿易を、中国側の輸出と同輸入にわけてみると、中国の対インド輸入は対インド輸出より高い伸びを示したのが注目される。中国税関によると、1990〜2003年、中国の対インド輸出は20倍に拡大したのに対して、同輸入は44倍にも拡大した(表2)。1980年代半ば以来、中印貿易において中国側は出超を続けてきたが、対インド輸入の急増を受けて、2003年には中国側は9億ドルの入超に転じた(今年1〜5月の対インド入超は17.1億ドル)。
中印貿易の発展は、中国貿易全体に占める対インド貿易のシェアの変化にも現れている。1980年に0.2%しかなかった対インド貿易のシェア(輸出入合計)は、2003年には前者の4.5倍にあたる0.9%へと上昇した(表1)。2004年1〜5月、中印貿易は往復で前年同期比88%増、うち中国の対インド輸入は112%増という高い伸びを示した。これを受けて、中国貿易に占める対インド貿易のシェアは、輸出入合計で1.3%に上昇し、うち対インド輸入のシェアは1.7%へと、カナダを抜いてベスト10に入った。
他方、インドの貿易相手として、中国はまだ米国とEUには及ばないものの、アジア諸国・地域の中ですでに日本を抜き、ASEAN諸国に次ぐ重要な貿易パートナーに浮上している。インド商工省によると、1996〜2002年の間、インドの輸出と輸入に占める日本のシェアはそれぞれ6.0%、5.6%から3.5%、3.0%へと低下したのに対して、中国のそれは1.8%、1.9%から3.8%、4.5%へと上昇した(表3)。もし中国への中継貿易地である香港向けの輸出を入れると、インド輸出に占める対中輸出は1割近くを占めるようになったとみられる。
表1 中国・インドの貿易額の推移(単位:億米ドル)
輸出入合計
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中国輸出
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中国輸入
|
|
1980年 | 0.92(0.2) | 0.38(0.2) | 0.54(0.3) |
1985年 | 1.24(0.2) | 0.85(0.3) | 0.39(0.1) |
1990年 | 2.64(0.2) | 1.67(0.3) | 0.97(0.2) |
1995年 | 11.63(0.4) | 7.65(0.5) | 3.98(0.3) |
2000年 | 29.14(0.6) | 15.61(0.6) | 13.53(0.6) |
2001年 | 35.96(0.7) | 18.96(0.7) | 17.00(0.7) |
2002年 | 49.46(0.8) | 26.72(0.8) | 22.74(0.8) |
2003年 | 75.95(0.9) | 33.44(0.8) | 42.52(1.0) |
2004年1-5月 | 54.47(1.3) | 18.69(0.9) | 35.79(1.7) |
注:カッコは中国貿易全体に占めるシェア(%)。
資料:中国税関統計。 |
表2 中国・インド貿易額の伸び率の推移(単位:%)
年度
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輸出入合計
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中国輸出
|
中国輸入
|
1990-00年 | 27.1(15.2) | 25.0(14.9) | 30.1(15.5) |
2001年 | 23.4(7.5) | 21.5(6.8) | 25.6(8.2) |
2002年 | 37.6(21.8) | 40.9(22.3) | 33.8(21.2) |
2003年 | 53.6(37.1) | 25.2(34.6) | 87.0(39.9) |
2004年1-5月 | 87.9(37.1) | 45.5(33.4) | 121.5(41.0) |
2003/1990(倍数) | 28.8倍(7.4倍) | 20.0倍(7.1倍) | 43.8倍(7.7倍) |
注:伸び率は前年比伸び率、1990〜2000年は年平均伸び率。
カッコは中国貿易全体(対世界)の数字。 2003/1990は、2003年の貿易額の1990年に対する倍数。 資料:中国税関統計。 |
表3 インド貿易の国別・地域構成の推移(単位:%)
1996
|
2000
|
2001
|
2002
|
|||||
輸出 | 輸入 | 輸出 | 輸入 | 輸出 | 輸入 | 輸出 | 輸入 | |
中国 | 1.8 | 1.9 | 1.9 | 3 | 2.2 | 4 | 3.8 | 4.5 |
日本 | 6 | 5.6 | 4 | 3.6 | 3.4 | 4.2 | 3.5 | 3 |
香港 | 5.6 | 0.8 | 5.9 | 1.7 | 5.4 | 1.4 | 5 | 1.6 |
韓国 | 0 | 2.3 | 1 | 1.8 | 1.1 | 2.2 | 1.2 | 2.5 |
ASEAN | 8.7 | 7.5 | 6.5 | 8.2 | 7.9 | 8.5 | 8.8 | 8.4 |
米国 | 19.6 | 9.2 | 20.9 | 6 | 19.4 | 6.1 | 20.7 | 7.2 |
EU | 25.9 | 26.5 | 23.4 | 20.8 | 22.5 | 20.3 | 21.9 | 20.4 |
世界 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
注:カッコは全体に占めるシェア(%)。
資料:インド商工省。 |
2.変化する商品構成
1990年代以降、中印貿易の商品構成、特に中国の対インド輸出の商品構成も大きく変わっている。1990年代初め、中国の対インド輸出に占める一次製品のシェアはまだ半分近くもあったが、2002年のそれはすでに2割未満まで低下した。これに対して、工業製品のシェアは、同5割強から8割強へと上昇した。
中国の対インド輸出商品のうち、最も高い伸び率を示したのは、機械類にほかならない。1991年に中国の対インド輸出において6%しか占めなかった機械類のシェアは、2002年には約3割へと上昇し、機械類がすでに従来の生糸や化学製品に取って代わって、中国の最大の対インド輸出商品となった。
中国の対インド輸入においても工業製品のシェア上昇という構造変化を見せている。1990年代はじめ、対インド輸入の7割以上を占めた一次製品のシェアは、2002年には4割までに低下した。つまり、中国の対インド輸入商品構成は一次製品を中心とするものから、工業製品を中心とするものへと変化したのである。
しかし、中国貿易全体の商品構成と比べると、対インド貿易には輸出と輸入とも一次製品のシェアが高いという特徴がみられる。1980年代後半以降、中国の輸出商品構成は、一次製品を中心とするものから、工業製品を中心とするものへと急速にシフトし、1985年に中国輸出の50.6%を占めた一次製品のシェアは2002年には1割を割って8.7%に低下した。これに対して、対インド輸出に占める一次製品のシェアは前者の2倍にあたる約2割となっているのが現状である。
中国の輸入全体と比べて、対インド輸入に占める一次製品のシェアも際立って高い。2002年には中国の輸入全体に占める同シェアは16.7%だったのに対して、対インド輸入でのシェアは40%と、前者の3倍にあたる数字を示している。鉄鉱石、クロム鉱石、綿花、宝石など一次製品が対インドの主要な輸入商品となり、うち鉄鉱石とクロム鉱石を含む鉱産物(2.28億ドル)、綿花(1.56億ドル)と宝石・貴金属(1.05億ドル)はいずれも1億ドルを超えている。
3.中印貿易の展望と課題
ここ20数年来、特に1990年代以降、中印貿易は大きな発展を見せているものの、幾つかの問題の存在も否めない。
一つは、両国の経済規模からみれば、二国間の貿易規模はまだ小さいことである。世界銀行によると、中国とインドの経済規模(GDP)は、それぞれ世界の第6位と第12位にランクされているが、2国間貿易規模では中国とASEAN諸国の多くよりも小さいのが現状である。2003年の数字を取ってみると、中国貿易全体に占める中印貿易のシェア(輸出入合計)は、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンのそれを下回り、1950年代初めの中印貿易のシェア(2.6%)にも達していない。
二つ目は、中国からみれば、インド側には貿易保護主義傾向が強く、中国製品を対象とするアンチダンピング(AD)など差別的措置(非関税障壁)が多く取られていることである。中でもインドのAD措置など非関税障壁に対する中国側の不満は強いものがある。2003年末現在、インドが中国商品を対象とするAD提訴案件は71件に達し、発展途上国の中で最も多く対中提訴をしている国に属している。
中国商務省が発表した『国別貿易投資環境報告2004』(日本の経済産業省の『公正取引報告書』にあたるもの)によると、2002年にインドが中国製品を対象とするAD調査案件は16件、その影響を受ける商品は6400万ドル、2003年の同調査案件は6件、その影響を受ける商品は2830万ドルに達している。
中国の対インド輸出を阻害する要因として、インドの高関税、関税割当制度、選択関税制度(重量税と従価税の選択)、通関手続き障壁、衛生・植物検査措置なども挙げられている。商務省の『国別貿易投資環境報告2004』によると、インドの高関税によって、中国の家電、二輪車及び同部品、大蒜などの対インド輸出が大きな影響を受けている。
しかし、中印両国の経済発展の潜在力や、両国政府が両国の経済交流、特に貿易の拡大に強い意欲を示していることから、中長期的には中印貿易はますます拡大していくものと予想される。2003年6月、バジパイ・インド首相(当時)の訪中を受けて、両国は経済・技術交流拡大に向けた9つの合意文書に調印した。温家宝首相はインド首相との会談で、2005年には中印貿易規模(輸出入合計)を、2002年の2倍にあたる100億ドルに拡大するとの目標を打ち出した。
2003年の実績からみると、上記の目標は超過達成する可能性が高い。中国商務省に所属するシンクタンク(国際貿易経済協力研究院)の予測では、中印貿易総額は2005年に105億ドル、2010年には290億ドルを超える見込みである。今年1〜5月の中印貿易額はすでに54億ドルに達したことから、今年通年のそれは100億ドルを超えるのが確実となろう。
中印貿易の発展にプラスになる要因に中印2国間のFTAの締結に関する動向がある。中国とインドは2国間の自由貿易協定の締結に向けた交渉に関する合意はまだ出来ていないが、両国が共同関与している地域経済協力はすでにスタートしている。
その一つは、バンコク協定である。1976年に発足した同協定には、インド、韓国、スリランカ、バングラデシュ、ラオス、ブータンなど初期メンバーのほか、中国も2001年5月から加盟している。
中印両国は同枠組みの市場開放計画の一環として、関税の引き下げなどを進めており、2003年2月に最恵国待遇より低い関税率の相互適用に合意した。これにより、中国はインドの輸出品217品目、インドは中国の輸出品182品目の関税を、それぞれ引き下げることになる。2003年6月に開催された中印首相会談で、双方は適当な措置をとって貿易と投資に関する障害を取り除くことを確認した。
中国とインドはFTA締結の交渉などASEAN諸国との関係の強化に取り組んでいる。双方ともASEANと「包括的経済協力の枠組みに関する合意」に調印し、10年以内の実現を目指して、FTA計画を進めている。2002年11月、両国は日本に先駆けて、ともにASEANの基本条約である東南アジア友好協力条約に署名した。
中印双方は二国間のFTA締結にも意欲を示している。中国国際貿易経済協力研究院は最近、2015年までの実現を目指すべく、中印自由貿易区を設立することを提案している。
同提案では、中印自由貿易区構想は、IT産業、農業、観光、人的資源開発、技術移転や中小企業間の協力などを含むべきである、としている。中印両国が合計で約24億の人口、1兆7000億ドルのGDPと7000億ドル以上の貿易額を持っているだけに、両国の自由貿易区の誕生は両国だけでなく、アジア経済にも大きな影響を及ぼすものとされている。
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