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今年第1四半期の中国貿易の変化

中国ビジネスレポート 金融・貿易
馬 成三

馬 成三

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2005年4月17日

<金融・貿易>

今年第1四半期の中国貿易の変化

輸入の伸び率の低下と対日貿易の比重縮小

馬 成三

一時減少に陥った輸入

WTO加盟を受けて、中国貿易は急拡大を続けてきた。中国税関によると、2004年中国の貿易総額(輸出入合計)は1兆1548億ドルと、WTO加盟を果たした2001年(5097億ドル)の2倍以上に膨れ上がり、年平均伸び率で31%に達した。

うち中国の輸入が輸出より高い伸び率を示し、2003年より英国、日本とフランスのそれを抜き、中国は米国とドイツに次ぐ第3の輸入大国に浮上した。2004年には中国政府が経済過熱を抑えるための経済調整に乗り出したにもかかわらず、中国の輸入は5617億ドルと前年比36%も増加した。

しかし、今年に入ってから中国貿易には新しい変化が生じた。その一つは、輸入の伸び率が大幅に低下したことである。中国税関によると、今年第1四半期における中国貿易総額は前年同期比23.1%増の2,952億ドル、うち輸出は同34.9%増の1,558.9億ドル、輸入は12.2%増の1,393.1億ドルとなっている。

前年同期比伸び率からみると、輸出は前年通年のそれと変わらない率を維持しているのに対して、輸入は前年通年のそれより約24ポイントも低下した。中でも季節要因(春節)もあって、2月にはマイナス成長(前年同期比5%減)に転じた。

前年に大幅な伸びを見せた原油や鋼材の輸入はいずれも減少に転じた(原油の輸入量は1.7%減、鋼材は40.8%減)。保税制度の調整による影響もあって、自動車輸入台数の前年同期減少幅は5割も超えた。機械設備や鉄鉱石の輸入は増勢を維持しているものの、同伸び率が大幅に低下した。うち、機械設備の前年同期比伸び率は4.8%と5%も割った。


注目される内需の変化

輸入の伸びの低下をもたらした要因として、まず固定資産投資の減速など内需の変化が挙げられている。昨年、中国の固定資産投資は前年比53%も増加したが、今年に入ってから依然として高い伸び率(1〜2月は前年同期比24.5%増)を示したものの、前年通年のそれより半分以下に低下したのが事実である。また昨年における原油など一次産品の在庫増加も今年の一次産品の輸入減少または低迷に影響を及ぼしているとみられる。

輸出の堅調と輸入の伸び率低下は為替レートとの関係も指摘されている。米ドルとリンクしている人民元の対ユーロと対円レートの下落は、これらの地域に対する輸出の競争力を高めている一方、同輸入を抑制する働きもしているようである。

しかし、国家統計局をはじめ、中国の政府機関と主要なシンクタンクからは、中国国内の需要全体は依然堅調に推移していくだろうとの指摘が多い。その理由として、以下のものが挙げられている。

  1. 中国経済は今年にも高い成長率を維持することができること(アジア開発銀行の予測では今年中国の成長率は8.5%)。
  2. 固定資産投資の伸び率は低下したものの、依然として高い数字を示していること。
  3. 社会消費財小売額の前年比伸び率は上昇傾向にあること(今年1月〜2月は前年同期比11.7%増、前年同期のそれより2.6ポイントも高い)。
また関税引き下げなど市場開放のさらなる推進、「世界の工場」としての地位の向上、加工貿易や外資系企業の輸入の増加など要因から考えれば、今年の中国の輸入の伸び率は依然として二桁の伸びを維持することができると予想される。

しかし、輸出と比べて、輸入の伸び率の低下は避けられないとみられる。昨年第1四半期の中国貿易は68億ドルの入超を出したが、今年第1四半期には165億ドルの出超に転じた。この傾向が続いていけば、今年通年の中国の貿易黒字は昨年より一層拡大する可能性が高い。

低下のとまらない対日貿易の比重

中国の改革開放は1970年代末に始まったが、その以前にも日本と密接な貿易関係を結んでいた。日中国交回復を実現させた1972年時点で、日本はすでに中国の最大の貿易相手国となり、同年の中国貿易総額において16.5%のシェアを占めていた。中国が改革開放政策をスタートさせた1978年には中国貿易総額に占める対日貿易のシェアは23.4%と、約4分の1に達した。

1990年代後半以降、中国市場を巡る競争の激化を反映して、中国貿易に占める対日貿易のシェアは低下し続けている。2004年には中国貿易総額に占める対日貿易の比重は、前年比1.2ポイントも低い14.5%と、ピークだった1980年代半ばの半分以下となった。日本は中国の最大貿易パートナーだった座もEUに取って代われ、中国の貿易パートナーとして、EUと米国に次ぐ第3位に転落した。

今年第1四半期にはEUと米国の対中貿易総額はそれぞれ前年同期比26%増(471.1億ドル)と24.3%増(436.2億ドル)だったのに対して、日本のそれは12%増(412.4億ドル)と、中国貿易全体の伸び率の約半分にとどまっている。そのため、中国貿易全体に占めるEUと米国の比重は、前年(通年)の15.4%と14.7%から16.0%と14.8%へと上昇したのに対して、日本のそれは同14.5%から14%へと、0.5ポイント低下した。

14%というシェアは、「天安門事件」(1989年6月)の影響で日中貿易が大幅な減少を示した1990年の水準(14.4%)をも下回っており、日中貿易史上、1970年代以降の最低の数字となっている。最近の日中関係や欧米諸国、韓国など中国市場への攻勢の強化などから判断して、今年通年でも日本の比重低下は続いていくものとみられる。

表1 中国貿易額の推移(単位:億ドル)

  貿易総額 輸出額 輸入額
2001年 5,096.5(7.5) 2,661.0(6.8) 2,435.5(8.2)
2002年 6,207.7(21.8) 3,256.0(22.3) 2,951.7(21.2)
2003年 8,509.9(37.1) 4,382.3(34.6) 4,127.6(39.9)
2004年 11,547.9(35.7) 5,933.7(35.4) 5,614.2(36.0)
2005年第1四半期 2,952.0(23.1) 1,558.9(34.9) 1,393.1(12.2)
1月 950.6(33.1) 507.8(42.2) 442.9(24.0)
2月 844.5 (11.0) 445.3(30.8) 399.2(-5.0)
3月 1,160.1(25.6) 608.7(32.8) 551.4(18.6)

資料:中国税関統計。

表2 中国貿易総額に占める日米欧の比重の変化(単位:%)

国・地域 2003年 2004年 2005年
日本 15.7(1) 14.5(3) 14.0(3)
米国 14.8(2) 14.7(2) 14.8(2)
EU 14.7(3) 15.4(1) 16.0(1)

注:カッコ内は順位、2005年は第1四半期の数字。
資料:中国税関統計。

(05年4月記・2,822字)
静岡文化芸術大学
文化政策学部教授馬成三

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