こんにちわ、ゲストさん
ログイン2006年5月24日
<金融・貿易>
世界貿易の第2位に迫る中国貿易
中国税関の発表によると、中国貿易額は2004年にはじめて1兆ドルを突破した後、2005年には前年比23.2%増の1兆4221億ドルに達し、WTO加盟を果たした2001年(5097億ドル)の2.8倍にあたる。輸出と輸入をわけてみると、輸出は前年比28.4%増の7620億ドル、輸入は同17.6%増の6601億ドルとなっている(表1)。
WTO加盟以降、中国貿易は4年間連続で20%以上の高成長を維持し、WTOに加盟した2001年に世界第6位だった中国の貿易規模が、2003年にフランスを抜き、世界第4位となったのに続き、2004年にはさらに日本を超え、世界第3位に浮上した。
WTOの発表(2006年4月)では、2005年の世界貿易における中国の順位は2004年とは変わらないが、世界の輸出と輸入に占める中国のシェアではそれぞれ前年の6.5%と5.9%から7.3%と6.1%へと上昇し、輸出第2位の米国(第1位はドイツ)と輸入第2位のドイツ(第1位は米国)との差を縮めている(表2)。
表1 2000年以来の中国貿易額の推移(単位:億ドル)
|
輸出入合計 |
輸出 |
輸入 |
バランス |
2000年 |
4,742..9(31.5) |
2,492.0(27.8) |
2,250.9(35.8) |
241.1 |
2001年 |
5,096.5(7.5) |
2,661.0(6.8) |
2,435.5(8.2) |
225.5 |
2002年 |
6,207.7(21.8) |
3,256.0(22.3) |
2,951.7(21.2) |
304.3 |
2003年 |
8,509.9(37.1) |
4,382.3(34.6) |
4,127.6(39.9) |
254.7 |
2004年 |
11,545.5(35.7) |
5,933.2(35.4) |
5,612.3(36.0) |
320.9 |
2005年 |
14,221.8(23.2) |
7,620.0(28.4) |
6,601.2(17.6) |
1,018.8 |
2006年 |
5147.2(24.0) |
2742.4(25.8) |
2404.8(22.1) |
337.6 |
注:カッコは前年比伸び率(%)。2006年は1〜4月。
資料:中国税関統計。
表2 2005年世界貿易額のランキング(単位:億ドル)
|
輸出入合計 |
輸出 |
輸入 |
|||
順位 |
金額 |
順位 |
金額 |
順位 |
金額 |
|
総額 |
|
211,462 |
|
103,931 |
|
107,531 |
米国 |
1 |
26,370 |
2 |
9,043 |
1 |
17,327 |
ドイツ |
2 |
17,448 |
1 |
9,707 |
2 |
7,741 |
中国 |
3 |
14,221 |
3 |
7,620 |
3 |
6,601 |
日本 |
4 |
11,119 |
4 |
5,958 |
4 |
5,161 |
フランス |
5 |
9,550 |
5 |
4,592 |
6 |
4,958 |
英国 |
6 |
8,791 |
7 |
3,779 |
5 |
5,012 |
オランダ |
7 |
7,592 |
6 |
4,013 |
8 |
3,579 |
イタリア |
8 |
7,465 |
8 |
3,668 |
7 |
3,797 |
カナダ |
9 |
6,797 |
9 |
3,596 |
10 |
3,201 |
ベルギー |
10 |
6,500 |
10 |
3,296 |
9 |
3,204 |
資料:WTO(世界貿易機関)。
2006年に入ってから中国貿易は依然として高い伸び率を維持している。中国税関によると、1〜4月の貿易総額は前年同期比24%増の5147.2億ドル、うち輸出額は同25.8%増の2742.4億ドル、輸入額は22.1%増の2404.8億ドルに達している。
中国商務省のシンクタンクである国際貿易経済協力研究院は、WTO加盟後、4年連続で高い伸び率を示した中国の輸出が国際市場の需要や貿易保護主義の影響で2006年には伸び率が低下し、貿易総額も前年比15%前後増の1兆6000億ドルになるとの予測を出しているが、1〜4月の実績からみると、前年比20%前後増の1兆7000億ドルになる可能性も出ている。
昨年(2005年)、輸出入合計で世界第2位を占めるドイツの貿易総額は1兆7448億ドルとなっているが、もし中国の貿易総額は今後3年間で15%前後の伸びを維持することができれば、遅くとも2008年にはドイツを抜き、世界2位に躍進する見込みである。
輸出商品構成の改善は進んでいるが、外資系企業への依存度は依然高い
改革開放以降、中国の産業構造の変化、企業競争力の増強を背景に、中国の機械電子製品輸出は一貫して輸出全体より高い伸び率を示してきた。2005年の機械電子製品は4267.5億ドル、前年比伸び率で輸出全体のそれより3.6ポイントも高い32%増、輸出総額に占める同割合も56%と前年より1.5ポイントも上昇した。うちハイテク製品輸出は前年比31.8%増の2182.5億ドル、輸出全体に占める割合も28.6%と3割に迫っている。
中国政府は第10次5ヵ年計画(2001〜05年)で、輸出製品の高付加価値化を強調し、2005年には輸出総額に占める機械電子製品の比率を50%前後、ハイテク製品の比率を20%に引き上げるという目標を打ち出したが、実行の結果、この二つの目標はいずれ超過達成した。
EUや米国の輸入制限があったにも関わらず、繊維製品の輸出は依然好調で、うち服装輸出は前年比約2割増、紡績糸・織物及びその製品は同22.9%増、靴類は25.3%増となっている。これは、中国国内市場の供給過剰と、それによる輸出圧力の増大を反映している同時に、諸外国の輸入制限の効果が限られていることをも物語っている。
今年に入ってから機械電子製品・ハイテク製品輸出の伸び率は引き続き輸出全体より高い伸び率を示し続けている。中国税関によると、1〜4月には機械電子製品の輸出は前年同期比で32.7%も増加し、輸出総額に占めるシェアでは約58%と史上最高の水準に達した。なかでもハイテク輸出額は前年比34.4%増の812.4億ドルに達し、輸出全体に占める同シェアも29.6%に上昇した。
中国貿易の拡大と輸出商品構成の改善をもたらした要因に、加工貿易方式の導入、外資導入と貿易との相互促進的なメカニズムの形成がある。うち海外から原材料や中間財を利用し、中国国内で加工してから再輸出という「加工貿易」の伸びは目を見張るものがあり、中国貿易拡大の牽引車とされている。他方、外国からの直接投資受入れの拡大は、機械・設備と部品など中間財輸入と製品輸出の増加を通じて、輸入と輸出の両方の拡大に寄与している。
2005年中国貿易を一般貿易と加工貿易にわけてみると、一般貿易より加工貿易の伸び率が高い。輸出では両者の伸び率はあまり変わらないが、輸入では加工貿易の伸び率(前年比23.6%増)は一般貿易(同12.7%増)より約11ポイントも高く、貿易全体に占める加工貿易の割合は輸出入合計で約6割、うち輸出は57%、輸入は約58%に達している。2006年1〜4月、一般貿易の伸び率は上昇傾向(前年同期比22.1%増)を示したものの、依然として加工貿易のそれ(同24.9%増)を下回っている。
貿易主体からみれば、外資系企業は輸出と輸入との両方において中国貿易全体より高い伸び率を示し、うち外資系企業輸出は前年比31.2%増、同輸入は19.4%増となっている。そのため、中国の輸出と輸入に占める外資系企業貿易の割合はそれぞれ前年の57.1%と57.8%から58.3%と58.7%へと上昇した。
外資系企業の輸出には機械電子製品・ハイテク製品が高い比率を占めているという特徴があるだけに、外資系企業による輸出の拡大は、中国輸出の規模増大だけでなく、輸出商品構成の改善にも大きく貢献している。第11次5ヵ年計画(2006〜10年)は輸出での「自主ブランド」の確立を提唱しているが、加工貿易や外資系企業への依存はまだ続けているのが現状である。
貿易黒字がはじめて1000億ドル超
2005年中国の輸入は世界平均または主要国より遥かに高い伸び率を示したものの、輸出の伸び率が輸入を約11ポイントも高かったため、貿易黒字は史上最高の1019億ドルと、はじめて1000億ドルを超えた。
これまでの最高記録は、アジア通貨危機の影響などで輸入が減少に転じた1998年の434億ドルであったが、2005年の黒字規模は1989年の2.3倍、2004年(321億ドル)の3倍に膨れ上がり、日本を超え、世界で最大規模の黒字となった。
中国にとって、2005年は第10次5ヵ年計画の最後の年であると同時に、WTOへの約束のほとんどを履行しなければならない年でもある。中国のWTO加盟前後、WTO加盟の影響及び中国経済の将来を予測する本やレポートは多く出されているが、その一つに日本で一時ベストセラーとなった『やがて中国の崩壊がはじまる』(2001年草思社)がある。
著者の米国籍中国系人であるゴードン・チャン(章家敦)の予測では、WTO加盟を受け手、中国の貿易収支は大幅な赤字に転落し、それに伴い人民元も急落する(同書の中国語版の前書き、台湾雅言文化出版、2002年3月)。中国の貿易黒字の急拡大と人民元切り上げ圧力の増大という現実を目にして、ゴードン・チャン氏の予測は大外れしかいえず、「WTO加盟から5年以内に中国の一党独裁体制は終焉を迎える」という氏の大予測も妄言になりそうである。
他方、貿易黒字の急拡大は、中国に多くの難題をもたらしているのも事実である。対外貿易摩擦の多発と人民元切り上げ圧力の増強がそれである。昨年(2005年)、繊維品輸出を巡り、中国と米国、EUとの間で何回もの交渉を行い、最後に中国が輸出の自主規制の実行を約束したことなどで米国とEUによるAD発動を避けることができた。
日本を含む先進国、なかでも米国の強い要請で、中国政府は昨年7月に人民元レートを対ドルで2%切り上げたと同時に、人民元為替レートの形成メカニズムの改革を約束したが、貿易黒字の拡大で米国やEUとの貿易摩擦が再激化し、人民元の切り上げ圧力も強まりかねない。
中国政府は対米関係への配慮から対米貿易黒字の削減に力を入れている。今年(2006年)4月、呉儀副首相は胡錦濤主席の米国訪問を順調なものにすべく、中国企業111社の代表者ら202人を率いて、米国を訪問し、米国側からボーイング737型機80機購入(46億ドル)を含め、電子機器やコンピュータソフトなど総額162億ドルの商品を購入する契約を交わしたのがその表れである。
第11次5ヵ年計画も輸入の拡大と貿易バランスの実現を唱えているが、今年1〜4月の実績からみると、貿易黒字はむしろ拡大している。中国税関によると、1〜4月における中国の貿易黒字は337.6億ドルと、前年同期(209.0億ドル)より128.6億ドルも増加し、うち対米出超は393.3億ドルと、前年同期(302.4億ドル)より3割も拡大した。
米国、EU、ASEAN、韓国との貿易が堅調、対日貿易の伸び率が低い
2005年、中国の貿易パートナーとして、輸出入総額が1000億ドルを超えた国・地域は六つある(EU、米国、日本、香港、ASEAN、韓国)。うちEU、米国との貿易総額はいずれも2000億ドルを超えている。2004年より中国の最大の貿易パートナーに浮上したEUとの貿易は、輸出入合計で前年比22.6%増の2173.1億ドル、2位の米国とのそれは同24.8%増の2116.3億ドルに達している(表3)。
一方、中国の貿易パートナーとして第3位に転落した日本との貿易規模は1844.5億ドル、前年比伸び率では9.9%と中国貿易全体のそれの半分以下にとどまっている。中国貿易に占めるEU、米国の割合は前年と変わらないが、日本の割合は前年の14.6%から13.0%へと、1.6ポイントも低下した。
昨今の日中関係は、「政冷経熱」(政治関係は冷たいが、経済関係は熱い)から「政凍経暖」または「政凍経涼」(政治関係は凍るほど厳しく、経済関係も冷めている)へとシフトしているとの見方があるが、その表われの一つに中国貿易に占める対日貿易の地位低下が挙げられている。
前年比伸び率で高い数字を示した貿易相手には、韓国とASEANもある。なかでも韓国との貿易は輸出入合計で1119億ドルと、はじめて1000億ドルを超えた。うち韓国からの輸入が768億ドルと前年比伸び率で中国輸入総額のそれより5.8ポイントも高い23.4%に達したため、中国の輸入相手として、韓国は2004年の第5位から一挙日本に次ぐ第2位に浮上した。
中国がWTO加盟を果たした2001年に、中国の韓国からの輸入額は日本からのそれより45%も少なかったが、その後両者の差は段々縮小し、2005年には前者は後者の約8割にあたる規模となった。日本の対中製品輸出のうち、韓国製品との競争にさらされているものも少なくない。
2006年に入ってから中国貿易に占める日本のシェアはさらに低下している。1〜4月にはEU、米国、ASEANと韓国の対中貿易総額は前年同期比それぞれ20.5%増、26.2%増、22%増と19.5%増となっているのに対して、日本のそれは11.5%増と中国貿易総額の伸び率より12.5ポイントも低く、中国貿易に占める日本のシェアも前年(通年)の13%からさらに12.5%へと低下した。
表3 2005年中国の対EU・対米・対日・ASEAN・対韓国貿易(単位:億ドル)
|
輸出入総額 |
中国の輸出 |
中国の輸入 |
EU |
2,173.1(22.6) |
1,437.1(34.1) |
736.0(4.9) |
米国 |
2,116.3(24.8) |
1,629.0(30.4) |
487.3(9.1) |
日本 |
1,844.4(9.9) |
839.9(14.3) |
1,004.5(6.5) |
ASEAN |
1,303.7(23.1) |
553.7(29.1) |
750.0(19.1) |
韓国 |
1,119.3(24.2) |
351.1(26.2) |
768.2(23.4) |
注:カッコは前年比伸び率(%)。
資料:中国税関統計。
有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。
2015年2月12日
2014年12月3日
2014年11月14日
2014年7月28日
2014年7月25日