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変化する中国の輸出環境:対中輸入の価格上昇は避けられない

中国ビジネスレポート 金融・貿易
馬 成三

馬 成三

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2007年9月19日

記事概要

最近、中国製品の価格上昇を招きかねない要因も幾つか出ている。貿易黒字の急増による人民元切り上げ圧力の増大、高成長に伴う大幅な賃上げ及び物価上昇、安全性問題の急浮上に伴う中国製品への検査強化などがそれである。

1990年代後半以降、低賃金と人民元レートの割安などを背景に、多くの中国製品は安さで先進国を含む世界市場を席巻している。安い中国製品の大量供給で、低所得層を中心に米国や日本など消費者に大きな恩恵をもたらしている。

しかし、最近、中国製品の価格上昇を招きかねない要因も幾つか出ている。貿易黒字の急増による人民元切り上げ圧力の増大、高成長に伴う大幅な賃上げ及び物価上昇、安全性問題の急浮上に伴う中国製品への検査強化などがそれである。

実際、中国の賃金水準や人民元相場の上昇などを反映し、米国の中国からの輸入品価格はすでに上昇傾向を見せている。米労働省が発表した2007年6月の輸出入物価統計によると、中国からの輸入物価指数(2003年12月=100)は98.0となり、前月比で0.3%、前年同月比で0.6%上昇し、ともに過去最大の上昇率を記録した(日経新聞07年7月16日朝刊)。

日本が中国にとって第3位の貿易相手となっているだけに、上記の動向は日中貿易、特に日本の対中輸入にも大きな影響を及ぼしかねない。日本の対中輸入(中国の対日輸出)価格上昇は避けられず、100円ショップなどに溢れている安価な中国製品は予想より早く姿を消していく可能性もある。

 

中国貿易のジレンマ:「出多進少」、「進高出低」

急拡大している中国貿易は幾つかの問題も抱えている。うち直接的、または間接的に中国の輸出価格上昇につながりかねない問題として、「出多進少」と「進高出低」がある。「出多進少」とは、輸出は多く、輸入は少ないということを指しているが、これは中国の貿易黒字の拡大を通じて、人民元切り上げへの圧力を強めている。

1990年代末以降、中国の貿易黒字は変動しながら拡大基調を維持している。輸出入額の前年比増加率をみると、2003年と2004年には輸入額の伸び率は輸出額のそれを上回ったが、2005年に入ってから輸出額は連年輸出より高い伸び率を示している。

中国税関によると、2005年と2006年の輸入額の伸び率はそれぞれ17.6%と20.0%だったのに対して、輸出のそれはそれぞれ28.4%と27.2%を記録した。今年(2007年)上半期には中国の輸入額は前年同期比18.2%増の4342億ドルだったのに対して、輸出額は同27.6%増の5467億ドルに達した。

そのため、貿易黒字は前年同期比511億ドル増の1125億ドルを計上し、通年では前年(1775億ドル)を超え、史上最高の2000億ドル台に乗る可能性が高い。貿易収支と資本収支とも黒字が続いているなか、中国の外貨準備高も急増している。2005年末に8,188.7億ドルだったそれが、2006年末に1兆,663億ドル(年間2,474億ドル増)と初めて1兆ドルを超えた。今年(2007年)6月末にはさらに1兆3,326億ドルと、半年間で2663億ドルも増加した。

貿易黒字と外貨準備の急増を背景に、人民元レートの切り上げ圧力は強まっている。中国は2005年7月22日に「為替改革」(為替相場形成メカニズム改革)を実行し、人民元の対米ドルを約2%切り上げたが、2007年7月25日現在、累計で7.28%の対ドル元高となり、「為替改革」前のレートと比べて、元の対ドルレートは9%以上も切り上げられた。今年以来の推移からみると、4月までの切り上げ率は年率で3%台、5~6月は同4%台だったが、7月に入って5%台に突入し、年末までには年率10%台になるではないかと予測されている。

中国貿易には「来料加工」(外国輸入業者が原材料や部品を提供し、中国で加工して再輸出する)と「進料加工」(外資系企業を含む輸出企業が原材料や部品を輸入し、中国で加工して輸出する)を含む加工貿易が大きなシェアを占めている。中国税関によると、2006年には中国輸出と輸入に占める加工貿易のシェアはそれぞれ52.7%と40.6%に達している。

石油や他の資源の価格の高騰や輸出企業の過剰競争により、中国の貿易は、「進高出低」(輸入価格は高く、輸出価格は低い)という矛盾を抱えている。中国政府は貿易黒字の縮小をはかるべく、数回にわたって輸出還付税率を引き下げたことも、輸出企業にとって無視できない影響がある。

元レートの小幅な切り上げなら、輸出企業はそれを消化できるが、切り上げ幅が拡大すれば、中国の輸出価格の上昇が招かれかねない。「進高出低」と輸出還付税率の引き下げも輸出企業の経営を圧迫し、輸出価格を上昇させる要因となっている。

 

平均賃金は9年間連続で二桁上昇

2003年以来、中国経済は連年二桁の実質成長を続けている。2007年上半期の中国のGDPの前年同期比伸び率(実質)は11.5%に達し、前年通年のそれ(当初発表では10.7%だったが、後は11.1%に修正)を上回っている。

経済の高成長を背景に中国の労働市場は大きく変わっている。「民工荒」(農民出稼ぎ労働者の供給不足)の登場のほか、賃金上昇も深刻なものがある。国家統計局によると、1999年以降、中国都市部就業者の平均賃金は連年二桁の上昇率を示し、賃金指数(物価上昇分を除く実質賃金)では2006年のそれは2000年より2倍となった。

2006年には都市部就業者の平均賃金は、前年比12.7%増の21001元と、初めて2万元を超えた。所有制別の賃金上昇率をみると、最も高い数字を示したのは、公務員などを含む国有セクターである。同年国有セクターの平均年間賃金は前年比12.8%増の22112元に達し、香港・マカオ・台湾企業(10.7%増の19045元)より高く、外資企業のそれ(8.8%増の24784元)のそれに接近している。

労働社会保障省の発表によると、2007年上半期全国都市部平均賃金は10990元と前年同期比18.5%も上昇した。うち、国有セクターの平均賃金は20.4%増の11790元、集団企業は17.7%増の6552元、外資系企業を含む「その他」は15.5%増の10581元となっている。

過度な賃金上昇(特に独占経営の国有企業の賃金上昇)を抑制するため、各省(直轄市・自治区)政府は賃上げ率ガイドラインを発表しているが、天津市(22%)と江蘇省(20%)をはじめ、その上限を二桁に設定しているところが多く、外資企業の主要投資先である上海市、北京市、広東省と遼寧省はそれぞれ12%、14.5%、15%と19%に設定している。賃上げ率の下限を調べると、多くの地方は5%前後に設定している。対米ドルレートが年間5%切り上げすれば、5%の賃上げでも米ドル建てでは10%の賃上げになるのである。

今後中国の賃金上昇を占う上、物価動向もポイントの一つとなっている。国家統計局によると、今年上半期の住民消費物価上昇率(前年同期比)は3.2%、うち6月は4.4%に達している。前年同期の上昇率と比べると1.9ポイントも高い。来年(2008年)1月から労働者権利の保護を主眼とした「労働契約法」が施行されるが、これは賃金上昇にどのような影響をもたらすかも注目される。

中国経済の高成長を支えている要因の一つは固定資産投資の急拡大である。国家統計局の発表によると、今年上半期の固定資産投資額は前年同期比25.9%増、伸び率は前年同期比で多少下落したものの、昨年後半より2.2ポイント上昇した。うち不動産開発投資は28.5%増、伸び率は前年同期比で4.3ポイント上昇、前期比で1.6ポイントも高かった。

中国政府は経済の現状を「過熱」と見ていないものの、「スピードが速すぎる」と認めている。「スピードが速すぎる」から「過熱」にならないようにするため、中国政府は引き締め政策の強化に乗り出している。中国人民銀行(中央銀行)は7月20日、銀行の金利のベースとなる基準金利を7月21日付で引き上げると決定した。1年物預金基準金利は、現行の3.06%から3.33%へ、1年物貸出金利は6.57%から6.84%へとそれぞれ0.27ポイント引き上げたのがそれである。

中国人民銀行は今回の金利引き上げがインフレの予防、物価の安定に役立つと説明しているが、賃金上昇とともに外資系企業を含む輸出企業のコスト増大を通じて、輸出価格の上昇につながりかねないとみられている。

 

製品検査強化で輸入コスト増

中国産食品や製品の安全性問題が国際的に関心事となっている中、中国政府と輸入国政府は対策を採っている。温家宝首相は2007年7月25日に開かれた国務院常務会議で「食の安全」や「製品の品質」といった問題を、「人々の健康に関わるだけでなく、製造者や国の評判も左右する」問題として、問題解決に全力を傾けていく姿勢を示した。具体的には製造過程に対する監督強化、トレーサビリティや回収システムの確立、関連部門の情報公開の徹底などを強調している。

中国は国土が広く、人口が多い上、所得格差が大きい。低所得者と高所得者の商品品質に対する要求も異なる。全国範囲で国際基準に達することは簡単なことではないと想像できる。しかし、輸出製品なら生産企業の選定や検査の強化などを通じて、安全性を含む高品質製品の供給が保証される。

実際、食品を含む中国の輸出商品は一般的に国内販売品より質が高い。中国商品品質検査総局輸出入食品安全局の発表によると、中国の輸出食品合格率は99%以上に達しているが、もし同じ基準で国内販売品を検査する場合、その合格率はそれほど高くないと思われる。

週刊誌をはじめ、日本の一部のマスコミでは中国産食品を「毒」と位置づける「論者」もみられるが、彼ら(または彼女たち)は豚肉や鶏を含む肉類と飲料水を、長年にわたって中国大陸からの供給に頼っている香港住民の平均寿命は、女性で日本に次ぐ世界第2位(84.6歳)、男性でアイスランドと日本に次ぐ同第3位(78.8歳)という事実を多分知らないだろう。

1980年代末まで、特に改革開放以前の計画経済時代に、中国は外貨を獲得すべく、多くの輸出専門工場や輸出生産基地を設けていたが、その狙いとして、輸出供給能力の確保のほか、包装やデザインを含む製品の品質向上をはかることも挙げられる。しかし、このような海外向けと国内向けを区別した生産体制は、輸出品生産の高コストを招いたのである。

国有専門貿易商社の経営に対して、国による統一負担を実行した計画経済体制の下では、輸出品生産の高コストは国の輸出補助金や内部決済レート(公示レートより人民元安)の実行で解決されたが、輸出企業を含む企業の損益自己負担を原則とした市場経済体制に移行した現在では、検査コストを含む生産・輸出コストの増大分(少なくともその一部)を、輸出製品の価格引き上げにより吸収せざるを得ないだろう。

日本は前から中国からの輸入食品に対する検査を強化している。厚生労働省によると、2006年度日本が受けた輸入食品申請は1859281件で、うち申請件数の10.7%にあたる93589件は抜き取り検査を受けた。輸入申請件数に対する抜き取り検査件数の比率からみると、中国の食品は15.7%と、タイの14.7%、韓国の13.7%、米国の9.7%、フランスの2.8%を超え、最高の数字を示している。

今後、中国産食品及び他の製品に対する検査は、検査対象の拡大を含め、さらに強化していく可能性が高い。これは日本の輸入業社の負担増を通じて、中国産食品の価格上昇をもたらしかねない。ちなみに、2006年度の抜き取り検査の結果、中国製食品の不合格件数は530件と最も多いが、検査対象の件数が特段多いため、不合格率は0.58%にとどまり、米国製食品(同1.31%)、欧州(0.62%)を下回っている。(以上)

 (2007年8月記 4,493字)

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