こんにちわ、ゲストさん

ログイン

【アジア】今、本当にアジア市場なのか?

アジアビジネスレポート
森辺 一樹

森辺 一樹

無料

2013年5月24日

 アジアビジネスに長年たずさわる私がこんなことを言うと誤解をされてしまいそうだが、このテーマは2012年6月に出版された私の著書『アジアで儲かる会社に変わる30の方法』(中経出版)でも少し触れており、非常に重要テーマなのであえて今回のコラムの題材にすることとした。

 まず、今一度アジア市場の最大の魅力を振り返りたい。アジア市場の最大の魅力は中間層の拡大にある。現在、アジアには中間層が約15億人存在する。この中間層はアジアの経済成長のスピードに合わせ急激に増加しており、その所得も年々向上している。このまま進めば、アジアは日本や欧米とならぶ一大市場となる。従って、アジアへいち早く進出し、誰よりも先に先駆者利益を得るメリットは大きい。世界中の競合がひしめく市場だろうがなんだろうが、巨大な成長市場である限り、企業にとってアジアは次の成長エンジンとなる。

 この理屈からすれば、今回のテーマの答えは「YES」だ。しかし、これは全ての企業にとって「YES」ではない。アジアで2割、3割のシェアを取る必要がある大企業にとっては今後の有力な市場だ。狙っているシェアが大きいだけに、中長期の投資を行っても十分にリターンはあるだろう。
 しかし、中堅中小企業やベンチャー企業にとって、今のアジアは必ずしも魅力的な市場とは限らない。確かにアジアでは中間層が急激に増加しているし、今後も更に増加の一途を辿るだろう。しかし、現実問題、目下のアジアは一部の国や都市を除いてまだまだ日本のレベルには遠い。一人当たりのGDPも数千ドルであり、4万5,000ドルを超える日本と比べれば天と地の差が存在する。その上、競合がひしめき、流通構造も、その抑え方もアジア独特のややこしさが存在する。このような市場で勝つには様々なことを変えなければならない。

 特に価格は重要な要素となる。中堅中小企業にとって価格を下げるということは、そう簡単なことではない。価格を下げるのであれば、それだけ数を売らなければならない。数を売るということは、生産設備の増強が必要だ。生産設備の増強には当然ながら大きな投資が必要となる。アジアで2割のシェアを狙う大企業であればそれだけの投資も報われるだろう。
 しかし、中堅中小企業が必要なのはそんな大きなシェアではなく、今後落ち込む内需の代替え市場なのである。彼らの本音を言えば、価格も製品も然程変えなくて済む、ありものをそのまま買ってくれる新たな代替え市場が必要なのだ。そんな企業にとって、今、本当にアジアなのだろうか?私の答えは、「NO」だ。今のアジアは変わらなければ取れないし、何かを変えるには経営資源や戦略が必要になる。大きなシェアの為の変革は投資に見合うリターンがあるが、代替え市場の為の変革はリスク以外の何ものでもない。

 多くの企業がアジアで挫折するのを見て来た私は、今こそ中堅中小企業やベンチャー企業は北米を狙うべきだと考えている。その理由は、今後、機会をみてこのコラムで紹介することとする。

(2012年7月 執筆)

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ