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中国の地名商標の特徴―後編

中国ビジネスレポート 知的財産
王 倩

王 倩

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2013年2月1日

「溈山」茶の登録商標争いを巡って―②

 地名商標とは、地理的な名称を商標の内容として使用あるいは登録する商標を指す。
 中国の現行商標法は中国国内の県レベル以上の行政区画の地名または消費者に知られた外国地名の商標としての使用が禁じられている。しかし、それ以外の地名は、商標として使用、登録することが可能である。
 地名商標の特徴として、消費者は当該商標を使用した商品あるいは役務を、特定の産地と結びつける傾向があることがあげられる。従い、地名商標は自他商品の識別機能(顕著性)が実質的に弱いと言わざるを得ない。
 本稿では、2011年度「中国最高法院知識産権審判案例指導」に収録された「山」商標をめぐる争いを通して、地名商標の保護と登録、使用における注意点を前回に続きご紹介する。

二、「山」商標の争いからみる地名商標の保護と登録、使用における注意点
 「山」商標は地名であるのみならず、商品の産地を表しているため、実質上は一種の地理的表示に属する。
 このような地名商標の特殊性から、商標権者が地元のほかの関連企業の関連商品・役務におけるこの地名の表示を阻止しようとすれば、強い反発を受けることは当然想定できる。当該地域と関連する企業は連合して、識別力の欠如を理由に、或いは商標権者は登録商標を規範に沿って使用していないなどを理由に、当該知名商標の取消請求をする措置をとって、商標権者に対抗していく可能性が非常に高い。従い、地名商標の商標権者は、商標権侵害を主張する前に、必ずもう一度、商標自身の識別力と登録商標の使用は規範に沿っているかの基本事項を確認して、慎重に判断する必要がある。一般的に、以下の問題点に留意する。(留意点1,2については前回ご紹介しています。)

3.商標を使用する場合、厳格に登録商標の規範に従い使用して、勝手に登録商標を変更して使用することを避けるべきである。
 ほかの商標権者と比べて、地名商標は同地域のほかの企業の標的にされやすいため、登録商標の使用は、より慎重に行うべきである。勝手に登録商標を変更したことを理由に他企業より商標権の取消し申請をされる可能性もある。それを防ぐため、たとえば、登録商標は横に並んでいる文字なのに、使用中に縦に表示したり、字体を調整したりすることは避けるべきである。

4.適切な行政取締と民事訴訟手続きを通じて、当該商標に対する侵害と地名の正当使用との境界線を確立する

 地名は公共範疇に属する言葉であるため、一定の公共性を帯びている。たとえ地名商標は「第二の意味」を得たとしても、商標権者は、他人が固有の意味(「第一の意味」」として地名を記述的に正当使用することを阻止できない。
 ただし、消費者に商品または役務の出所につき誤解させることを避けるため、地名の正当使用は当該地名の地域範囲内の業者に限定されるべきである。また、、その地名を強調するために、たとえば、文字を大きくする、異なった色にするなどして、地名商標と混同を生じる恐れがある場合、このように地名商標を強調して使用することは登録商標あるいはその知名度に便乗する意図があると認定できるので、この場合は、地名の正当使用の限度を超え、商標権侵害となる。これはケースバイケースで分析して、具体的な背景に基づき、認定される。
 もし商標侵害となる適切なケースがあれば、行政取締を行いながら、メディアでも報じて、これを通じて「第二の意味」を強化する。
 本件の係争商標「山ブランド」に関して、この商標は最終的に取消を免れたが、最高法院の判決文の内容から分析して、その保護範囲は相当狭いことがわかる。もし、地元のその他のお茶の生産者が「山」という文字とそのピン音のみを使用し、その商標と類似する図形を使用していない場合、商標の全体上は登録商標と類似しないとして、当該商標の商標権を侵害していないと認定されることになる。
 地名商標は、本来「弱い保護の特質」を有するため、地名商標の商標権者は商標権を模倣品取締りの唯一の手段にすべきではない。商品の創意工夫の過程で、商号権、意匠権、著作権、地名商品の包装、装飾、商標秘密の保護などの多元化する知財保護戦略を立てて、多方面における保護方法によって、各種類の模倣品を摘発すべきである。

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