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売掛債権質権設定登記制度についての簡潔な紹介及び新規定の解釈

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

無料

2018年10月12日

概要

売掛債権に質権を設定するには登記手続きを行わなければならず、質権は質権設定登記を行った時点で成立する。「売掛債権質権設定登記弁法」は十数年の実践を経て、再度改正された。今回の改正は売掛債権の概念及び範囲、登記期限、譲渡登記など複数の方面に及ぶものであり、売掛債権に対する質権設定業務及び企業による融資に対し重要な影響をもたらすものである。

本文

一、売掛債権質権設定登記制度についての簡潔な紹介

売掛債権とは、権利者が一定の貨物、サービス又は施設を提供することにより取得する、代金の支払を義務者に要求する権利、及び法により享受するその他の支払請求権を指す。

「物権法」第228条によれば、売掛債権に質権を設定し、与信信用調査機構にて質権設定登記を行うことができる(「質権は与信信用調査機構が質権設定登記を行った時点で成立」)と規定されている。同規定をもとに、中国人民銀行は2007年9月30日に「売掛債権質権設定登記弁法」(以下「旧『弁法』」という)、2017年10月25日に改正後の「売掛債権質権設定登記弁法」 (以下「新『弁法』」という)を公表した。これをもって、中国人民銀行は売掛債権質権設定登記制度が確立され、中国人民銀行信用調査センター(以下「信用調査センター」)が売掛債権質権設定の登記機構とされた。実践において、売掛債権質権の設定に際し、登記手続きや情報照会は、通常、信用調査センターの構築した登記公示システム (以下「登記公示システム」という)を通じて行われることになっている。

登記公示システムで売掛債権質権設定登記を行う際の主な手順は以下の通りである。

手順 注意点 備考
1.質権者と質権設定者が設定登記協議書を締結する -質権協議書ではなく、設定登記協議書であり、双方が質権設定契約書をすでに締結済みであり、質権者が質権設定登記手続きを行うことを明記する。 -質権者は第三者に委託し、登記を行うことができる。
2.質権者がシステムにログインし、係る登記内容を記入する -その内容には双方の基本情報、売掛債権についての説明、登記期限が含まれ、また、登記協議書のアップロードを行う -登記内容に変更がある場合、質権者は変更登記を行わなければならない。
-質権設定者/利害関係者は異議を申し立て、異議登記を行うことができる。
3.登記している質権が消滅した場合、質権者が抹消登記を行う -主たる債権が消滅し、質権が実現し、質権者が登記された質権を全て放棄した場合、質権者は10業務日以内に抹消登記を行わなければならない。 -登記期限が満了する前に、質権者は期間延長を申請することができる。
-登記期限の満了をもって、質権設定登記は失効する。

二、新「弁法」の解釈

10年間の実践を経て、売掛債権質権設定業務は中国で急速に発展することができた。市場発展の需要に適応し、さらに実務に沿うべく、中国人民銀行は新「弁法」を公布し、すでに2017年12月1日から正式に実施されている。今回の改定は売掛債権の定義及び範囲、登記期限、譲渡登記などに及んでおり、売掛債権質権設定業務に重要な影響をもたらしたと考えられる。新「弁法」では、主に以下の通り改められている。

改定項目 簡潔な説明
1.売掛債権の範囲を改め、旧「弁法」と比べ、拡大された -定義の部分では、新「弁法」は、売掛債権の定義を「売掛債権とは、権利者が一定の貨物、サービス又は施設を提供することにより取得する代金支払を義務者に要求する権利、及び法により享受するその他の支払請求権を指し、現有の及び将来の金銭債権を含むが、手形又はその他の有価証券により発生する支払請求権、及び法律、行政法規により譲渡が禁止される支払請求権は含まれない。」としている。旧「弁法」と比べると、「法により享受するその他の支払請求権」を包括的条項として新たに追加しており、「法律、行政法規により譲渡が禁止される支払請求権」を売掛債権から排除している。
-列挙の部分では、新「弁法」は、旧規定での「サービスの提供により発生する債権」を詳細化し、「医療、教育、旅行などのサービス又は労務の提供により発生する債権」としており、旧規定で列挙されていた「道路、橋梁、トンネル、フェリーふ頭などの不動産料金徴収権」を「エネルギー、交通輸送、水利、環境保護、市政工事などのインフラ施設及び公共事業プロジェクトの収益権」に改め、包括的条項として「その他契約に基づく、金銭の給付を内容とする債権」を定めている。
2.登記期限の調整 -新「弁法」では、登記期限を「1-5」年から「0.5-30年」へと延長している。これによって、支払周期がやや短い普通貿易類における売掛債権の質権設定、並びに支払周期がやや長いインフラ施設及び公共事業フランチャイズ管理権の質権設定について、それぞれの需要がより確実に満たされることになる。
3.譲渡登記に係る規定の新規追加 -譲渡及び質権設定は、売掛債権融資の2つの形式である。新「弁法」第33条に売掛債権譲渡登記を質権設定登記に参照し行う条項が追加されたことによって、中国における売掛債権譲渡及びファクタリング業務の登記について、立法上、網羅されていない部分を補い、また実際の業務で取引当事者(質権者又は譲受者)が直面している、同一の売掛債権に質権を設定されたうえで同時に譲渡されること、又は二重譲渡されるリスクを軽減する。
-譲渡登記は強行規定ではないものの、より多くの市場主体が登記及び情報照会を行い、取引の安全を守るよう導くうえで有益である。
4.その他の改定内容 -異議登記の有効期間は15日から30日へと延長された。
-質権者が抹消登記手続きを遅滞した場合の法的責任を新たに追加した。
-仲裁判断が質権設定登記又は異議の登記を取り消すための根拠となることを新たに追加した。
-登記費用に関する規定を新たに追加した。

三、重点的に注意を払うべき事項

今回の改正内容を踏まえ、現在の売掛債権質権設定登記制度のもとでは、企業は売掛債権質権設定業務を取り扱う際に以下の事項に重点的に注意を払うのが望ましい。

1.新「弁法」では、企業が質権設定者である場合について、質権を設定できる売掛債権の範囲を拡大した。例えば、実務上よく検討されている銀行の財テク商品、信託など各種の資産管理機構の資産管理製品について、新「弁法」に基づくならば、いずれも契約に基づく金銭の給付を内容とする債権として、売掛債権質権設定を行うことが可能である。

2.企業が質権者である場合、売掛債権の真実性、適法性、有効性に重点を置いて審査することが望ましい。具体的には、以下の方面の事項が含まれる。
(1)真実性:売掛債権の基礎契約の真実性、及び明確な債務者、履行期限、履行状況、契約番号などの基本情報が存在するかどうかを確認する。売掛債権が確実に存在しているかどうか、残りの売掛債権の金額について、真偽を確認する。
(2)適法性:売掛債権が法律の禁止規定に違反しているかどうか、または明らかに取消可能、変更可能、無効と認定され、あるいは解除されるような状況があるかどうか。手形又はその他の有価証券により生じる支払請求権、及び法律、行政法規により譲渡が禁止される支払請求権(例えば、「担保法」第61条では、根抵当権の主契約における債権を譲渡してはならないと規定される)に該当するかどうかを確認する。
(3)有効性:基礎契約の条項に譲渡、質権の実現、債権回収に制限をかける条項又はリスクがあるかどうか。訴訟時効を経過した状況又はリスクがあるかどうか。登記公示システムなどで照会することにより、すでに質権が設定されたかどうかを確認するなど。

3.実務経験を踏まえるならば、企業は売掛債権質権設定登記を行うにあたり、
(1)登記公示システムにて売掛債権質権設定登記を行う際に、対象となる売掛債権を特定できるよう、基礎債権の基本情報を詳しく記載しなければならない。
(2)債務者が質権設定者に対し支払義務を履行してしまい、質権が消滅するといったことが発生しないように、質権者は売掛債権質権設定登記を行った後、質権設定者の債務者にも遅滞なく通知を行わなければならない。当該通知では、質権者は債務者に対し、質権が設定された売掛債権の真実性及びそれが有効に存続しているかどうかを確認するよう要求し、また、通知を受け取った後においては、直接質権者に債務を弁償してはならないと要求することができる。

(里兆法律事務所が2018年4月12日付で作成)

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