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【コラム】中国現場体験記(54) 中国の街から漂うにおい~杭州・西塘を歩いて~

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2012年9月11日

先日、中国人の友人が運転する車に乗り、上海、杭州、淅江省西塘へ行ってきました。一人風に吹かれ、街を歩いていると、中国の街からはそれぞれのにおいが漂って来ました。
今回は、中国の街から漂うにおい、特に西塘について紹介します。

1.中国の街角で
どこの国にも、どこの街にも、それぞれのにおいがあります。台湾には八角のにおいが漂っていました。どこに行っても、真っ黒に染まる煮卵、茶葉蛋が煮られており、その八角のにおいに溢れていました。
中国各地にもそういった地域のにおいがありますが、その中でも、西塘に漂っていたにおいは、水郷のうつくしい景色とは釣合わないものでした。西塘は、烏鎮、周庄などと並ぶ水郷の街です。トムクルーズ主演のミッション:インポッシブル3の撮影舞台ともなりました。筆者は、中国のドラマを教材に中国語を勉強していたので知っていたのですが、西塘は人気トレンディードラマ「我的青春誰做主」の舞台でもあったため、前々から行きたいと思っていました。

2.車は走る
(1)杭州
西塘に向かって車は走り始めました。
友人(山東人):「ところで、奥北。杭州には行ったことある?」
筆者:「杭州は仕事で行ったことはあるけど、観光はしたことないな」
友人:「それなら、俺ら中国人からすれば、杭州の西湖や雷鋒塔も見て欲しいな」
筆者:「西湖は世界遺産だから、確かに行ってみたいな」
友人:「なら、杭州に先に行って、帰り道に西塘に寄ろう」
方角は同じであるため、先に杭州に向かい、帰りに西塘に寄ってから、上海に戻ることになりました。
杭州に向かう道沿いの中国式マンションを見ると、洗濯物の棒が突き出している以外に、各家が国旗を掲げていることに気付きました。
筆者:「今日は何かの記念日だっけ?どうして国旗が掲げられているの?」
友人:「ああ、あれ。あれは道沿いの家だけが掲げているもので、騒音やにおいがあるでしょ?立ち退き等の補償を求めている意味だよ」
なるほどでした。

杭州に到着し、雷鋒塔に行きました。西湖全体が見渡せる、高台に建つ塔です。立て替えてから10年ほどの真新しい建物で、エレベーターもエスカレーターも完備されているため、いまいちありがたみを感じませんでした。筆者は、自然のまま、ありのまま、というのが好きなのですが、各地で観光したり、文物を眺めていたりすると、中国人は人工的なものを好むように思います。
雷鋒塔の最上階から降りて、近くのレストランに入りました。外にある大きなパラソルの下の席でした。周りでは中国人客が、「注文したものがまだ来ない」とあちこちで、叫び声を挙げていました。筆者たちは、目の前の食器をお茶で洗いながら、注文した料理が来るのを待っていました。すると、風にあおられたパラソルが「ぽん」と飛び上がり、座っていた男性が、飲み物でびしょびしょになってしまいました。
何気なく座っているだけでも、話しのネタは自然に入ってきます。
その後、西湖の周りを散策しました。湖にはたくさんの船が浮かんでいました。

友人(山東人):「あの船は何だと思う?」
筆者:「ああ、龍の形をしているね。観光船でしょ?」
友人:「単なる観光船じゃないよ。あの船はもう操行していないんだよ」
筆者:「どうして?もったいないじゃない?」
友人:「あれは江沢民が西湖に来る時に作った江沢民が乗船するだめだけの船、“拍馬屁”(媚びへつらい)さ。“拍江沢民的馬屁”だよ」
筆者:「へえー。もったいないね。今でも使えば良いのに」
友人:「中国にはこういうのが多いんだよ」

当日は車両ナンバー規制があったため、杭州市内を自由には走れず、西湖には少々遠い場所に駐車せざるを得ませんでした。西湖に行くためには徒歩では遠かったため、駐車場からはバイクタクシーに乗りました。後部に2人が乗れる座席を付けたものです。行きは交渉で15元(日本円換算約190円)でした。ところが、帰りは運賃でもめることになりました。

バイクタクシー運転手:「25元だな」
友人1(山東人):「あー?行きは15元だったよ。何だよそれ!15元にしろ!」
バイクタクシー運転手:「20元だな」
友人2(広西人):「ふざけるんじゃねーよ!×××」
友人たちが「わーわー」言っていましたが、20元までしか負けてもらえませんでした。
やむを得ず、20元で手を打ち、バイクタクシーに乗って駐車場に向かいました。すると、駐車場のだいぶ手前に止められました。

友人2:「あー?ここじゃないよ!まだ先だよ!」
バイクタクシー運転手:「先まで行って欲しかったら、25元」
友人2:「ふざんけんじゃねーよ!20元で決まっただろ!さっさと行け!×××」

後ろから蹴飛ばしそうな勢いでした。
バイクタクシー運転手は、無表情のまま運転を再開しました。到着すると、友人はぶつぶつ文句を言いながら、投げつけるように20元札を渡しました。バイクタクシー運転手は無表情に20元札を受け取り、そのまま走って行きました。
中国では、服などを買う時にも、地域によってふっかけてくる額に違いはありますが、このような値切り交渉が多くあります。むしろ、値切り交渉がないものはないほどでした(南方の少数民族地域には値切り交渉がない場所もあるにはありました)。ところによっては、レストランのメニューに載っている値段にも2種類(地元民用とそうでない人用)あったり、そもそも値段が決まっていなかったりするレストランもあったほどです。
筆者自身の値切り交渉とは異なり、中国人の値切り交渉を横で見ていると、喧嘩をしているのかと思うほどの剣幕で行います。しかし、一旦交渉が成立すると、友人も店の人も、さっぱりとしたものです。さきほどのあれは何だったのだろう、という笑顔にさえなっています。

(2)西塘
杭州から西塘に向かいました。西塘の街に入る入り口の門には、多くの係員が立っており、左にあった駐車場へ誘導していました。そこは駐車場というだけではなく、ドライブスルーのチケット売り場だったのです。そこで、チケットを買い、ようやく門より先への進入が認められました。周りでのんきに生活している中国人に道を尋ねながら、建物と建物の間をすり抜けて行くと、水郷の街、西塘の景色が広がって来ました。
川の両脇には風情のある建物が建っており、それらは水郷を見ながら外で食事をしたりできるレストラン兼旅館となっていました。夜になると灯る灯りは美しく、黄色く、赤く輝きます。
視覚に訴えかけるこのうつくしい風景が、映画・テレビ・本などで見た風景にかぶっていきました。

しかし、実際に西塘に行くと、視覚だけではわからなかったことが筆者を待っていました。
それは、においです。西塘は、臭豆腐を炒めるにおいで覆われていたのです。川辺に何軒も立ち並ぶ食堂で臭豆腐が炒められているので、ここに泊まると、一晩中このにおいを嗅ぐことになります。臭豆腐のにおいが苦手な人には耐えられません。北京の王府井付近、新疆ウイグル自治区各地、雲南省、それぞれの屋台のにおいとも異なる、西塘を象徴する臭豆腐のにおいでした。臭豆腐のにおいを体に身にまとい、筆者たちは上海の街に戻りました。

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