こんにちわ、ゲストさん

ログイン

従業員の不正行為を誘発する隙と購買における当て馬

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

無料

2021年6月16日

中国に限ることではありませんが、工場経営を行っていると会社側にも従業員が不正行為を行う隙や誘発する原因があることに気づきます。簿外資産類似の資産の売却や相見積もりを取る際の購買における当て馬利用を通じての不正につき、設備部門や購買部門等における実務事例を紹介します。

1. 簿外資産類似の資産の売却

工場に存在する資産はすべて貸借対照表上の資産として計上されているのが原則です。しかし、工場経営をしていると貸借対照表上の資産としては分かりずらい簿外資産に近い資産が存在することに気づきます。こういった資産の中には、価値は低くはありませんが使用はできない資産があります。例えば、設備を購入した際の設備梱包の鉄の容器や棒材です。その気になれば、一購買担当や設備担当者が、個人的に懇意にしている業者に連絡をして、会社にはゴミを無料で処分してもらったように見せながら、実際には当該業者から多額の現金・WeChat(微信)への送金を個人で受け取ることもできます。

こういった資産の不正売却は実際には経営者・管理者からは分かりにくい物も存在します。財務部員も関知しないままに当該資産売却が行われるリスクがあります。明確に今後使い続ける資産ではなく、スクラップとせざるを得ないような本件梱包材のような場合には特に問題となります。不正売却により貸借対照表上は一種の架空資産が発生するのと同時に、不正な利益が従業員個人に流れるという形の不正です。通常の資産の不正売却であれば窃盗罪となるため、罪の意識もありますが、簿外資産類似の資産の売却の場合には、罪の意識は低く、一種の役得と考える可能性もあり、不正を誘発しやすい状況にあるといえます。

こういった不正を防ぐためには、経営者・管理者として不正のリスクのある行為は何か、簿外資産類似の資産には何があるか、また工場内の各種動きを極力事前に理解しておく必要があります。個人口座や従業員個人を通じた支払は事前に社内規程上明確に禁止しておくべきです。また、購買部門や設備部門の一担当者や管理職が一人で行動できないようにして、相互監視をする体制を整えておくことも有用です。信頼できる従業員を育てることは当然重要ですが、盲目的に一従業員を信頼し過ぎて、逆に当該従業員の不正を知らず知らずのうちに助長することがないよう注意する必要があります。

【注】
例えば、機械設備を購入した場合、機械設備本体RMB100+包装材RMB1+輸送費RMB4=合計RMB105を固定資産として資産計上することになります。

当該包装材の鉄を第三者であるスクラップ業者にRMB0.5で売却した場合、資産の一部売却としてRMB105-0.5=104.5を貸借対照表上の資産として残すことになります。または企業によっては資産金額であるRMB105は変更せず、損益計算書上スクラップ販売としてRMB0.5を計上しているケースもあり得ます。

上述の課題は、当該資産の売却を会社として気付かず、貸借対照表でも損益計算書でも計上できない行為、従業員個人が会社資産を不正に売却し個人的な利益を得るリスクについて述べたものです。

また、工場にあり得るリスクとしては貸借対照表の資産としては存在するものの、長年の経営の間に実際には存在しなくなっている資産があり得ます。実地棚卸では把握しきれないこういった「資産の棄損=本来は損益計算書上の損失」を経営者・管理者としては極力把握する必要があります。

2. 購買における当て馬の利用

工場において、各種資産を購買する際には数社からの相見積がなければならず、それらを比較検討してから購買先を決定するのが一般的な工場購買の流れです。しかし、実際には数社からの見積内容は事前に話し合いがついているケースもあり得ます。例えばサプライヤー候補として、A社、B社、C社とある場合、購買部担当者の中では、実はA社から購入することが決まっている環境下、B社とC社がA社に協力してわざと高い価格の見積や契約条件が悪い見積もりを出して経営者・管理者の目をくらませ、A社から実際の価格よりも高い価格で会社に購入させるケースです。

別の案件では逆にA社がB社の受注に協力する等持ちつ持たれつの関係をサプライヤーが横同士で構築するケースです。購買部員が主導しているケースもあれば、サプライヤーが主導しているケースもあります。

こういった購買における当て馬を極力防ぐべく、実訪問調査を含むサプライヤー調査を綿密に行うことはもちろん、マーケット価格の動向を詳しく知る努力をする必要があります。また必要以上の数量の購買やオーバースペック(過剰品質)の商品を購入することがないようにすべく、やはり社内でクロスチェックできる体制を整えておく必要があります。

設備部門や購買部門の従業員・管理職は、自身でも技術・製造・設備を少しでも理解し、またコスト削減意識を持った者に養成する必要があります。しかしながら、従業員育成といった対策は必要であり有効ではあるものの、妄信すべきでない点は上述同様です。

以上

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ