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【コラム】中国現場体験記(46) 朝鮮族の運転手が紹介する秘密の国境線

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2012年5月7日

(5)吉林省琿春・防川
ⅰ.運転手の秘密の場所
それは中国、北朝鮮、ロシア三カ国の境界線に位置する街で、晴れた日には展望台から彼方に日本海が見える、琿春・防川に向かっている時のことでした。

国境線の田園風景が続く中、車は農家のある方向へ進んで行きました。右の彼方、北朝鮮の土地には、何やら大きな銅像のある建物が見えていました。運転手が入っていった道は、このあたりで生活をする人以外は使わないような道でした。車が止まると、目の前には小さな小川が流れていました。軽く飛べば、向こう岸に渡れる距離で、水深も10センチメートルほどでした。小川の向こうでは、牛が草を食んでいました。

運転手:「そこが北朝鮮だよ」
私:「えっ?!歩いて渡れるよ!」
運転手:「北京の旅行会社も知らない場所だよ」

向こう側には目の前の牛以外、どこにも人は見られませんでした。

私:「この牛はどこの牛?」
運転手:「北朝鮮のではないかな」

ところが、この牛は丸々と肥えていましたし、中国側を振り返ると、仲間らしき牛たちも見えました。のっそのっそと散歩を兼ねて草を食み、水を飲みながら、向こう岸に渡った中国の牛であることは明白でした。

私:「北朝鮮の人は現れないの?この牛の飼い主も、牛がいなくなると困るでしょ?」
運転手:「あまり見かけないね。でも農家の人は近くにいるだろうけど」

あまり見かけない理由は、いかだに乗ったときに聞いた話と同様でした。

ⅱ.国境線とスローガン
さらにそこから車で少し進むと、崩れ落ちた橋がありました。聞くと、下の川は冬になると凍りつき、北朝鮮との間は地続きになる、とのことでした。私がこの場所に行ったのは、2010年7月1日。その1年ちょっと前には、この下の川を渡ったアメリカ人ジャーナリスト2名が北朝鮮に拘束された、とのことでした。

運転手と一緒に橋の端まで行くと、途中に赤い線が引かれており、その先は完全に崩れ落ちていました。運転手に赤い線の意味を確認すると、やはり中国と北朝鮮との国境線でした。国境線を北朝鮮側に少し超えた地点で崩れ落ちていたため、その分だけ中国側からは、国境線を1メートルほど越えることができるのでした。北朝鮮側には、北朝鮮の国境警備隊が24時間体制で詰めている小屋がありました。そこから中国側を振り向くと、横断幕が掲げてあり、「北朝鮮人を馬鹿にしてはいけない!」というスローガンが中国語で書かれていました。中国の繁栄と北朝鮮の困窮を象徴しているように感じました。

ⅲ.国境線を~右に北朝鮮、左にロシア~
それから車は東に向かいました。川の向こう側、向かって右は北朝鮮、道路の左側すぐにあるフェンスの向こうはロシアというまさしく国境線を走る道でした。途中にあった連合国世界公園碑の前で降りた私は、鉄柵の向こう側にあるロシアの草木を掴み取りました。

その後、防川の展望台に到着しました。ここはまさしく中国、北朝鮮およびロシアの3カ国の国境線が交わる地点にある展望台で、天気の良い日には日本海が望めるようでしたが、この日は雲がかかっており、残念ながら日本海を確認することはできませんでした。日本海という説明がある展望台の文字盤が、ハングルで落書きされていたことが印象的でした。


※連合国世界公園碑 金網の向こう側はロシア

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