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ログイン2011年11月15日
③ クチャの運転手(漢族、ガイド:満州族)と移民政策
ⅰ.ガイドの強制
筆者は旅をするときには日本語を話すガイドは一切付けません(遺跡で案内してくれるようなガイドは別)。
しかしながら、古代の仏教国である亀茲国が栄えたクチャでは、キジル千仏洞・クムトラ千仏洞を回る際にはガイドを付けることが義務付けられていました。ガイドといっても、彼らはキジル千仏洞、クズルガハ千仏洞には入れないため、入り口で待っているだけです。そのうえ千仏洞では別に説明用のガイドまで付けられたのです。さらにひどいのはクズルガハ千仏洞で、単に洞の鍵を持っているだけのガイドまで連れて行く必要がありました。そのため、途中、ガイドの待機場となっていたキジル千仏洞で、クズルガハ千仏洞の鍵を持つガイドも車に乗せて進んで行きました。この3箇所の千仏洞のなかでは、キジル千仏洞のみ整備されており、それ以外のクムトラ千仏洞およびクズルガハ千仏洞はありのままの遺跡として残っていたため、より冒険心をくすぐるものでした。また、イスラム教および文化大革命時の紅衛兵による焼き討ちにあった千仏洞の中は煤だらけの箇所も多く、廃仏毀釈を思わせる感もありました。
クチャ全体を通じて付いたガイドは、満州族の若い女性でした。
筆者:「新疆ウイグル自治区のクチャのようなイスラム色の強い街にどうして満州族が住んでいるの?満州族の居住区は東北三省(黒龍江省・吉林省・遼寧省)であることが多いでしょ?」
満州族ガイド:「元々、親の代までは遼寧省に住んでいたのだけど、満州族の多くが新疆ウイグル自治区に移民してくるときに、両親と子供だった私たちは、クチャに移住して来たのよ」
ⅱ.移民政策の実像
中国(漢族政府・北京政府)は、政策的に、チベット(チベット仏教・ラマ教信者)に多くのウイグル族(イスラム教信者)を移住させ、宗教間で対立させたり、牽制機能を利用したりしてします。新疆ウイグル自治区から遠く離れた場所、たとえば、広東省や海南省などにも多くのウイグル族を移住させています。ウイグル族の男女を別々の場所に移住させ、結果、純粋なウイグル族ではなく、多民族との混血作りを意図的に進めている傾向もあります。特に、漢族男性とウイグル女性の混血が好まれるとも言われています。
逆に新疆ウイグル自治区には、多くの漢族が移住してきています。新疆ウイグル自治区の首都・ウルムチは漢族が多数民族、ウイグル族がむしろ少数民族となるほどです。新疆ウイグル自治区政府・ウルムチ政府は、もちろん漢族政府です(2010年まで新疆ウイグル自治区の書記であった王楽泉は山東省出身。周りを山東閥で固めた)。ウルムチの街を探索すべく、徒歩で市場に出かけ、露天で食事をしていても、そこで商売をしている人、買い物をしている人は漢族で溢れかえっています。筆者が果物屋で話をしていたところ、周りの買い物客は、筆者の中国語を南方なまりと受け止め、南方から遊びに来た漢族だと誤解していたほどです(漢族の南方人が多くいるためと思われる)。
他にも、イスラム色が強く、しばしば漢族に対する反発が起こるカシュガルでは、人民解放軍が展開しています。また、カシュガルを経済特区にしようという動きがありましたが、これはむしろ、漢族の影響力を強め、ウイグル族の影響力を削ごうとする真意があるのではないかと勘ぐりたくなる雰囲気が現地ではありました。
上述の満州族のガイドが遼寧省からクチャに移住してきたという話を聞いて、筆者は、これも漢族政府が行っている移住政策・移民政策の一環なのかと思いました。すなわち、漢族政府が警戒していた「清」の支配民族・満州族を利用し、同じく漢族政府に反発することの多いウイグル族との両者共倒れ効果を狙っているのかも知れません。
漢族政府は少数民族に何度も支配されてきた歴史を持つため、満州族・ウイグル族・チベット族・モンゴル族など、過去に漢族に反発してきた少数民族に対しては、大変な警戒心を抱いています。同じ中国の少数民族でも、性格が穏やかで歴史的にも衝突のない民族、たとえば南方地域に住むナシ族、ペ族、トゥジャ族などへの対し方とは全く異なります。
漢族政府は満州族を恐れ、満州族と漢族の同化政策を進めてきたのと同じく、漢族に反発しているウイグル族の居住地域を狭める政策も行っています。そのため、このガイドの言葉は、満州族対策・漢族対策の一石二鳥の政策に感じられました。
ⅲ.警察探知機
クチャでは他に印象に残るものとしては、旅行会社の車に搭載された「警察探知機」がありました。日本でも、道路を走っている際、速度探知機を感知し、事前にそれを知らせる装置はあります。筆者が大連・丹東を回ったときの旅行会社の車にも、同様の装置が搭載されていました。
しかし、クチャで乗った旅行会社の車に搭載されていた装置はそれ以上のものでした。まさしく「警察探知機」です。もちろん、速度探知機を感知する効果もあるのですが、どういう仕組みか、近くに警察がいることを探知し、それを音声で知らせてくれるのです。
それは、クチャ市内からキジル千仏洞に向かっていた砂漠路でのことでした。「警察探知機」は、このときも音声で、「この先、300メートルに警察がいます」というアナウンスを始めました(通常は、警察署や派出所の存在を知らせてくれるものです)。しばらくすると、探知機がカウントダウンを始めました。なるほど、本当に警察がすべての車両を止めて交通検問をしていたのです。当然、我々の車も止められたのですが、突然この「警察探知機」が、大きな声で「警察です!警察です!」と連呼しだしたのです。窓を開けていたので警察官には丸聞こえの状況でした。そういった中でも、冷や冷やしていたのは筆者だけで、運転手もガイドも動じず、その声を聞く警察官自身も、全く無視、という有様でした。
④ アルタイ・カナス湖の運転手(漢族)と「大中国主義」
アルタイ・カナス湖での運転手は、出会って早々、日本人を小ばかにするようなことを言ってきました。(後には親しくなりました。漢族とは思ったことを言い合えば良いのであって、彼らの言うことをあまり気にする(真に受ける)必要はない、というのが、筆者が実際に中国に住んで大勢の漢族と交流してきた結論です)。
運転手:「中国人は世界中どこにいってもいる。全世界に親戚縁者がいる」
筆者:「漢族はどこに行ってもいるよね。華僑のことでしょ?」
運転手:「アメリカにもいる。オーストラリアにもいる。アフリカにもいる。世界中にいる漢族・中国人や広大な中国とは違い、日本人は狭い島国に留まってかわいそうだね。ワッ、ハ、ハ」
筆者の心の中:「中国人は自国を信じていないからではないの?親戚縁者の1人でも海外にいれば、中国の体制が崩壊しても全財産を失わないように海外にお金を振り分けるリスクヘッジをしているし。そもそも鄧小平も本当か嘘か知らないが、自分の子供には共産党に入党するな、と言ったと聞くし」
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