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【コラム】中国現場体験記(21) にんにく幼児 敦煌編

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年8月17日

記事概要

敦煌はシルクロードの要衝にあり、中国三大石窟の1つで世界遺産でもある莫高窟や井上靖の小説『敦煌』の舞台として有名な場所です。今回は、甘粛省敦煌で出会った地元の子供に関する現場体験記です。

敦煌を旅したときのドライバーは少数民族である回族でした。回族はイスラム教徒ですが、たとえば言葉などは漢族と変わりません。筆者はいつものように、観光客が行かないような、地元の店を選んで食事をしたり、現地の市場で買い物をしたりすることで、そこで出会う食材や雑貨などから街の雰囲気や民族性などを体験してきました。

今回は、筆者が敦煌の地元市場で出会った子供に関する現場体験記です。

1. 少数民族である回族
(1)少数民族に触れる旅
回族は中国各地で生活していますが、寧夏回族自治区は当然のこと、特に新疆ウイグル自治区のようなイスラム教色の強い地域や、イスラムと中国を結ぶシルクロードに位置する場所に多く居住しています。

本来は新疆ウイグル自治区トルファンから敦煌(柳園)へ向かうウルムチ始発の夜行列車(シルクロード鉄道)に途中乗車する予定だったのですが、列車の故障で出発の見通しが立たず、またトルファンでのウイグル族のドライバーに、次の日の朝からウルムチで仕事があったため、始発駅であるウルムチまで3時間以上かけて戻ることになりました(途中乗車駅のトルファンからの切符は購入不可であったため、始発駅であるウルムチからの切符を購入していました)。6時間遅れで出発した夜行列車で敦煌の最寄りの柳園まで行き、柳園から車で砂漠の中を2時間かけてようやく敦煌に入りました。そのとき、迎えに来てくれたのが回族のドライバーでした。

(2)敦煌の回族
少数民族は普段は民族独自の言葉で話しているため、彼らにとって中国語(普通話)は学校で習う外国語の位置づけです。漢族であっても、地方に住んでいる人の中には、小学校で初めて中国語(普通話)を習ったという人もいます。

たとえば、新疆ウイグル自治区出身のウイグル族である友人は、きれいな中国語を話すのですが、彫りの深い顔と間にはギャップがありました。筆者が思わず、彼の中国語を褒めたところ、笑いながら「中国人だからね・・・。ウイグル族は、学校で中国語を勉強するんだ」と言っていました。また、海南島出身の漢族の友人は、「小学校に入学するまで海南語しか話せず中国語(普通話)は話せなかった。漢族の小学校に行って、周りの話す言葉が分からなかったことに衝撃を受けたが、遊んでいたらすぐに覚えられたよ」と言っていました。

このように、少数民族や地方出身の漢族は、普段、地元では地元の言葉で話していますが、相手によって中国語(普通話)に切り替えます。彼らの中国語は外国人が話す中国語に近いためか、分かりやすく感じることが多いのですが、回族の言語は漢族と同じで、また甘粛省では普通話を使うこともあって、敦煌で出会った回族のドライバーは甘粛省なまりのきつい中国語を話していました。

広東語、上海語などとは異なり、中国語(普通話)のなまりについては、各地域の特色を理解するための良い材料となります。

(3)地元レストラン
回族のドライバーから昼食に薦められた地元料理は「驢肉麺」でした。すなわち、「ロバ肉をミートソースのように使ったスパゲッティ」です。地元民御用達の店に連れて行ってもらったのですが、さすがは観光客向けではない店で、店内の汚いこと汚いこと。お客は食べ物をテーブルの上から下まで散らかし放題、タバコも投げ捨てたままで、まさにごみの山といった状況でした。

中国各地で少数民族のドライバーに感心されたくらい、おいしく地元料理を食べてきた筆者ですが、このロバ肉麺はまったく口に合いませんでした。

これまでに出会った、口に合わなかった料理は、内モンゴルで毎日出された羊のフルコース(新疆ウイグル自治区の羊肉はおいしかったのですが、モンゴル族の出す羊肉は、ほとんど生の脳みそなどで非常に抵抗がありました)とこのロバ肉麺だけです。この時は、筆者を含む日本人3人で旅をしていたのですが、唯一、典型的日本人社長のような見かけの友人がロバ肉麺を完食していました。本来はこの友人が一番デリケートな体質だったはずですが、このときばかりは感心したものです。ところが・・・。その後この友人は、旅の間下痢に悩まされ続け、悲痛な日々を送る事となってしまいました。

2. にんにく幼児
下痢の友人をホテルで休ませて、地元民の普通の生活が凝縮されている市場を見学しに行きました。そこには、活き活きとした生活臭が漂っていました。

そろそろ夕食でも食べようかと市場の出口に向かった時、前からリアカーを引いて来る女性がいました。彼女がリアカーに積んでいたのは大量のにんにくでした。そのとき、友人が「奥北さん、見て、見て、あれ!」と叫んだのです。

なんと、女性の背後で引かれているリアカーの中で、1歳ぐらいの幼児がにんにくの山に囲まれて昼寝をしていたのです。日本で1歳の幼児がすやすやと眠っていると言えば、リアカーではなく、心地の良いベビーカーが思い浮かびますが、それと目の前の光景とのあまりの格差に驚いてしまいました。

中国人(特に農民)のハングリーさは生半可ではなく、現在の日本人では足元にも及ばない、這い上がろうという強い意志があります。このにんにくの山の中で寝ている1歳児を見て、筆者と友人は、我が子たちが、このたくましい中国人と競争して、果たして勝負になるのだろうか、という強烈な印象を受けたのでした。


※柳園から敦煌へ向かう砂漠の道 回族のドライバーと筆者

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