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【コラム】中国現場体験記(10) 白タクと兄貴(哥)

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年6月14日

記事概要

中国では仲の良い白タクの運転手が出来ると非常に便利です。筆者も中国現地で生活していたときには、仲の良い白タク運転手(当然中国語しか話せない)がおり、彼に北京郊外の観光に連れて行ってもらったり、時には、空港に迎えに来てもらったりしていました。今回は、白タク運転手との交流に関する現場体験記です。

白タクは、中国では黒車(hei che)と言います。白タクといえば、何だか金を脅し取られるようにも感じますが、良い人も大勢います。今回は、筆者が中国現地で出会った白タク運転手との交流から体験したこと、感じたことをご紹介します。

1.白タク
(1)白タク運転手との出会い
筆者がしばしば利用する白タクは3台(3人の運転手)ありました。
彼らは、外国人(日本人駐在員を含む)のよく行く場所で客引きをしたり、他の外国人からの紹介で常連客を得ています。そして、知り合いとなった外国人が近郊を観光する際のドライバーや、ゴルフ場への送迎などを仕事にしていました。

筆者も、上述のような形で3人の白タク運転手と知り合いました。後に最も仲良くなった白タク運転手の車には、最初は、白タクとは気付かずに乗車し、その後、「あれ?」と、一般のタクシーでないことに気付きました(車体には一般的なタクシーのランプが設置されていたため、夜にはぱっと見、普通のタクシーかと思ってしまったのです)。この白タク運転手がとても人懐っこい性格だったこともあり、筆者が「観光で1日雇ったら幾らか?」と聞いたことから、白タク利用の世界が広がることになりました。

筆者が知り合った3人の白タク運転手ともに、通常のタクシーと同じ水準の値段でしたし、最も仲の良かった白タクの運転手は、必要とあれば正規の発票を出せるということを、機械を見せながら説明をしてくれました(うーん、という感じの部分が無きにしも非ずでしたが)。

(2)白タクの利用方法
彼らは、たとえば、万里の長城(八達嶺)や北京オリンピックが行われた鳥の巣を1日で回ったら幾ら、ということを事前に交渉し、合意した値段で迎えにも来てくれ、夕ご飯を食べに行こうと思えば、最後はレストランの前まで送ってくれます。筆者はこの時すでに、隙を見せれば騙されるという中国人(特に漢族)的考え方を持っていましたので、「高速代、ガソリン代、駐車場代、その他、諸々込み」ということを強調し、値段交渉をしたものです。

2.兄貴(哥)
この白タク運転手と話をしている中で、運転手よりも筆者が年上だとわかりました。見た目が相撲取りのような貫禄だったため、筆者の方が気分は年下だったのですが、それからは、筆者のことを中国語で「哥(ge)」(日本語で言えば、兄貴の意味・ニュアンス)と呼んでくるようになりました。

3.食事の取り方の特徴
(1)同じテーブルで
中国各地で知り合った運転手(旅行会社手配の運転手を含む。民族は問わず。)の多くに共通することですが、筆者が昼食を取るときには、彼らも一緒のテーブルで食事をとります。

これは、上述の白タク運転手(漢族)もそうですし、新疆ウイグル自治区のウイグル族の運転手、雲南省麗江・シャングリラのナシ族の車、昆明のチワン族の車、どの運転手も同様でした。パックツアーではなく、個人手配で、どこに行くにもガイドは無し、中国語が話せれば十分、という条件だったためかも知れませんが、お陰でおもしろい体験をすることができました。

おそらく日本ではこのように運転手が一緒になって客と同じテーブルに座り、一緒に食事をし、客側が食事代を全て払うという場面はないように思います。

(2)少数民族地域で、少数民族のドライバーと
ツアーではないので、どこでいつ食事をするかは全て自分の気分次第となり、運転手と相談をしながらレストラン・食堂を選べるのも楽しい経験となります。日本人は当然として、外国人は誰も行かないような現地の食堂に行くのは、中国を知る意味でも大変良い経験となります。

また、彼らに注文を任せると、筆者を含め、日本人が注文しないようなメニューに出会えます。たまに、「これはきつい」と思うものも注文されますが、それも含めて、中国各地のおもしろい現場体験といえます。

さらに、少数民族の地域で、現地の客しかいない食堂に行くと、中国語(普通話)の記載がない、現地語のみのメニューしかなかったり、中国語(普通話)が通じず、コミュニケーションが取れないということもありました。たとえば、新疆ウイグル自治区のトルファン・クチャ・カシュガルにあるウイグル料理の店などはそうでした(新疆ウイグル自治区は、昨今、漢族の入植が激しいですが、その中にあっても、トルファン・クチャ・カシュガルなどは今もイスラム色の強い地域です)。もちろん、彼らも国籍上は中国人であり、小学校に行けば、中国語の授業もあるはずですが、中国語を話せないウェートレス(中国語では、「服務員」)が多くいました。そういったときには、運転手を頼りにするしかありませんでした。

4.助かった
中国に進出している企業では、駐在員に運転手付きの車をあてがっている会社も多くあります。しかしながら、中国語の習得、中国での人脈作り、法務にとらわれない知識の習得および経験、中国4000年の歴史の体感を目標としていた筆者には、幸か不幸か(筆者にとっては幸)、そのような親切なものはあてがわれていませんでした。

実際のところ、雨が降っているときにタクシーが全く捕まらなくなること以外では、社有車がなくても不便を感じたことがありませんでした。ところが一度だけ自由に使える車が無かったために、ひどい目に遭いそうになったのですが、そのときは、件の白タク運転手が助けてくれたのです。

(1)飛行機が飛ばない
それは、正月のことでした。日本の正月休みの間、日本に帰省していた筆者は、休みを終え、北京に戻ろうとしていました。
しかし、北京では大雪が降っており、成田から北京に向かう便が、そもそもまだ北京に留まったまま、北京空港から離陸できていない、という状況でした。筆者が乗ろうとしていたのは、直行便の中で一番安かった中国国際航空(CA)でした。その中でもさらに安い変更不可便の往復チケットを利用していたため、便を変更することも出来ず、成田空港で待たされるはめになりました。

結局、飛行機が飛んだのは予定よりも6時間遅れでした。

(2)中国の空港で配られるお弁当
時間通りになかなか飛んでくれない中国の飛行機に慣らされていたので、ここまでは、まだ何とか我慢が出来たのですが、北京に到着してからが問題でした。

ちなみに筆者は、どうせ飛行機が遅れるなら、日本にいるときに遅れるよりも、中国にいるときに遅れる方が好きな部分があります。
なぜなら、中国で飛行機の離陸が遅れる場合、遅れる時間によっては、お菓子や水、弁当に至るまで食べ物がいろいろと出てくるからです。確かに、日本でも食事のチケットを渡されたりすることもありますが、どういうわけか、筆者には中国の空港で、無料で配られるお弁当のほうがおいしく感じられるのです。

中国では、とにかく客を騒がせないようにするため、腹をふくれさせておけ、というような空港側・航空会社側の意図を感じますが、中国人は皆、この点は達観している人が多いように感じます。ただ、ウルムチから柳園(敦煌)行きの夜行列車が6時間遅れたときには、乗客数名以外に、なんと係員の女性たちまでもが激怒していた、というおもしろい事態もありましたが・・・。

(3)深夜12時過ぎに零下15度の北京に到着
結局、筆者が乗った飛行機は、予定を大幅に遅れ、深夜12時過ぎに零下15度、大雪の北京に到着したのです。

当然、空港バス、電車は全て終了しており、タクシーの本数も極端に少ない中、各地からの乗客で北京空港は溢れ返っていました。

成田空港にいる段階で、中国人の友人にタクシーで迎えに来てもらえないかと確認していたのですが、タクシー運転手は路上が凍結している中、空港までは誰も行きたがらないとのことで、どうしたものかと途方にくれていました。他にも、電話をすれば迎えに来てくれる中国人の友人も数人いましたが、彼らには迷惑を掛けたくない気持ちがあったため、連絡はしていませんでした(日本人的発想ですが・・・)。

そのときに思いついたのが、件の白タク運転手です。彼に北京空港から電話をしたところ、今自宅にいるが、迎えに行ってあげる、とのことでした。暖房もまともについていない中、北京空港で一夜を明かすのかとしょげていた筆者には、彼の存在が希望のように感じられました。

通常は30分強の距離を、凍結している路上、さらに空からは大雪が降る中、1時間30分程度で迎えに来てくれたときには、本当に「助かった」と思いました。

その後、筆者を自宅まで送ってくれた彼に感謝しつつ、「幾ら払おうか?」と聞いたところ、「兄貴(哥)を迎えに来たのだから、いくらでも良いよ。そんなの。」と言われたのです。(逆に怖いことを言われたとも、少々思いましたが)気分が良くなっていた筆者がチップをはずんだことは言うまでもありません。
ここら辺は、彼らの人間観察は巧みなのかも知れません。

5.中国世界の広げ方
中国で生活するときには、いろいろな地域に住む中国人、いろいろな民族の中国人、いろいろな職業の中国人と知り合うことで、中国世界が大きく開けます。筆者が中国に行く前に知り合っていた中国人の多くは、日本語を話せるエリート弁護士たちであり、彼らは日本への留学や日本人相手の商売を経験しているため、ある意味、典型的な中国人・漢族という感じではなくなっている部分が多々あります。

そういう意味でも、中国を知るためには、中国人中国人した人たちとの付き合い、交流が重要だと感じた、白タクに関する現場体験でした。


※麗江の束河古鎮でナシ族のドライバーと

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