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【コラム】中国現場体験記(8) トイレ、トイレットペーパーと鍵

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年6月6日

記事概要

筆者が中国で生活する前に出張ベースで中国を訪れていたときから、中国現地で生活を始めた後に至るまで、生活の場面、旅行の場面等、様々な場面で多くのトイレ事情を知ることになりました。今回は、筆者が中国現地で体験した中国のトイレに関するエピソードのうち、日本ではあまり紹介されていないと思われる部分を中心とする一考察です。

初めて筆者が中国を訪問したとき以降、中国各地のいろいろな場所でいろいろなトイレを体験しました。漢族居住地域の街中のトイレはもちろん、少数民族居住地域のトイレ、たとえば、新疆ウイグル自治区のウイグル族、カザフ族等のトイレ、雲南省のタイ族、ナシ族、ペ族、チベット族のトイレ、内モンゴルのモンゴル族のトイレなど、各地のトイレに行きました。

筆者は元々債権回収を主業務とすることから始めたのですが、当時の上司から、行く先々の会社(取引先、債権回収をする先等)では、必ずそこのトイレに行くこと、そうすれば、そこにいる人の管理体制・姿勢などが分かると言われていました。当時は分からない部分もあったのですが、今では確かにと、うなずく部分の大きい意見のように感じています。

そこで、今回は、中国を知るという意味で、筆者がトイレに行こうとしたときに気付いたトイレと鍵に関する体験、および中国に住み始め、語学学校に通い始めたときに気付いたトイレとトイレットペーパーに関する現場体験に基づいた、中国のトイレ事情に関する一考察です。

1.中国のトイレの特殊性
①畑の上に乗り出したトイレがあり、排出物がそのまま畑に流れていく、蛆虫だらけのトイレ(雲南省のシャングリラ近く等)、②汚物の上に細い板が掛けてあり、そこに落ちそうになりながら乗るトイレ(新疆ウイグル自治区のカシュガルとタジキスタン共和国の国境近くにあるカラクリ湖にあるトイレ等)、③隣に座っている中国人と丸見えになりながら座るトイレ(あっちこっち)、④上下に並び、前に座っている人の物が流れてくるトイレ(あっちこっち)等、すごいトイレは、数え上げればきりがありません。

臭いに弱い友人は、いつも吐きそうになりながらトイレに行っていたものです。
筆者は、吐きそうにはなりませんでしたが、さすがに日本人同士、お尻丸出しで並ぶ勇気はなく、順番に行っていました(食べ物や油の関係、その他、標高の高い場所に行くと高山病等の関係で、トイレを利用することが多くなるのが、周りで共通した特徴でした)。

以上のように、日本の一般的な水洗式のトイレとは異なるトイレが中国には多くありますが、日本でも、今でもポットン式のトイレはありますし、山登りが好きな筆者の友人によると、日本で山登りをしたときでも、垂れ流しのトイレ等は当たり前とのことでしたので、少々汚いくらい(本当はかなりきついが)は、数十年前の日本のことを考えても、それほど特殊ではない気がします。

(1)トイレットペーパーの捨て方
その他、中国のトイレの利用方法等の事情については、様々な本などに紹介されていることからも、事情を知っておられる方が多いと思われます。
たとえば、トイレットペーパーを便器で流せず、隣に置いてある箱に入れなければならない等です。

しかしながら、筆者がタイに行ったときも、ホテルなどの外国人が多い場所以外ではトイレットペーパーを流すことができない場所がありましたし、聞くところによると、南米等他の多くの国でも同様とのことです。このことから考えると、ホテルや外国人が多い観光地に行くか、そうでない所に行くかの差が大きいのではないか、中国ばかりがこの点では特別ではないのではないのか、という気がします。

(2)トイレの鍵
しかしながら、トイレの鍵事情については、少なくとも日本とは異なる特殊性があるように感じました。すなわち、中国には閉める鍵と閉めない鍵があるのです。

閉める鍵とは、トイレそのものの入り口の鍵のことです。閉めない鍵とは、トイレに入った後の、便器のある男性で言えば、大に利用する場所の鍵のことです。

① 閉める鍵
中国のオフィスビルのトイレには、そもそも、入り口に鍵が掛かっていることが多くあります。トイレに行く場合には、そのオフィスビルで勤務している人に鍵なりカードキーを借りないとトイレにも入れない、という経験を多くします。

これは、鍵を掛けておかないと、外部から来た人等などに、トイレットペーパーや備品などを勝手に持って行かれることが多々あるという事情によるようです。

中国人の友人の中には、食事をしたりしていると、そこに置いてあるティッシュペーパーを箱ごと、毎回持って帰る人に何人か出会います。中に入っているティッシュペーパーが少ないとなぜか怒っていたりします。

こういった人に何人か出会っていると、確かにトイレの入り口には鍵を掛けた方が良いのかな、という気がする部分があります。

② 閉めない鍵
これに対して、男性が大をする方のトイレの方は、鍵をしないまま用を足す人が多い経験を、街中では多くします。

たとえば、筆者の場合、北京の中心部である王府井にある大型書店、王府井書店に行ったり、大連にある魚や野菜の市場などに行ったり等、外国人の比較的少ない街中に入って行けば行くほど、このことに気付きます。具体的には、ドアがたとえあったとしても、男性が鍵を閉めないまま、和式トイレ(「和式」という言い方ですが、要はあの形式のトイレのこと。「洋式」トイレは、街中では少ないです。壊されることを恐れてでしょうか)の入り口の方を向きながら座っていることが多くあるのです。したがい、外からは丸見えの状態になります。

これは用を足しているときに、窃盗や暴漢に遭わないように警戒してのものかも知れません。

2.トイレットペーパーの置き場所
筆者が中国に住み始め、語学学校に通い始めたときに気付いたトイレの特徴としては、トイレの中にはトイレットペーパーがない、というものでした。このようなトイレは他にも多くありました。

では、トイレットペーパーは、どこにあったのでしょうか。

この語学学校には、阿姨(ayi=アイさんと呼び、掃除や雑用をしてくれるお手伝いさんのこと)がいる共用部分があったのですが、ここにトイレットペーパーが置かれていました。我々の語学学校は、1対1の授業を特色とする学校だったのですが、私は休み時間になるたびに他の講師の休憩場所にもなるこの共用部分に行き、阿姨(日本人の語学レベルを全く無視し、話まくるおばちゃんで、良い練習相手)や他の講師と中国語会話の練習をしていたのですが、その共用部分にあったのです。

トイレに行きたい人は男の人(筆者が通っていたときの生徒は全員男性でした)も女の人(講師は、筆者の午前の講師以外は全員女性でした)も、自分が利用する分だけ、皆の前で、トイレットペーパーを手に巻き取って、トイレに持参していたのです。

筆者には少々抵抗感もあったのですが、中国人講師たちを見ていると、何も特別なことではなく、当たり前のことのように、普通にこの状況を受け入れ、皆でトイレットペーパーを巻き取って持っていっていたのです。他の生徒の講師には、20代の女性講師も何人かいましたが、年齢の差や男女の差に関係なく、これが普通の状況だったのです。

筆者が通い始めたばかりの語学学校は、専門の校舎ではなく、外部の貸し教室を借りていたため、外部の人間も普通に中に入って来ることの出来る場所でした。そのため、盗難防止の意味合いが強かったかも知れません。

このように、中国各地で出会ったトイレは、そこで住む人、仕事をする人の状況を表す一面があったように思われます。

中国人は、56の民族を有し、広大な面積を保持します(ヨーロッパの2倍近い面積)。中国は、民族により性格が大いに異なり、同じ民族であっても、地域によって大いに性格が異なります。そういったことを知る一助に、各地のトイレ事情はなるように感じたのが、筆者の現場体験です。


※タジキスタン共和国との国境近くにあるカラクリ湖  海抜3,600㎡、後方は7,000m級の山々

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