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【コラム】中国現場体験記(3) 差不多

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年5月9日

記事概要

中国人が好む言葉に「差不多(cha bu duo)」というものがあります。今回は、中国人(漢族)の真髄を示す「差不多」に関するエピソードです。

筆者は昨年8月まで中国で留学をしておりましたが、今回は、履修していた過程を修了したため修了証を受け取りに大学まで行ったときのエピソードを紹介いたします。

1.中国の大学
中国の大学院で履修していた課程を修了したため、そのとき筆者は、大学から修了証を取得しようとしていました。ここで、またまた中国らしさ、中国の大学らしさに出会ったのです。

そもそも入学の際にも大変な目に遭っていました。中国の大学は大学教授も兼ねている中国人弁護士の友人が言っていたのですが、もっとも官僚らしい不親切な場所の一つとのことです。

科目登録(そもそもいつ科目登録や授業が始まるか、何の科目があるか等もその時になってみないと全てわからないというのが中国の大学)に行ったところ、留学生事務所の建物が解体工事中でなくなっており、移転先も不明で、周りの中国人何人にも聞くも、たらい回しにされました(私は担当ではない、向かいの部屋の人間がそう、と言う。向かいの部屋に行くと、私ではない、3階の人間がそう、と言う。3階に行くと何を言っているのかわからない中国語の話し方で、俺は担当ではない、と言う等)。

また、連絡先、科目登録の方法は、日本のように親切に書面やメール等では教えてくれません。全てがそのときそのときに突然、口頭で発表されるため、そのときそのときに中国語で言われることに対応しなければならないのです。連絡先電話番号等も突然口頭で言われるため、メモする暇もないほどでした。

その他にも、入学許可の書類に印鑑を取得するのも、自分1人でしなければならず、大量の印鑑(入学許可証には何人もの大学責任者の押印が必要)を1人1人探し出して、一々説明しながらようやく押印してもらいました。とにかく、留学生のあまりいない大学に、一般の中国人学生に混じって一般コースに入ったせいもありましたが、外国人相手に親切にしてくれるということは一切ありませんでした。

おかげで筆者にとっては、否応無しに、本当の中国を知る良い機会になりました(当時は留学生慣れしている大学の留学生コースを選ばなかったことを心の底から後悔していましたが・・・)。

2.相変わらず
入学の際にも大騒動の大学院で、今度は全過程を修了したときにまたまた修行が始まりました。修了証を取得しようとしたところ、中国らしさ、中国の大学らしさにまたまた出会ってしまったのです(と言っても、既に何度も体験済みであるため、予想通りの内容ではありましたが・・・)。

その時までに筆者は、修了証を入手すべく、大学の担当者と連絡を取り合っていましたが、出来たら電話をすると言われていたにもかかわらず、この担当者は何もせずに夏休みに入ってしまいました。別の職員にも連絡しましたが、さらに印鑑を押す人を含め全職員が夏休みに入ったため、修了証を今は作成できない、とのことでした(今を逃すと筆者は修了証をもらえないまま、帰国する羽目になる。そうすると、一生もらえない気が・・・)。

中国の大学では黙っていては誰も何もやってはくれず、遠慮のない中国語でやり取りをして、押しに押さないと、何も前には進まないことが教訓として染み込んだのです。

3.差不多(cha bu duo)
そうこうしていたある日、突然、大学の担当者から筆者に電話が入り、「今なら印鑑を押す責任者が登校しているから、今すぐ大学に来るように」、とのことでした。筆者は他の学生とは異なり学内にある学生寮には住んでいなかったため、慌てて登校しました。

そうしたところ、突然、修了証を渡され、「これで良いでしょ」と言われたのです。このときの筆者には、感無量、苦労が実った、という思いが込み上げてきました。

ところが。よくよく見れば、筆者の生年月日が1日違うではないですか。中国人の友人を始め周りから日本人らしくない、と言われていた(けなされていた?)筆者は、1日の違いくらい差不多(cha bu duo)か、と思ってしまったのです。

差不多(cha bu duo)とは、「同じようなもの。大体」と言った意味です。中国人の友人や中国慣れした日本人の友人に言わせると、「日本人は神経質に事細かく結果に影響しないことを気にする。差不多(cha bu duo)で良いではないか」、とよく言われます。この差不多(cha bu duo)文化に染まっていた筆者は一瞬、誕生日の1日違いくらい差不多(cha bu duo)か、と思ってしまったのです。

中国で知り合った中国人の中には、当局が名前を一文字間違えたから、戸籍の名前と身分証明書の名前が異なると言っていた人や、本来は1枚しか発行されない身分証明書を2枚持っている、という人にも出会います。また、2枚あったほうが便利だから、紛失した、ということにしてもう1枚発行してもらった、という人にも出会います。

【参考:用語解説】
※ 身分証明書
中国には身分証明書制度があり、成人(18歳)になれば、公安局から身分証明書が発行されます。この身分証明書を確認すれば、その人の姓名、性別、民族、生年月日、住所を確認できるのです。中国人は、飛行機の国内線に乗るにも、寝台列車(都市に来ている労働者が帰省する際には飛行機ではなく、寝台車や長距離バスを利用するのが通常)などに乗車するにも、その他各種場面で、身分証明書の提示が要求されるため、日本における身分証明書(免許証など)よりも大きな意味を有するのです。詳細は、『中国のビジネス実務 人事労務の現場ワザ Q&A100』(共著、第一法規株式会社、2010年10月)をご参照ください。

しかし、そのとき筆者は何とか踏みとどまり、「生年月日が違うから、直して」と依頼したところ、「差不多(cha bu duo)ではないか」、とぶつぶつ言われましたが、何とか作り直してもらえました(こんなに簡単に作れるのなら、さっさと作って)。

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