こんにちわ、ゲストさん

ログイン

【コラム】中国現場体験記(63) いざ青海省、チベットへ~青海省で出会った「見た目が大事」~

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

無料

2013年4月8日

筆者は今まで、首都北京はもちろん、チベット族居住地域やチベット仏教信仰地域である雲南省シャングリラ、内モンゴル自治区フフホト、河北省承徳などで、多くのチベット仏教寺院を訪れ、多くのチベット族と出会ってきましたが、実はチベット自体には行ったことがありませんでした。何としても一度は本拠地たるチベット/ラサにチベット鉄道を使って行きたいという願望もあり、ある日、ようやく青海省、チベットへ旅をする機会がやってきました。今回は、青海省での経験、およびガイドであったチベット仏教信者である土族(トゥー族)女性の口から飛び出した「見た目が大事」に関するエピソードを紹介します。

1.青海省の省都/西寧で出会った少数民族
青海省の省都/西寧の空港は、省都の空港としては有数の小ぢんまりとした空港でした。筆者は、直接ラサには飛行機で入らず、西寧経由にて、列車で入ることにしていました。以前、標高1,900mの雲南省の省都/昆明経由で、標高3,400~4,100mの雲南省シャングリラ(チベット族の街)に入った時と同様に、高山病(高原反応)対策としての理由もありましたが、わざわざ青海省の省都/西寧経由するのは別の大きな理由がありました。それは、西寧がチベットのラサに通じるチベット鉄道の玄関口だからです。チベット以外の地域にあるチベット族居住地域を一緒に回っていた友人は、この旅のハイライトをこのチベット鉄道乗車としていたほどです。西寧からラサまではチベット鉄道で24時間の乗車となります。北京からラサまで乗ると、47時間強かかるため、約半分の時間で済みます。半分と言っても、丸一日の長い旅となります。

西寧空港に到着し、荷物をピックアップした筆者を待ち受けていたガイドは、中国に55ある少数民族の一つ、土族(トゥー族)の女性でした。見た目では、漢族との違いを感じることができない少数民族でした。土族は、筆者が中国の南方で出会って来た他の少数民族同様、細かいことにこだわらない気性の穏やかな民族だと感じました。ガイドの女性は、「チベット仏教信者」とは言っていたものの、チベット族のような熱心な信者と言うわけではなく、無宗教の日本人が「仏教信者」というぐらいの軽い感じに受け取れました。チベット族の知人が、「彼らはチベット仏教を理解しているわけではないからね」と言っていたのが印象的でした。

西寧の街には、土族の他、イスラム教徒の回族(見た目は漢族と同様の人が多い)、サラール族(トルコ民族系)の人々が多くいました。西寧にはチベット族も多く、青海湖近くの食堂にいたウェートレス数人は皆チベット族でしたが、それぞれに全く違った目の色と外見でした。西寧市内のイスラム料理(清真料理)の店のウェートレスも、イスラム教徒である回族やサラール族でしたが、同じ民族でもそれぞれに異なっていました。西寧の少数民族には、混血の方が多かったようです。

2.タール寺(クンブム)で出会った「見た目が大事」
西寧で主に観光することにしていたのは、ジョン・カパ(ツォンカパ)ゆかりのタール寺(クンブム)と中国最大の湖であり、世界でも有数の面積を誇る内陸塩湖である青海湖でした。青海湖は、唐の王室から吐蕃王ソンツェン=カンポのもとに嫁入りした文成公主ゆかりの日月山(標高3,500m)と一緒に、2日目に観光する事にし、1日目はタール寺(クンブム)に行きました。あるチベット族の知人は、「タール寺は、ダライ・ラマおよびパンチェン・ラマの先生に当たるジョン・カパ(ツォンカパ)ゆかりの寺。しかしながら、現在は、漢族の坊主ばかり。彼らは、お経も読めなければ、チベット仏教のことも何も知らない。商売人であって、真の坊主ではないと口を極めて言っていたのが印象的でした。

タール寺のロウソクのようなバター油を燃やす火とその油の匂いは、チベット内にある他のチベット仏教寺院と同様でした。しかしながら、お供え物としてなみなみと注がれた白酒の香りは、酒ではなく貧乏な人でも平等にお供えできるようにという意味で水しか備えていなかった、チベット内にあったチベット仏教寺院との相違を大きく感じさせるものでした。

タール寺でジョン・カパ(ツォンカパ)由来の大銀塔を見ていたときのことです。ガイドがさらっと、「この塔が大銀塔です。1年前までは銀色でしたが、今は金を塗ってあります」と言いました。筆者は、「大銀塔なのになぜ金?しかも1年前という直近になって、なぜ歴史ある建造物を金に替えた?」と疑問に思いました。それこそ、たとえは変ですが、「(銀は塗られていませんが)銀閣寺を、今日から金に塗り替え、金閣寺にしました」と言っているように感じたのです。

その理由は青海省の政府(漢族)が決めたからということでした。それからガイドはこう加えました「金の方がきれいでしょ」
確かに、中国人は金が大好きです。しかし、歴史ある建造物を「きれいだから」という理由で平気で金に塗り替えてしまうことは、いかにも中国人らしく感じたものです。よく言えば、非常におおらかです。
中国各地に行くと気づくことですが、中国人(特に漢族)は、歴史ある建造物をそのまま残そうとはせず、どんどんと作り変える傾向が強いように見受けられます。このとき「きれいだから」と言ったのは、漢族ではなく南方の少数民族たる土族でしたが、彼らは漢族に逆らわない融和的な民族であり、チベット族とは異なります。金が最大価値、今が一番重要と考えがちな漢族と、金は不要、時間があれば巡礼に回りたいと考えているチベット族との違いを大きく感じた部分でした。


青海省タール寺にある、バターで作った彫刻

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ