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【コラム】中国現場体験記(74) チベット人ガイドの生活実態とポタラ宮の罰則制度 

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2014年2月18日

チベットで筆者を案内してくれた男性ガイドは、筆者と広い意味での同年代だったということもあり、奥さんとの馴れ初めから子供の話まで聞く事ができました。チベット一般男性の生活実態の一端が垣間見え、楽しいひと時でした。

1.チベット人ガイドのラサでの生活実態
チベット人も最近は晩婚化が進んでいるということでしたが、彼が結婚したのは、チベットの大学で日本語を勉強していたときとのことでした。そのとき、奥さんは何と女子高生。妊娠したのが分かると、高校は退学を余儀なくなったとのことでした。しかし、子育てが少し落ち着いたところで、高校を入り直し、大学も卒業し、現在は小学校の先生をしているということでした。若いチベット人の頑張りぶりに感嘆するばかりでした。

家もポタラ宮から車で15分ほどの場所に購入したとのことでした。中国では、1㎡単位、内装費抜きで家を購入することになります。内装は別途、内装業者に依頼することになります。筆者の知人たち(漢族)は、家を購入し、内装を依頼すると、内装業者が内装をしているのを頻繁に監視しに行っていました。内装業者が手抜き工事をしないようにするためです。チベットでも、家の購入代金は年々、上昇しているとのことでした。総額で日本円にして1,500万円程度の計算になりましたが、次に聞いた収入と比較すると、楽ではないなとの思いを強くしました。
ガイドとしての1日の収入は、会社が支払うのは300人民元。ここから、政府への支払い(年金、保険等)で▲150人民元。ガイド協会への支払いで▲70人民元。従い、手取り収入としては、300-150-70=80人民元(日本円1,360円相当)とのことでした。妻と共働きではあるものの、家も購入し、子供の教育費もある中、物価の高いチベットでは、なかなか巡礼費用に充てるだけの余裕はないようでした。

漢族は持ち家を殊の外に重視します。ラサといえども、年々、漢族比率が高くなっており、漢族流の投資が進んでいることから、チベット人の風俗にも変化が見えるようになったということでした。チベットは変わってほしくない、という感慨も持ちましたが、新疆ウイグル自治区同様(ウイグル色の強い、カシュガル、クチャ、トルファンなどでも、漢族による開発ラッシュは続くようです)、チベットでも、漢族による開発ラッシュは続くようでした。各地域に住む少数民族のための開発になることを祈るばかりです。

2.ポタラ宮での制限時間と罰金制度
ノルブリンカ、セラ寺、ジョカン(大昭寺)、パルコと回った筆者は、高山病のために寝込んでいる友人を迎えに、一度ホテルへと戻りました。ポタラ宮観光の予定時間まで1時間ほどの余裕があったため、部屋で休憩することにしました。この休憩が筆者にとっては逆効果になりました。ホテルで横になっていると、次第に頭が痛くなり、高山病が悪化してきたのです。そのままの勢いでポタラ宮まで行けば良かったかも知れません。

ポタラ宮への入場時間は予約で決められます。我々の入場時間は、16時と指定されていました。また、入口から入り、すべての観光を終えるのは、1時間以内という時間制限が設けられています。

チベット人ガイド:「制限時間は必ず守ってください。制限時間を1分でも過ぎると、2,000人民元(日本円34,000円相当)の罰金を支払う必要があります。制限時間を5分超えると私は1年間ガイド証を取り上げられ、ガイドできなくなります。生活できなくなりますので、時間は必ず守ってください」
筆者たち:「わかりました」
チベット人ガイド:「残念ながら、日本人の中にも、好き放題で、時間を守ってくれない人がいますが、今回は皆さん比較的若い男性ですし、大丈夫でしょう」
元気な友人:「若くないけど、大丈夫です!」

別の機会に、別のガイド経験者から次のような話も聞きました。

ガイド経験者:「ポタラ宮は時間制限が厳しく、すぐに罰金となる。ガイドとしては、お客さん次第なので、非常に怖い。5分を超えると、1年間ガイドとしての生活ができないから無職になる。私がガイドしたある日本人団体は、時間を全く守ってくれず、制限時間を9分間超えたため、私はガイド証を取り上げられたことがあった。生活できなくなるので、観光局やガイド協会でお願いにお願いを重ねて、ガイド証を返してもらったことがある」
筆者:「返して貰えて良かったね!」
ガイド経験者:「その代り、5,000人民元(日本円85,000円相当)のお金を支払った!自腹だ!」

我々のガイドの収入80人民元/日から考えると、62.5日分に当たります。1年間、仕事を取り上げられることを避けるために、62.5日という2か月もの間、ただ働きになることに匹敵するお金を支払ったのです。お金の意味するところは言わずもがなでした。

中国各地に行くと、観光旅行に来た日本人団体客に出会うこともあります。年配の日本人の方が多くいます。黄山に行った時も、立ち入り禁止区域に入り込み、中国人から注意されていたのは、「日本人老紳士」でした。中国において、昨今、ルールを守らない日本人が増えている気もします。「今どきの若い者」の方が、紳士淑女的であることも多々あります。人のふり見て我がふり直せ、ではありませんが、「我がふり」がそこに住む中国人(今回の場合はチベット人)の生活を駄目にすることもあることに気付かされたという経験でした。

以上

Vol74ポタラ宮
※ポタラ宮

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