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【中国深読みコラム】第18回~アジアインフラ投資銀行~

中国ビジネスレポート コラム
松本 健三

松本 健三

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2015年5月8日

今年3月から現在まで中国経済で今もっともホットな話題となり、日本のメディアだけでなく、世界中が注目しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、現時点でのまとめをしたいと思います。

アジアインフラ投資銀行とは、中国が提唱し、途上国で鉄道、道路、送電網、港湾などインフラ整備に必要な資金を低い金利で貸し出す銀行です。昨年(2014年)10月24日に中国の呼びかけに応じた20カ国の財務担当代表が、北京の人民大会堂で設立に向けた覚書の署名式に参加しました。資本金は当初500億ドルでスタートし、将来的には1,000億ドル(約12兆円)規模になる予定で、その内半分(500億ドル)を中国が負担し、25%をアジア圏、残る25%を欧州などが各国の経済規(GDP)に応じて出資する予定です。現在中国の外貨準備高は3兆8,000億ドル(約456兆円)ありますので、500億ドルは1.3%に相当します。

アジアインフラ銀行が設立される背景には、急速に経済発展するアジア各国では、自国の発展に不可欠なインフラ整備に膨大な資金を必要としており、ADB(アジア開発銀行)の試算では2010年から20年までにアジア32か国で必要なインフラ需要を約8兆ドル(約960兆円)と見積もっています。既存の世界銀行やADBだけではこの資金を賄いきれず、また融資基準も厳しいことより、アジア各国はこぞって手を挙げ、一方欧州各国は出資金以上の見返りが期待できるビジネスチャンスと捉えて、3月末の創設メンバー申込み締切り前に多くの国が参加申し込みを表明しました。

4月15日、中国財務省が発表したAIIB創始メンバーは下記の57か国となりました。

欧州(18か国) ①英国②イタリア③フランス④ドイツ⑤スイス⑥ルクセンブルグ⑦オランダ⑧オーストリア⑨デンマーク⑩フィンランド⑪ノルウェー⑫スウェーデン⑬アイスランド⑭マルタ⑮ポーランド⑯ポルトガル⑰スペイン⑱ロシア
中東・アフリカ(11か国) ①トルコ②イラン③エジプト④イスラエル⑤ヨルダン⑥サウジアラビア⑦クウェート⑧カタール⑨アラブ首長国連邦⑩オマーン⑪南アフリカ
中央・西アジア(6か国) ①カザフスタン②ウズベキスタン③タジキスタン④キルギス⑤アルゼバイジャン⑥ジョージア(グルジア)
東南アジア諸国連合(ASEAN・10か国) ①インドネシア②カンボジア③シンガポール④タイ⑤ブルネイ⑥フィリピン⑦ベトナム⑧マレーシア⑨ミャンマー⑩ラオス
南アジア(6か国) ①インド②パキスタン③モルディブ④ネパール⑤バングラデシュ⑥スリランカ
東アジア・オセアニア(5か国) ①中国②韓国③モンゴル④オーストラリア⑤ニュージーランド
中南米(1か国) ブラジル

また、台湾については参加表明がありましたが、呼称問題のため創始メンバーには入りません。

そして、アメリカと日本は参加表明しておりませんが、4月18日に閉幕した国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合で、楼継偉中国財政相はアジアインフラ投資銀行とアメリカが主導する世銀が連携に関する合意に達し、AIIBは定款の草案作成に当たり、既に世銀の専門家を招いて協力を受けていると述べています。AIIBの発足後は協調融資や情報共有などの面からも世銀と連携を図るということになりそうです。こうした動きを受け、日本が主導するADB(中尾武彦総裁)は5月6日年次総会後の会見で、需要が強いアジアのインフラ整備で更に融資枠を広げるため増資を検討すると言及。増資により新興国の出資比率を高め、これまで不満があった発言権の引き上げに配慮する姿勢を示しています。

尚、参加国が57か国と当初予定より大幅に増えたため、AIIB臨時事務局が「設立に向けた一連の協議で、資本金の引き上げを提案した」と伝えられており、当初の500億ドルから1.5~2倍(最大24兆円)の規模でスタートすることになりそうです。規模が大きくなれば格付けが高くなり、融資にも余裕が出てきますが、負担が増えることに反発する新興国もあるとみられ、6月末とされる設立協定の取りまとめに向けて参加予定国の議論が続くものと思われます。

以上

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