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新型コロナウイルス影響下での中国への入国手続

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2020年8月17日

Q 弊社中国現地工場では、新たな出向者がなかなか中国に入国できずに困っています。また、2020年2月に中国に戻り勤務している日本人総経理も、持病を抱えているにもかかわらず、日本に一時帰国した場合、中国には簡単には戻ることができずに困っています。駐在員の家族も中国には戻れず、別居を続けています。

日本人駐在員およびその家族の中国入国の状況について、2020年8月11日時点の最新情報を教えてください。

A 新型コロナウイルス感染肺炎が世界で急速に蔓延していることに鑑み、中国政府は2020年3月28日より、現在有効な訪中ビザおよび居留許可を持つ外国人の入国を一時停止する措置を取っています。また、新規ビザは原則として、発行しない方針になっています。そのため、中国への入国は現状の駐在員の一時帰国後の場合にも、新規駐在員の中国入国の場合にも非常に困難なものとなっているため、注意が必要です。なお、新型コロナウイルスに関する関連政策は、各地方における新型コロナウイルスの発生状況により日々変化しうることにも注意が必要です。

1.中国現地工場への影響
(1)新規出向者・日本本社技術者を中国現地工場に招聘する場合、通常時のような形式では、新規のビザ申請が受け付けてもらえない状況にあります。
(2)既に中国での居留許可を持つ日本人駐在員(出向者)でも、日本に一時帰国した場合には、当該居留許可が無効となってしまうため、中国へは通常時の日本一時帰国のようにはいかず、そのままでは中国への再入国はできないことに注意が必要です。

2.特別ビザ申請とその前提としての特別招聘状の発行申請の必要性
特別ビザ申請とは、中国現地工場所在の省の商務庁に中国大使館宛ての特別招聘状を発行してもらい、その特別招聘状を持って在日本の中国大使館に中国入国ビザの発行申請することを指します。

新規の出向者はもちろん、既存の駐在員でも一旦日本に一時帰国をすると、居留許可が無効となるため、再度日本でビザ申請をするための必要書類として、日本への一時帰国前に中国において特別招聘状の発行依頼をしておく必要があります。

3.特別招聘状の発行申請実務
特別招聘状実務は開始時は国有企業との合弁企業とか中国国家の製造体制に大きな影響が出る製造会社は、その関連部品会社が優先されていました。実際、例えば湖北省武漢市や河南省鄭州市では、東風汽車との合弁企業やその取引先には優先して特別招聘状を発行していました。

一方、商社のような販売会社や税収が振るわない企業は、特別招聘状の申請をしてもなかなか受け付けられない状況にありました。筆者の経験では、5月中下旬から各地方政府は中国における新型コロナウイルスの鎮静化が始まっていることと、経済の回復を急がなければならないことの両面から、中国に戻って来られなくなっている駐在員や新規出向者に対して特別招聘状の発行を検討するから積極的に申請をしてみるように薦める傾向が出始めていました。

7月からは、従来はなかなか特別招聘状が発行されなかった業種も含めて、活発に特別招聘状が発行されるようになってきています。

以下の具体的な実務手続は地域によって異なり得るため、一地方の事例を挙げます。実際には各地域政府に再度確認が必要となります。

(1)特別招聘状を申請する前提条件
①中国現地工場所在の省に移動する14日以前に、新型コロナウイルスに感染する高危険地域への訪問歴がないこと。
②国際の健康コードを取得すること。
③健康であり、かつ中国に入国する72時間以内に日本政府の指定された医療機構でPCR検査を受けた結果が陰性であること。ただし、実際には日本では当該日本出国前のPCR検査は実施されてはいない模様です。
④中国入国後、中国政府の防疫政策に協力すること。具体的には以下のとおりです。
●中国地方政府の防疫政策を遵守すること。
●PCR検査、血清抗体検査を受診すること。
●隔離措置を受けること。
●隔離、PCR検査、血清抗体検査、移動等で生じる費用を企業側で負担すること。

(2)特別招聘状申請のための必要資料
①各省商務庁のビザ通知上申表
②海外人員入国申請表
③企業申請書
④当該個人の状況説明書
⑤当該入国者に何らかの問題がある場合、企業として責任を負う旨の承諾書
⑥会社概要の説明書
⑦営業許可書の写し
⑧特別招聘対象者の管轄公安局発行の出入国記録
⑨特別招聘対象者のパスポートの写し
⑩企業が採用している防疫措置説明(当該地区の審査確認が必要)

(3)特別招聘状申請資料の提出先
特別招聘状の申請の流れ:
中国現地工場⇒地元商務部門(窓口)⇒市商務局(転送)⇒省商務庁(承認)

昨今の実例では、10営業日程度で特別招聘状の電子版データの取得を受けているケースも多くあるようですが、各地方および各人ごとのケースバイケースでの判断となります。

4.ビザ申請について
(1)ビザ申請必要資料
①特別招聘状の写し2枚
②パスポート原本および顔ページの写し(余白 2 ページ以上,有効期限6か月以上)
③6か月以内の証明写真(4.8×3.3cm/カラー/背景は白)1枚
④中華人民共和国ビザ申請表(以下よりダウンロード)
https://bio.visaforchina.org/TYO2_JP/generalinformation/downloads/index.shtml
⑤直近の中国ビザの写し(大使館や領事館が発行したもの)と直近の中国居留許可の写し(中国当地が発行したもの)(※もしあれば)
⑥旧パスポート原本と顔ページの写し(※もしあれば)
⑦外国人工作許可証カードを所持している場合、当該カードの写しと工作許可証カード上のQRコードを読み取った内容の写し(※所持者のみ)

(2)ビザ申請資料の提出先および所要時間
在日本中国大使館/領事館に申請資料を提出し、申請後約1週間で受領出来る模様です。
東京ビザセンターは、新型コロナウイルスの関係上オンライン申請とオンライン予約制となっています。

5.中国入国後の隔離措置
外国入国者は中国入国後、基本的に現地で隔離されることになります。以下では、上海市の空港に到着後、省を跨いだ浙江省所在の現地工場に赴任する事例における流れを紹介します。2020年7月27日からは以下の措置となっていますが、地域によっては異なる期間の隔離が行われることもあるため、注意が必要です。

①上海市の空港(浦東空港・虹橋空港)に着陸後、上海市内の集中隔離指定ホテルに政府手配のバスで移送されることになります。そこで7日間の集中隔離を受けることになります。7日間のホテル宿泊費用は会社負担となります。

②集中隔離最終日の5日前にPCR検査が行われます。当該検査費用も会社負担となります。

③検査で陰性結果となれば、8日目に政府手配による人員とその交通手段で浙江省の中国現地工場所在市に移送されることになります(上海市で駐在する駐在員は、7日間の集中隔離後、更に7日間の在宅隔離健康観察となります)。

④浙江省の中国現地工場所在市で7日間の在宅隔離健康観察が実施されます(在宅隔離健康観察が認められるのは、隔離対象者が一人一部屋を確保できる場合か、同居の方も同様に在宅隔離健康観察を承諾する場合に限られます。在宅隔離健康観察の条件を充たさない場合には、引き続き7日間の集中隔離が実施され、合計14日間の集中隔離となります)。
在宅隔離健康観察終了前に2回目のPCR検査が行われます。上海市での集中隔離7日間と合計すれば14日間もの間、会社には出社できず、外部との接触も制限されることになります。また、一部のホテルでは宿泊拒否することもあるため、事前確認が必要です。

⑤浙江省での在宅隔離健康観察が終了し、2回目のPCR検査結果も陰性の場合に初めて出社することが可能となりますが、以下の条件を遵守しなければならない、というような条件を課されることがあります。
●出勤期間中はマスクを常時着用すること。
●出退勤時、工場入口門の守衛所にて、体温確認および健康コードが緑色であることの確認を受けること。
●出勤期間中の食事は弁当方式でなければならないこと(共有料理は禁止)。
●社内においては3回/日の消毒を実施すること。

6.その他注意点
(1)現状、中国入国のための航空券の予約は非常に難しく、また非常に高額となっています。そのため、金銭負担面でも企業としての判断が必要となってきます。

(2)中国入国前に、「省入国人員情報事前報告プラットフォーム」に情報登録すること必要です。フライト・入国時間等の情報の登録が必要となります。入国時や各省への入境時には当該事前登録情報との照合が行われます。

(3)中国入国後、隔離期間があるため、入国後すぐには業務を行えないことを想定しておく必要があります。また、特に集中隔離期間中はホテルによっては、エアコンを使えなかったり、完全に外部との接触が途絶え、差し入れ等の入手もできなくなるため、そのことを事前に想定しておく必要があります。

(4)2020年8月11日現在、中国到着後7日間のホテル集中隔離と7日間の在宅隔離健康観察が必要であることから、外部との接触が合計14日間も途絶えることになります。このため、少なくとも通常のビジネス出張者の中国訪問は現状では現実的ではありません。また、駐在員が先に中国に赴任している場合に、妻子だけで中国に戻ることもハードルが高い状況にあります。

以 上

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