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【コラム】中国現場体験記(20) 激烈競争社会子供編

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年8月10日

記事概要

中国人は、小学生の段階から、もっと言えば、母親のお腹の中にいる段階から、激烈な競争社会の中にあります。今回は、筆者が中国各地で実際に見て、また中国人の友人たちから聞いた、子供たちを取り巻く中国の競争社会に関する現場体験記です。

筆者が中国現地において感じるのは、現在の中国が大変な格差社会だということです(日本でもあまり見ないような、最高級の外車を乗り回している若者が多くいる反面、洞穴の中に住んでいる人たちもおり、日本とは比べ物にならない格差社会)。

中国人の子供たちは激烈な競争社会の中に放り込まれており、日々、大変な努力をしています。一方、戸籍による制限があるため(詳細は、「奥北CIAの中国現場実務Q&A Vol.12 戸籍制度」をご参照ください)、戸籍所在地以外の小中学校への進学がままならないといった現実があります。たとえば、貴州省の農村出身の子供(貴州省の農村戸籍)は、親が北京に出稼ぎに出てくるのに付いて来たとしても、北京の小中学校へは高額の助成金を支払わない限り進学できないのです(「【コラム】中国現場体験記(7)トイレ屋商売とたくましさ」に登場する北京のトイレ屋家族もご参照ください)。

1.中国人の小学生を取り巻く環境
(1)両親は、夫婦共働きまたは出稼ぎ中
中国では夫婦共働きが通常です。女性も社会に出て働くのが都市部でも農村部でも当然のことであるゆえ、結婚退職のような概念はなく、女性は結婚しても専業主婦にはなりません。筆者の中国人の友人たちも夫婦共働きであり、子供の面倒は、夫婦の両親(祖父母)と一緒に総動員体制で行っています。

ある友人の奥さんは、一時期海外勤務をされていましたが、その間は、友人の母親が、わざわざ南の海南島から北京にまで住み込みでやってきて、子供の面倒を見ていました。

(2)送り迎え
日本では、幼稚園に通う子供は送迎バスまで親が連れて行くことが多いですが、子供が小学校に進学すると、地域の子供同士で登下校するようになります。また、夫婦共働きの日本人の場合、両親(祖父母)の援助が得られなければ、学童保育の方や子供サポートサービスなどの方が小学校まで迎えに行ってくれるサービスも昨今増加しています。

一方、中国では、中国人エリートの子供たちは、親が自ら送り迎えすることが多いようです。その理由を日本留学経験もある中国人弁護士に聞いたところ、「中国では子供の誘拐が多い。そういった子供が、手足を切られるなどして障害者にされてしまったうえ、乞食にされる事件が多発している。子供を誘拐して乞食に仕立て上げるような悪いことをする組織が残念ながら中国には存在する。地下通路などにも、そういう子供がいるのを奥北も見ることがあるでしょ?新聞などでも子供を捜索する広告をよく見るし」との事で、つまり治安が悪いため子供たちだけでは登下校させられないのでした。

(3)教育社会
こういった厳しい環境の中、エリートも農民も皆が皆、大変な教育加熱社会の中にあり、その中で我が子が勝ち残れるよう、家族総動員で援助体制を敷いているのです。
農民の中には、子供を何とか大学に進学させる事ができれば、結果、都市戸籍を取得でき、自分とは違う人生が開けると信じている人が大勢います。

筆者の知り合いにも、兄弟の中で最も優秀な子どもに希望を託し、その教育資金を家族全員で必死に稼いでいる人がいます。彼らに聞くと、たとえば、弟を進学させるため、自分は学校にはろくに行かずに働きに出て、せっせと仕送りをしている人も多くいるのです(「【コラム】中国現場体験記(9)月光族」もご参照ください)。何としてでも、家族の誰か一人が競争社会で勝ち残れるように、皆必死なのです。

(4)北京の違法バイクタクシー家族
筆者が北京で語学学校に通い始めたとき、近くの地下鉄駅の周辺で何台かの違法バイクタクシーが公安の目を盗みながら商売をしていました。その中に、夫婦で2台のバイクタクシーを運転している人たちがいました。徒歩で登校していた筆者は、毎日、彼らを見かけていたのですが、いつも母親のバイクに二人乗りして付いて周っている3歳くらいの子供がいました。筆者の子供と同年代であったため、その子供の将来について思いをはせてしまったものです。

彼らのように北京などの都市戸籍を有しない農村戸籍の人には、居住関係・就職・学校入学等様々な点で、大きな制約があります。彼らが貧困のスパイラルから抜け出すことは容易ではありません。このスパイラルから抜け出す可能性を少しでも見出すためにも、一族に一人でも学歴を有し、都市戸籍を有する家族を作り上げる必要があるのです。

2.親の教育参加
(1)親のサイン欄
中国では、親も否応なしに子供の教育に参加させられます。中国人の友人たちに聞くと、子供に毎日出される大量の宿題に、親までが四苦八苦しているそうです。

ある友人の子供は小学生だったのですが、やはり大量の宿題を出されて帰ってきていました。その宿題は、子供だけではとても片が付くものではなく、夫婦共同で一緒に見ないといけないものでした。また、親が責任を持って子供の宿題を見たと証明するためのサイン欄まで設けられている、とのことでした。

筆者が冗談で、「子供が親の筆跡を真似てサインするのでは?日本ではそこまで宿題は厳しくないのが通常だし、親にまで宿題参加させるようなことはないよ」と言ったところ、「中国では学校の教師が絶対だし、そんなことはできないよ。そもそも親が宿題を一緒に見て、家族ぐるみで子供の教育に取り組まないといけないのが中国の現状だからね」とのことでした。

(2)エリート教育とゆとり教育
一時期日本ではゆとり教育が提唱されていました。また、日本の小学校教育の多くは中間層の子供に照準を合わせており、落ちこぼれを作らないような教育が行われています。周りの親たちもそのように感じているようです。

しかし、中国では真逆で、明らかにエリート教育です。小学生であっても容赦なしに、教育は成績が上の子供に合わせて行われ、着いて来られない子供は脱落して結構、という厳しいものです。

筆者が忘れられない中国人の友人の言葉があります。
「奥北も子供を中国の学校に進学させれば?日本人学校ではなく、中国の上位に位置する1級小学校に行かせて鍛えれば、日本に帰ったら子供の成績は一気にトップ。世界の4分の1の人間が話す中国語もべらべら。これからは中国の時代だよ。」

3.英国社会との比較
最後に、英国駐在歴が長い方から聞いた話を元に、欧州のうち、英国社会と中国社会との共通点・相違点を比較検討します。その方曰く、「中国がこれから世界をリードするには、ノブレス・オブリージュの教育を受けた人をどのくらい輩出できるかと思う。」とのことでした。

(1)共通点
①送り迎えを家族等が行う
Kid Napping(誘拐)を避けるため

②競争が激しい
但し参加者は英国の場合は階級社会の上のみ(中国は戸籍の問題はあるものの、原則全員参加型)

③社会構造
中国は格差社会、英国は階級社会

(2)相違点
中国のエリートは自分と家族の幸せを追求し、英国のエリートはノブレス・オブリージュ(高い身分に伴う身分であり、人に寛大で立派に振舞うこと)を徹底的に仕込まれる。

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