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妊娠中の女性従業員の無断欠勤は解雇可能か否か

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2013年8月21日

妊娠中の女性従業員が会社の規則制度に従った病気休暇申請を行わずに(如何なる病欠証明も提出せず、上司や同僚への電話説明なども行わず)、一定期間欠勤した場合、無断欠勤として解雇することは可能か否か。
妊娠中の女性従業員に対する管理は、実際に企業が頻繁に直面する問題であり、以下に筆者は本問題について簡単な分析を行った。

妊娠中の女性従業員は確かに法律の特段の保護を受けてはいるが、その保護は絶対的なものではない
使用者が妊娠中の女性従業員との労働契約を解除(以下、「本件解除」という)できるかについて、主な法律根拠となるのが「労働法」第29条、「婦女権益保障法」第27条、「労働契約法」第42条、および「女性従業員労働保護特別規定」第5条などの規定である。

前述の規定に基づいて、妊娠中の女性従業員は法律の特段の保護を確かに受けてはいるが、関連規定は使用者は如何なる状況においても本件解除を行ってはならないと絶対的に禁じている訳ではなく、単に使用者による本件解除禁止の具体状況を挙げているに過ぎない。これらをまとめると、使用者は以下の状況において、本件解除を行ってはならない。
1)女性従業員が妊娠したという事実自体を理由に、本件解除を行う。
2)女性従業員の妊娠期間中に、女性従業員を「無過失性解雇」の対象にする(女性従業員が業務に堪えないこと、または客観状況に重大な変化が生じたことなどを理由として、一ヶ月前通知あるいは別途に解雇予告手当を支払う方式で解除することを含み、主な根拠は「労働契約法」第40条である)。
3)女性従業員の妊娠期間中に、女性従業員を「経済的人員削減」の対象にする(主な根拠は「労働契約法」第41条である)。

妊娠中の女性従業員に重大規則違反などがあった場合は、依然として使用者は解雇することができる
現行法の規定によれば、以下の三つの状況においては、依然として妊娠中の女性従業員との労働契約を解除可能である。
1)使用者と妊娠中の女性従業員が労働契約の解除に協議の上で合意した場合(主な根拠は「労働契約法」第36条である)。
2)女性従業員が自発的に労働契約の解除を申し入れた場合(主な根拠は「婦女権益保障法」第27条、「労働契約法」第37条および第38条である)。
3)使用者が「労働契約法」第39条に定められた状況を理由に労働契約を解除する場合。その具体状況には以下のものが含まれる。
A.妊娠中の女性従業員が試用期間において雇用条件に合致しないことが証明された場合。
B.妊娠中の女性従業員に使用者の規則制度に対する重大な違反があった場合(「重大規則違反」)。これは実際に適用される可能性の最も高い状況である。
C.妊娠中の女性従業員に重大な職務怠慢、私利不正があり、使用者に深刻な損害を与えた場合。
D.妊娠中の女性従業員が同時にその他の使用者と労働関係を確立したために、使用者の業務任務の完了に重大な影響を与え、または使用者が指摘したにもかかわらず是正を拒んだ場合。
E.妊娠中の女性従業員に「労働契約法」第26条第1項第1号で定める状況(「詐欺、脅迫などの手段をとる、または相手方の苦境に付け込んで、相手方の本当の意思に背いた状況で労働契約を締結あるいは変更した場合」)があり労働契約が無効となった場合。
F.妊娠中の女性従業員が法により刑事責任を追及された場合。

もし妊娠中の女性従業員が会社の規則制度に従った病欠申請を行わずに一定期間欠勤した結果、重大規則違反の基準に達したならば、会社は重大規則違反を理由に妊娠中の当該女性従業員を解雇することができると筆者は考える。

実際の司法裁判においても、妊娠中の女性従業員が重大規則違反を理由に解雇されたケースは少なくなく、例えば以下の通りである。
・「孫某と西徳科東昌汽車座椅技術有限公司との労働契約紛争案」【(2011)滬二中民三(民)終字第387号】においては、上海市第二中級人民法院は、「孫某は妊娠中ではあるが、西徳科東昌社の規則制度に違反したため、依然として労働関係を解除できる。」と判断している。
・「胡某と中山大学達安基因股・有限公司との労働契約紛争案」【(2009)蘿法民三初字第870号】においては、広東省広州市蘿崗区人民法院は、「『労働契約法』第四十二条に、女性従業員が妊娠期間、出産期間、授乳期間にある場合、使用者は労働契約を解除してはならないとの規定はあるが、同時に労働者に『労働契約法』第三十九条で定める状況が存在する場合においては、使用者は『労働契約法』第三十九条の規定に基づいて労働契約を解除することができる。本件原告は既に妊娠しているが、5日連続の無断欠勤という行為は被告の規則制度に著しく違反しており、被告が労働組合の同意を得た上で、原告に対し労働契約を解除する処理を行ったことは、不当ではない。」と判断している。

また、筆者のこれまでの実務経験においても、同様の実例は少なくない。

使用者が重大規則違反のあった妊娠中の女性従業員を解雇する際の留意点
第一に、法律の面から、規則制度の有効性(合法、合理)を確保しなければならず、特に制定過程における民主的手順、公示手順を踏むことに留意する。

第二に、妊娠中の女性従業員の重大規則違反に関する証拠資料の保管に留意する。例えば、妊娠中の従業員の出退勤記録、妊娠中の従業員に対し規則違反行為の是正を要求する通知または録音(例えば、電子メール、電話などの方法で正常出勤を求める)、内部の規則違反処分決定など。この他、解除を行う際には、労働組合(ある場合)へも通知した上、EMS、更には公証送達などの有効な方法で契約解除通知書を郵送し、関連郵送証明を保管しなければならない。

なお、法律の規定および実際の司法裁判のいずれもが使用者による重大規則違反のあった妊娠中の女性従業員の解雇を支持しているとはいえ、妊娠中の女性従業員の特殊性により、会社が処理を誤れば、容易に矛盾を生じるため(例えば、女性従業員の家族が、本人の情緒への影響は胎児の健康にも影響するなどの理由で、会社に来てもめ事を起こし、会社の日常業務に影響が出るなど)、実際に処理する過程においては、やはり慎重で人道的な応対をすることを提案する。妊娠中の女性従業員が電子メールを受け取れない、または携帯電話の使用頻度が少なくなるなどの状況が予想されることを考慮し、その休暇申請、休暇の事後申請および診断証明などの方法と時間については管理の幅を持たせ、または、例えば電子メールおよび電話での連絡以外にも、直接見舞いのために訪問し、事実状況を確認するなども考えられる。

(里兆法律事務所が2013年5月20日付で作成)

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