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ログイン2013年8月20日
食堂車の予約を済ますと、間もなく消灯時間となりました。そこで、筆者は歯磨きをしに、チベット鉄道車内の洗面所に向かいました。
1.チベット鉄道車内の洗面所は?チベット鉄道には、いろいろな種類の座席があります。筆者が利用していた軟臥(1室4人の部屋、2段ベッドが左右に2台ある)は、寝台列車たるチベット鉄道の中では最高級の座席になります。青海省西寧からチベットのラサまでで、770人民元(日本円で12,300円相当)です(現在、上海の1ヶ月あたりの最低賃金は1,620人民元)。横になって寝ることもできますし、部屋にはドアも付いています。中国では、旧正月(春節)などに帰省する際、飛行機を利用できるのは一部の人です。飛行機はチケット代がどうしても割高だからです。そのため、一般的には若い女性でも一人で寝台列車に乗車します。若い女性の場合は、硬臥(1室6人の部屋、3段ベッドが左右に2台ある)を好みます。軟臥よりは劣るものの、ドアがないため、密室にはならないからです。
この他に、ベッドの付いていない座席(硬座)で、チベットに向かう人も多くいます。チベット鉄道は、西寧からでもほぼ丸1日の行程となるうえ、北京からであれば、丸2日もの行程となります。しかも、標高5,000m超の地域を走るため、硬座での移動は過酷です。中には、硬座ですら確保できなかったのか、それとも横になりたいのか、通路に寝転がっている人たちもいました。軟臥の車両と硬座の車両との間のドアは鍵が掛けられており、軟臥の車両には自由に入って来られなくなっていました。
筆者が歯を磨いていると、隣にいた男性は、洗面器でせっせと両足を洗っていました。隣にいた女性も足を洗っており、最後にコップに注いだ水を床がびしょびしょになることも気にせず、足に掛け流していました。次に来た男性は、タンブラーの中のお茶の葉が排水口に詰まることを気にもかけずに、洗面器に捨てていました。
トイレももちろん、床はびしょびしょ。何度もつまり、いろいろな物体が溢れ返っていました。次の日、ゴルムド駅で一度、トイレの詰まりは修繕されたものの、またすぐに詰まっていました。ただでさえ、水の流れが弱く詰まりやすいところに色々な物を捨ててしまうからです。筆者は、比較的きれいなトイレを探して利用しましたが、鍵は閉まりませんでした。若い中国人カップルは、女性がトイレに行っている間、男性が見張りをしなければいけません。友人が用を足していると、お尻丸出しの状態であるにもかかわらず、ドアを開けられたと言っていました。中国人の知人の中には洋式で用を足すのを嫌がり、便器の上に靴で上って、それから用を足す、という人もいました。
2.「やりたいようにやる」漢族と「恥」の概念
席に戻り、友人に洗面所やトイレで見てきたことを話していると、ある友人は、「今は少なくなった日本の夜行列車に、学生時代から何度も乗車してきた。日本の夜行列車も、戦後の頃と比較すれば、今の中国と似たりよったりだったのではないかな」と達観していました。
別の友人は、「“神の存在”(キリスト・イスラムのような一神教であっても八百万の神のよう多神教であっても)を感じているか否かで“人間度”“民度”が変わってくるように思う。日本人・チベット人・西洋人は、良くも悪くも神の存在を畏れ多いと思っており、
⇒ いつも誰かが見ている、
⇒ だからこそ、人としてあるべき姿を目指そう、
⇒ そうでないと幸福になれない、罰が当たる、
という思考回路になるので、人間らしさを保てるが、漢族はそのような信仰がないので本能のままに行動するのでは?」という意見でした(ただ、中国人は弱者に優しく、公共の乗り物では必ず席を譲りますが、日本人は寝たふりをすることも多いため、中国人にも日本人にも、良いところもあれば悪いところもある、ということかも知れません)。
確かに、漢族の友人たちと話していても、多くの人は無宗教です。儒教信者でもなければ、道教信者でもありません。ある意味、(クリスマスも祝えば、神社にも寺にも行く)多くの日本人のように何でもありの無宗教ではありますが、漢族は、「自分のやりたいことをやりたいようにやる」という意志が強く、日本人のように“恥”という概念は希薄ではないかと思います。日本人の言う“恥”の概念と、漢族が大事にする“面子”とは全く異なるように思うのですが、チベット鉄道車内での出来事一つを取ってみても、おもしろい経験は尽きません。
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