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「独占禁止法」の最近の法令執行の動き

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2014年7月23日

賞罰措置を組み合わせた「希望小売価格」方式は、リスクが著しく高まった

先頃、国家発展改革委員会(以下、「国家発改委」という)は、北京、上海、広東の3つの地域の価格主管部門に対し、「独占禁止法」に照らし、眼鏡産業の主なレンズ製造企業において存在する川下代理店の再販価格を制限する競争を排除する行為を処罰するよう指示し、その罰金額は1,900万人民元余りに達する。

国家発改委が事実を照会したところ、一部の主なメガネフレームのレンズ製造企業およびコンタクトレンズ製造企業においては、川下代理店に対し異なる形式での再販価格維持を行うよう求めることが一般的であり、レンズの再販価格を固定しまたはレンズの最低再販価格を制限する行為が存在していたことがわかった。

・本案件に関与する一部の企業は代理店との間で再販価格を限定する条項を含む「販売契約」を締結し、且つ代理店に対しては厳格に自己の制定する「希望小売価格」に基づきレンズを販売するよう要求し、再販価格を直接に維持していた。
・本案件に関与する一部の企業は自己の全国または重点都市の直接供給小売店と年間を通じて「3個購入したら1個おまけ」の販促活動を実施しており、つまり各小売店は製造企業の「希望小売価格」の25%引にてレンズを販売していたに等しく、実質上、再販価格を維持していた。
・レンズの市場価格システムが維持されるよう、本件に係わる企業は通常、制裁措置を講じて拘束を行っており、例えば、保証金の減額、販売リベートの取消し、罰金、商品供給の停止、口頭(メール)での警告などである。ひとたび代理店または小売店が制限された価格(割引)を破ったかまたは販促加減を無断で強化した場合、警告、商品供給の停止などの制裁が加えられることになっており、反対に、代理店または小売店が制限された価格または販促加減を厳格に遵守した場合、販売リベートなどのインセンティブを獲得することになっていた。

国家発改委は、眼鏡産業の市場規模が大きく、市場シェアを高く占める有名ブランドメーカーとして、本件に係わる企業の上記行為は、代理店の自主的な価格決定権を制限しており、「独占禁止法」第十四条の関係規定に違反し、販売するレンズの価格独占協定を取り交わし且つ実施することにより、レンズの再販価格を固定しまたはレンズの最低再販価格を制限する効果をもたらし、レンズの市場価格競争を排除しまたは弱め、公平な競争の市場秩序を破壊し、係るレンズ価格をして長期に亘り高めの水準を維持させるものであり、消費者の利益を損なったと認識した。

国家発改委は、案件に係わる企業が自主的に是正し、調査に協力するかどうか、自主的に申告したかどうかに基づき、異なる度合いでの処罰を行いまたは処罰を免除したことは(独占禁止法令執行機関に対し、独占協定取り交わしに関する状況を報告し、重要な証拠を提供し、且つ進んで是正を自主的に行った二社は処罰を免除された)、将来、企業が独占禁止調査に遭遇した際に如何に対応すべきかにおいて、参考に値するものである。

とりわけ注意すべきことは、本案件において、本案件に関与する企業と代理店との間の再販契約で約定されているのは「希望小売価格」であるにもかかわらず、国家発改委の処罰を受けたという点である。筆者の理解では、国家発改委がこの度、これらの主要な有名なレンズブランドメーカーの「希望小売価格」方式を取締ったことには、主に以下の考察および認識に基づくものと思われる。

1.案件に関与した企業がやや多く、且つその多くが眼鏡産業市場の規模が大きく、市場シェアの高い有名ブランドメーカーであり、係るレンズ価格をして長期に亘り高い水準を維持させることは、消費者の利益を損なうものであり、それは多方面に関係するものでもあり、社会での影響も大きい。(但し、国家発改委は「市場の支配的地位の濫用」を理由に取締りを行ってはおらず、それはおそらく「市場の支配的地位の濫用」の取締り基準には達していないためであると思われるが、また、「市場の支配的地位の濫用」をもって取締りを行う場合、法令執行機関の立証責任は一層重くなる。)
→注釈:国家発改委が注意を払う対象として、おそらく特定の、社会への影響が大きい産業(これまでに取締りを受けた日用品産業、白酒産業、粉ミルク産業などが含まれる)に焦点が当てられるものと思われる。

2.「希望小売価格」を約定すると同時に、案件に関与した企業は相応の賞罰措置を講じており、これらの価格または措置は実質的に、代理店が商品を再販する際の販売価格の決定権に影響し、代理店には商品再販価格に対する自主価格決定権を喪失させ、案件に関与した企業から提供された価格または設定された価格条項に基づき実施するしかなく、この種の賞罰措置を組み合わせた約定は、現在、国家発改委の注意を徐々に引く傾向にあり、且つ本案件において「再販価格の固定または最低再販価格の制限」に該当すると認定されている。
→注釈:個別のケースの状況に応じて、「希望小売価格」方式は必ずしもすべてが「再販価格の固定または最低販売価格の制限」に該当すると認定されてしまうとは限らず、これはケースバイケースで分析する必要がある。

また、情報筋によると、本案件に対する調査が発動した最初の理由は、「通報を受けた」ためとされている。筆者の推測では、案件に関与した企業が代理店との間の関係を適切に処理できていなかったために、代理店から通報されることになった可能性も有り得ると思われる。

以上から、本案件の状況を見る限りでは、賞罰措置を組み合わせた「希望小売価格」方式はリスクが著しく高まっている。勿論、個別のケースの状況に応じて、ケースバイケースで分析を行う必要があることから、関係企業(とりわけ、係る産業において市場規模がやや大きく、市場シェアの高い有名ブランドメーカー)は遅滞なく関心を払い、内部で検討を行い、必要に応じて弁護士に確認し、係る販売政策を調整するとよく、筆者としてもこのテーマには引き続き関心を払いたい。

【備考】「独占禁止法」の関係条文は以下の通りである。
・第十四条:事業者と取引相手が下記の独占協定を取り交わすことを禁止する。
(一)第三者への商品再販価格を固定する。
(二)第三者への商品最低再販価格を制限する。
(三)国務院独占禁止法令執行機関が認定するその他の形式での独占協定。
・第四十六条:事業者が本法の規定に違反し、独占協定を取り交わし且つ実施した場合、独占禁止法令執行機関が違法行為の停止を命じ、違法所得を没収し、且つ前年度売上高の1%以上10%以下の罰金を科し、取り交わした独占協定をまだ実施していない場合は、50万元以下の罰金を科すことができる。事業者が自主的に独占禁止法令執行機関に対し独占協定取り交わしに関する状況を報告し且つ重要な証拠を提供した場合、独占禁止法令執行機関は情状を斟酌し当該事業者に対する処罰を軽減しまたは免除することができる。

(里兆法律事務所が2014年5月30日付で作成)

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