こんにちわ、ゲストさん

ログイン

年度半ばで窺い見る2014年の労働法令新政策(前半)

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

無料

2014年10月22日

概要
2014年度の開始から現在に至るまでの間に、国レベルから各級地方政府などの間で各種労働法令が公布され、実務における労働紛争事件の処理についても、新たな動きが見られる。当所は2014年に公布、施行された新法令のいくつかを選んで紹介し、これらを通して、2014年度の初めから現在に至るまでの間の労働法令新政策を整理、統括し、今後の動向を窺い見る。

全文
時が経つのは早いもので、2014年度も半ばが過ぎたが、過去半年余りの間に、各級政府部門は次々と新たな労働法令、政策を公布しており、実務での労働紛争群衆事件および各地の処理政策においても、続々と新たな方法が出現している。このような背景の下、ご参考までに、当所は労働法関連の新法令、政策などについて、以下に整理し総括した。

一、 労務派遣に関する新政策

全国人民代表大会常務委員会は、2012年12月28日に「『中華人民共和国労働契約法』の改正に関する決定」(当該法令文書の主な内容はいずれも労務派遣労働者使用にかかわるものであり、以下「労務派遣新政」という)を公布し、労務派遣新政が2013年7月1日から実施されている。これについて、人力資源社会保障部(以下「人社部」という)は2014年1月26日に「労務派遣暫定規定」を公布している。「労務派遣暫定規定」は「労務派遣新政」の付帯規定であり、「労務派遣新政」の内容を具体化し詳細にしており、「労務派遣新政」に更なる操作性を持たせた。例えば、以下の通りである。

1. 「労務派遣暫定規定」は補助性職務の確定手順を定めた。即ち、派遣先企業の従業員代表大会または全従業員の検討を経て、方案および意見を提起し、労働組合または従業員代表との平等な協議により確定し、派遣先企業内部で公示しなければならない。

2. 「労務派遣暫定規定」は労務派遣労働者使用の総数が全従業員数の10%を超えてはならないと明確な制限を設けた。

人社部が公布した「労務派遣暫定規定」に対し、各地方政府は現地の実状に基づき、次々と現地政策を公布し、または政策を公布せずとも相応する取扱指導意見を提起した。例えば、以下の通りである。

1. 北京市人力資源社会保障局は2014年3月10日に「北京市労務派遣労働者使用状況届出作業通告」を公布し、労務派遣労働者使用人数が従業員総数の10%を超えている企業に対し、遅くとも2014年8月31日までに、比率を超えた労働者使用の調整方案を企業が所属する区(県)人力資源社会保障局に届け出るよう求めた。

2. 上海市人力資源社会保障局は2014年6月30日に「上海市の労務派遣での労働者使用の規範化に伴う若干事項に関する意見」を公布し、派遣先企業は人社部の「労務派遣暫定規定」の施行日から2年以内に、自社の労務派遣労働者使用比率を法定比率(派遣先企業の労働者使用総数の10%を超えない)にまで引き下げなければならないなどの移行期間措置を定めた。上海市人力資源社会保障局はその後も「上海市労務派遣使用者による労働者使用調整方案の届出弁法」を公布し、労務派遣労働者使用人数が労働者使用総数の10%を超えている企業に対し、遅くとも2014年10月31日までに、比率を超えた労働者使用の調整方案を企業が所属する区(県)人力資源社会保障局に届け出るよう求めた。

3. 広州市人力資源社会保障局は2014年3月20日に「広州市労務派遣企業年度報告作業ガイド」を公布し、労務派遣企業に対し今後は各年度の3月31日までに労務派遣許可機関へ自社の前年度経営状況報告を提出するよう求めた。この他にも、広州市人力資源社会保障局は2014年5月9日に、その下の人力資源社会保障機関、広州市の労務派遣企業、広州市の労務派遣先企業を組織し、期間を分けて「労務派遣暫定規定」に関する研修を行うことを通知した。

4. 南京市人力資源社会保障局は2014年5月14日に「『労務派遣暫定規定』の徹底・実施作業の遂行に関する通知」を公布し、南京市人力資源社会保障局は労務派遣法令研修巡回チームを組織すると定め、5月初めにさかのぼって、労務派遣労働者使用について徹底的な調査を行い、労務派遣労働者使用人数が10%を超える派遣先企業に対し、遅くとも2014年8月31日までに届出を行うよう求め、2014年10月からは労務派遣労働者使用について個別の法執行検査を実施する。

全体としては、「労務派遣暫定規定」の発布、実施に対し、上述した複数の主要都市は政策実施面で積極的な協力、準備作業を行っている。これらの協力、準備作業は、主に現地の関係労務派遣先企業に対する登記届出の実施、人力資源社会保障部門、労務派遣企業、派遣先企業に対する専門の法律研修の実施、移行期間の設置に体現されており、段階的に「労務派遣暫定規定」の各種規定を貫徹する。上述した複数の大都市以外に、例えば深セン、大連などの都市も、目下、現地関連政策の制定を検討している。

二、 従業員の労働待遇および労働保護について

前述した「労務派遣暫定規定」などの新法令以外にも、2014年度は、人社部および各地方人力資源社会保障部門は次々と最低賃金基準、労災労働能力鑑定、出産保険などに関する方面の一連の新政策を公布しており、これらの新政策の内容はやや細かく煩雑であり、以下に例を挙げて総括、説明を行う。

1. 一部地方の最低賃金基準が一定幅引き上げられた。2014年7月まで、全国では、北京、上海、深セン、天津などの計15の直轄市、省級地方政府が現地の最低賃金基準を調整した。現在、最低賃金基準の最高額は上海である(全日制労働契約を締結した従業員の最低賃金基準は1,820元/月であり、パートタイムの労働契約を締結した従業員の最低賃金基準は17元/時間である)。

ここ10年において、各地の最低賃金基準は一貫して小幅な上昇が持続している状況であり、たとえ直近の世界的規模の金融危機が発生した状況においても、この状況は変わっていない。今後数年の間は、深刻な想定外の事件が発生しない限り、この種の小幅な上昇は依然として継続するものと思われる。

2. 労働能力鑑定取扱手順を更に規範化した。人社部は2014年2月20日に「労災従業員労働能力鑑定管理弁法」(2014年4月1日から実施)を公布した。本法令は主に労働能力鑑定の期間を明確にし、例えば労働能力鑑定の期間は通常60日であり、最長でも90日を超えない。労働能力鑑定結果は決定後20日以内に労災従業員に送達され、関連社会保険部門へも写しが送付される。労働能力鑑定結果は労災従業員が後日受領する一括で支払われる後遺障がい就業補助金などの労災待遇に直接かかわることから、「労災従業員労働能力鑑定管理弁法」の上記規定により、ある程度において労災従業員または使用者が後日の関連労災待遇受領手続きを遅滞なく行う際に便利となる。

3. 江蘇省人民政府が統一的な「江蘇省従業員出産保険規定」を公布した。江蘇省人民政府は2014年6月30日に「江蘇省従業員出産保険規定」を公布し、2014年10月1日から施行している。「江蘇省従業員出産保険規定」には以下のとおり、いくつか留意すべき点がある。
・出産保険待遇の網羅する範囲が広い。江蘇省内の政府機関、各種企業・事業単位、社会団体の従業員、更には個人事業主が雇用する従業員も法に従って出産保険待遇を享受することができる。
・男性従業員も出産保険待遇を享受することができる。男性従業員も法に従って介護休暇を享受する期間において、出産保険待遇を享受することができる(10日間の出産手当を受け取ることができ、社会保険機構が支給する)。
・出産医療費用を社会保険機構が医療機関と直接決済することができる。従業員が社会保険機構の指定医療機構で出産した際に発生する規定に合致した関連出産費用については、社会保険機構が医療機関と直接決済し、従業員が「立て替えた上で精算申請を行う」面倒をなくす。

参考:
「労務派遣暫定規定」
http://www.mohrss.gov.cn/gkml/xxgk/201401/t20140126_123297.htm
「北京市労務派遣労働者使用状況届出作業に関する通告」(北京)
http://www.bjld.gov.cn/xwzx/zxfbfg/201403/t20140311_34899.htm
「上海市労務派遣使用者による労働者使用調整方案の届出弁法」(上海)
http://www.12333sh.gov.cn/201412333/xwzx/zxdt/201407/t20140716_1186569.shtml
「広州市労務派遣企業年度報告作業ガイド」(広州)
http://www.hrssgz.gov.cn/zt/ldgx/tzgg/201403/t20140325_211769.htm
「広州市人力資源社会保障局の『労務派遣暫定規定』解読研修の実施に関する通知」(広州)
http://www.hrssgz.gov.cn/zt/ldgx/tzgg/201406/t20140610_214248.htm
「『労務派遣暫定規定』徹底作業の実施に関する通知」(南京)
http://www.nanjing.gov.cn/njszf/bm/rsj/201405/t20140516_2831961.html
最低賃金の調整に関する動向
http://china.findlaw.cn/laodongfa/laodongdongtai/1120140.html
「労災従業員労働能力鑑定管理弁法」
http://www.mohrss.gov.cn/gkml/xxgk/201403/t20140313_126091.htm

(里兆法律事務所が2014年8月6日付で作成)

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ