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上海市高級人民法院の労働事件に伴う難題の検討意見に関する簡潔な分析(連載の一/合計二篇)

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2015年1月29日

上海市高級人民法院(以下「上海高院」という)民事第一法廷(労働事件、一般民事事件などを主管する)は労働紛争事件業務検討会を開催し、労働紛争処理過程において生じた一部の難題について十分な検討を行った上、傾向的な結論を下し、「上海高院民一廷の調査研究と参考」【〔2014〕15号】を作成した。これについて、筆者は以下の通り簡潔に紹介し分析する。


労働関係の認定に関する問題

1. 企業と労働者の間に労働者使用登記手続きまたは社会保険料納付の代行などの関係だけが存在する場合、当該企業と労働者の間に労働関係が存在すると認定することができるか。
結論 結論安易に認定することは好ましくない。
簡潔分析 1)双方に労働関係が存在するかの判断は労働関係の本質的特徴を分析することから始め、上海高院の意見および「労働関係の確立に伴う事項に関する通知
【労社部発[2005]12号】第1条の規定に照らして、労働関係の確認は、主に以下のいくつかの面から審査する必要がある。
●雇用主および労働者は法令で定める主体資格を具備する。
●双方に労働関係確立の合意が存在するか。
●雇用主が法に従って制定した各種労働規則制度が労働者に適用され、労働者は雇用主の労働管理を受けて、雇用主が手配した報酬のある労働に従事する。
●労働者が提供した労働は雇用主の業務の構成部分である。
労働者使用登記手続き、社会保険料納付などは労働関係認定の一つの形式的参考要素であるというだけであり、決定的な要素ではない。
2)実務処理において、確かに雇用主が人事代行会社に委託して人事代行会社の名義で他地域(雇用主の登録地ではない)で労働者使用登記手続きおよび社会保険料納付を行う状況が存在するが、原則として、これは規則に合致した処理方式ではない。
2. 土地収用人員は土地収用保障企業との間に労働関係が存在するか。
結論 存在しない。双方の間には関連社会保障費支払いの保障関係が存在するだけで、労働関係は存在しない。
簡潔分析 1)土地収用人員と土地収用保障企業との間には、通常、社会保障費用支払いの関係が存在するだけであり、土地収用人員は土地収用保障企業のために労働を提供しておらず、実質的な労働関係はない。
2)雇用主が土地収用人員を招聘した場合、労働関係を形成する。

外国人の就労に関する問題

1. 「外国人就業証」の手続きは行っていないが、「外国人永久居留証」を保有している外国籍人員については、本人と雇用主の間に労働関係が存在すると認定できるか。
結論 認定できる。
簡潔分析 外国人の中国における永久居留で享受する待遇に関する弁法』の公布に関する中国共産党中央組織部、人的資源社会保障部、公安部などの25の部門の通知」【人社部発[2012]53号】の規定:中国「外国人永久居留証」を保有する外国籍人員はいずれも、政治権利および法令で享受できないと定めている特定の権利および義務を除いて、原則として中国公民と同等の権利を享受し、同等の義務を負う。外国籍人員は「外国人永久居留証」を有効な身分証書として、各種社会保険への加入、社会保険待遇の享受、社会保険関係の移転継続および終了手続きなどを行うことができ、別途ビザの手続きを行う必要はなく、「外国人就業証」手続きは免除される。
以上の規定に基づき、法律は「外国人永久居留証」を保有する外国籍人員の国民待遇を承認しているため、本人は国民としての就業資格を具備し、「外国人就業証」の手続きを必要とせずに中国で就労することができる。
2. 「外国人就業許可証」上に記載された企業と実際に就労している企業が一致しない場合、外国人と実際に就労している企業の間には労働関係が存在するか。
結論 存在しない。
簡潔分析 1)「外国人の中国における就業管理規定」【労部発(1996)29号】第24条では、外国人が中国で就労する場合、雇用主はその就業証に記載された企業と一致しなければならないと規定されている。以上の規定は強行規定であり、違反した場合、外国人と実際に就労している企業が労働関係を確立する行為は違法となり、無効と認定される。

2)また、「『外国人の中国における就業管理規定』の徹底に関する若干意見」【滬労外発[1998]25号】第20条では、「外国人はその就業証上に記載された企業においてのみ就労することができ、その他の企業で兼職してはならない。」と規定されており、違反した場合には、「外国人の中国における就業管理規定」【労部発(1996)29号】第29条の規定に従って、労働部門は就業証を回収することができ、公安部門は居留資格を取り消し、強制出国させることができる。

3)例外状況として、「『外国人の中国における就業管理規定』の徹底に関する若干意見」【滬労外発[1998]25号】第20条の規定によれば、外国人は「国外投資者からの派遣に該当する場合、同一の投資者が設立した複数の企業において」兼職することができるが、「依然として、その中の一社のみが就業手続きを行うことができる。」。

3. 外国人と雇用主との労働契約において労働契約を違約解除した場合の法的責任について取り決めていない場合、裁判所は違約解除に関する問題をどのように処理するか。
結論 雇用主が労働関係の回復に同意した場合、回復を命じる判決を下すことができる。雇用主が同意しない場合、解除した上で、雇用主が「契約法」の規定に従って実際の損失を賠償するように命じる判決を下すことができる。
簡潔分析 1)外国人に対し中国労働法をどのように適用するかの問題については、「労働紛争事件の審理に伴う若干問題に関する解答」【滬高法民一(2006)17号】が以前、「外国人の中国における就業管理規定」【労部発(1996)29号】第22条、第23条の規定に従って、外国人は「最低賃金、勤務時間、休息休暇、労働安全衛生、社会保険などに関する労働基準」を強行適用することができるが、その他の労働基準および待遇などについては双方で取り決めなければならず、取決めがない場合は適用しないと規定している。なお、実際には、本問題に関し、ずっと論議があり(また裁判所によって異なる判決が下されるほどである)、主に以下の二つの観点がある。
●その一、中国において適法に就労している外国人には、完全に中国労働法が適用される。その理由は中国労働法には外国人に対し適用しないとの規定がないため。
●その二、「労働紛争事件の審理に伴う若干問題に関する解答」【滬高法民一(2006)17号】の観点と同じである。
雇用主による規則、法律に違反した労働契約の解除に伴う法律適用問題については、「上海高院民一廷の調査研究と参考」【〔2014〕15号】は上記第二類の観点を支持しており、即ち、「外国人の中国における就業管理規定」【労部発(1996)29号】で定める以外の違法解除責任問題については、労働関係の回復または違法解除に伴う賠償金(2倍の経済補償金)が当然には適用されず、第一に取決めを引用し、取決めがない状況においては強制適用しないとして、主に「契約法」の精神に基づいて処理するとされている。

2)筆者の傾向的見解として、「上海高院民一廷の調査研究と参考」【〔2014〕15号】は上記第二類の観点を改めて強調しており、今後の上海における司法実務においては、上記第二類の観点がより優勢と思われる。

3)以上の分析に基づき、雇用主が外国人と労働契約を締結する際、「最低賃金、勤務時間、休息休暇、労働安全衛生、社会保険などに関する労働基準」以外の労働基準および待遇など、例えば経済補償金、違法解除に伴う賠償金、労働契約解除の条件などについては取決めない、または中国労働法の規定には従って取り決めず、雇用主の必要に応じて取り決めることができ、これは雇用主にとって、有利と言える。

紙面に限りがあることから、まずは以上の内容を紹介する。次回の「里兆法律情報」では、「労災保険に関する問題」、「労働関係の解除および終了に関する問題」、「競業避止に関する問題」について紹介するので、ご期待いただきたい。

(里兆法律事務所が2014年12月01日付で作成)

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